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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
102/146

10歳:「ペルナちゃんの秘密(1)」

 

 

 〈発動具〉の腕輪をつけた右手の指先でペルナちゃんの瞼を触れる。

 ふぅ……私は軽く呼吸を整え、“ルーン"を唱える。

 

 

「《癒しの輝きよ(リザ・ド・コニーラ 闇よりダルラーヤ 瞳をモア  解きピアース 放つペスール》」

   

 

 右手の指先が乳白色に輝き、その光がペルナちゃんの瞼の奥へと吸い込まれていく。

 

 

「ペルナちゃん、目をゆっくり開けてみて」

「んっ!」

 

 

 久しぶりの光に目がくらんだのか、ペルナちゃんが目を抑える。

 

 

「大丈夫? ロイズさん、ちょっと窓の光をさえぎって……落ち着いて、どう?」

 

 

 ふらつくペルナちゃんをそっと支えて、ロイズさんに光を弱めるようにお願いする。

 ロイズさんがボロボロなカーテンを何とか広げ、窓からの明かりをさえぎると、室内は薄闇に包まれた。

 と、ペルナちゃんとしっかりと目があった。どうやら上手くいったようだ。

 

 

「姉ちゃん、ほんと? ほんとのほんとに見える?」

「うん、ペート君が泣きそうにしている顔もばっちり見えます」

 

 

 今にも涙を流しそうだったペートをペルナちゃんがからかう。

 

 

「あの、その……ケイン、ありがとう!」

「ありがとうございます、ケインさん。

 このお礼はどうやって返せばいいかわからないけど、絶対に返させてください」

「どういたしまして、そのお礼の代わりと言っては何だけど、約束してもらいたいことがあるんだ」

「なんだよ? ケインのためなら、何だってするぞ!」

「わたしもです」

 

 

 2人とも真剣な目で、私に詰め寄るようにして、了解の意を伝えてくる。

 そこで初めて、私は2人から強く感謝されていることを実感した。

 治って良かったという安堵感ともっと早くに治せば良かったという少しの罪悪感が心のうちに湧き上がる。

 

 ……まぁ、結果よければすべて良し、と考えよう。

 そして、今後のために必要なことを2人に示すために口を開いた。

 

 

「私が魔術が使えることは秘密にして欲しいんだ」

「なんでだ?」

「簡単に言えば、色々と面倒なことになるからかな?」

「ケインさん、それはケインさんが男の人みたいな名前で格好も男の人みたいにしていることも関係してますか?」

 

 

 オズオズと質問を返してきた。

 ……あれ? 私の変装って、もしかして変装になってない?

 

 

「ペルナちゃん、その、私が女性だって言うのはいつから気づいてた?」

「え? その最初の時から女の人だと思っていましたけど?

 ケインさんの名前は、男の人っぽい名前だな、と少し気になっていましたけど……」

 

 

 つまり、ペルナちゃんは、私が女性でケインという名前だと信じていたのか。

 そりゃあ、自己紹介でわざわざ自分の性別を「男です」みたいに言うことはないけど。

 

 

「へ? え? えっ!? だって、ええっ!?」

 

 

 ペートが私とペルナちゃんを交互に見比べ、私のほうを指差して驚きの声を上げる。

 まぁ、そうだよな。

 ペートは私の性別に気づいていたら、あんな「姉ちゃんをよろしく」なんてことは言わないだろうし。

 

 しかし、ペルナちゃんも私のことを男性だと思っていると思っていたのに。

 目が見えなかったせいか、それとも他に何か才能があるのか?

 

 

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