ペルナ:「光の消えた世界で(3)」
香水をもらった日から数日後。
ペート君は最近、軽食の屋台で働いているようです。
最近よくいい匂いをさせて、お土産をもらって帰ってきます。
ひさしぶりにわたしたちの部屋にケインさんが来てくれました。
ちょうど遅めの昼食としてペート君がもらってきた屋台の残り物を食べ終わったところでした。
ケインさんは、グイルさんではなく、ロイズさんという人を連れていました。
そのロイズさんが、部屋に入ったとたん、わたしはゾクリと寒気がしました。
ケインさんと初めて会った時は逆で、ロイズさんは、なんだか怖い、というのが最初の印象です。
「ケイン、その人が魔術師か!?」
軽く挨拶が終わり、ペート君がケインさんに向かって興奮気味に質問をしています。
魔術師? ロイズさんが魔術師なのでしょうか? だとしたら、寒気の原因はそれでしょうか。
けど、その考えは、ケインさんの次の言葉で否定されました。
「ううん、この人はただの立会人かな。
ペートに一つ謝らないといけないことがあるんだ」
「どういうことだよ? いまさら、約束はなかったことにしろとか言う気か!?」
約束? ペート君が悲しそうな声を上げます。
「えっと、ごめんね……」
「あやまったって許せるかよ! 姉ちゃんの目を治してくれるって言っただろ!」
「ん? ああっ、そうじゃなくて! その、私が魔術師なんだ……」
「え? へ……?」
「あの、ケインさん……どういうことですか?」
「うん、ペートとね、約束をしたんだ。ペルナちゃんの目を治す魔術師を紹介するって」
ケインさんが魔術師で、ペートとわたしの目を治す約束を……?
つまり……。
「本当ですか? ケインさん、わたしの目は、治るんですか?」
「信じられない? 私もやってみないと分からないけど……任せてくれる?」
「いえ、信じます。ケインさんに任せます」
仮に失敗しても、嘘でもいい。
それはもうケインさんだから……としか言いようがないですよね。
ケインさんの指示に従って、椅子に座って、ぎゅっと目を瞑ります。
わたしの瞼に、ケインさんがそっと指先を添えました。
「《リザ・ド・コニーラ ダル ラーヤ……」
ケインさんが、わたしのわからない言葉を歌うように呟きます。
多分、魔術の呪文だと思います。お母さんが夜に明かりを作る時に話していた言葉に似ています。
目の奥がじんわりと暖かい熱が生まれます。
「……モア ピアース ペスール》 ペルナちゃん、目をゆっくり開けてみて」
「んっ!」
久しぶりの光に目が痛みます。そう、わたしの目が光を映していました。
「大丈夫? ロイズさん、ちょっと窓の光をさえぎって……落ち着いて、どう?」
わたしのことを心配そうに見つめる澄んだ空のような青い瞳。
薄く銀色がかった金髪が薄暗い部屋の中で輝いている。
あ、この人がケインさんなんだ……初めて見るはずなのに、すんなりと納得してしまいました。
「姉ちゃん、ほんと? ほんとのほんとに見える?」
「うん、ペート君が泣きそうにしている顔もばっちり見えます」