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【未完旧作】攻撃魔術の使えない魔術師  作者: 絹野帽子
王都ラシクリウス編
101/146

ペルナ:「光の消えた世界で(3)」

 

 

 香水をもらった日から数日後。

 

 ペート君は最近、軽食の屋台で働いているようです。

 最近よくいい匂いをさせて、お土産をもらって帰ってきます。

 

 ひさしぶりにわたしたちの部屋にケインさんが来てくれました。

 ちょうど遅めの昼食としてペート君がもらってきた屋台の残り物を食べ終わったところでした。

 

 ケインさんは、グイルさんではなく、ロイズさんという人を連れていました。

 そのロイズさんが、部屋に入ったとたん、わたしはゾクリと寒気がしました。

 

 ケインさんと初めて会った時は逆で、ロイズさんは、なんだか怖い、というのが最初の印象です。

 

 

「ケイン、その人が魔術師か!?」

 

 

 軽く挨拶が終わり、ペート君がケインさんに向かって興奮気味に質問をしています。

 

 魔術師? ロイズさんが魔術師なのでしょうか? だとしたら、寒気の原因はそれでしょうか。

 けど、その考えは、ケインさんの次の言葉で否定されました。

 

 

「ううん、この人はただの立会人かな。

 ペートに一つ謝らないといけないことがあるんだ」

「どういうことだよ? いまさら、約束はなかったことにしろとか言う気か!?」

 

 

 約束? ペート君が悲しそうな声を上げます。

 

 

「えっと、ごめんね……」

「あやまったって許せるかよ! 姉ちゃんの目を治してくれるって言っただろ!」

「ん? ああっ、そうじゃなくて! その、私が魔術師なんだ……」

「え? へ……?」

「あの、ケインさん……どういうことですか?」

「うん、ペートとね、約束をしたんだ。ペルナちゃんの目を治す魔術師を紹介するって」

 

 

 ケインさんが魔術師で、ペートとわたしの目を治す約束を……?

 つまり……。

 

 

「本当ですか? ケインさん、わたしの目は、治るんですか?」

「信じられない? 私もやってみないと分からないけど……任せてくれる?」

「いえ、信じます。ケインさんに任せます」

 

 

 仮に失敗しても、嘘でもいい。

 それはもうケインさんだから……としか言いようがないですよね。

 

 ケインさんの指示に従って、椅子に座って、ぎゅっと目を瞑ります。

 わたしのまぶたに、ケインさんがそっと指先を添えました。

 

 

「《リザ・ド・コニーラ ダル ラーヤ……」

 

 

 ケインさんが、わたしのわからない言葉を歌うように呟きます。

 多分、魔術の呪文だと思います。お母さんが夜に明かりを作る時に話していた言葉に似ています。

 

 目の奥がじんわりと暖かい熱が生まれます。

 

 

「……モア ピアース ペスール》 ペルナちゃん、目をゆっくり開けてみて」

「んっ!」

 

 

 久しぶりの光に目が痛みます。そう、わたしの目が光を映していました。

 

 

「大丈夫? ロイズさん、ちょっと窓の光をさえぎって……落ち着いて、どう?」

 

 

 わたしのことを心配そうに見つめる澄んだ空のような青い瞳。

 薄く銀色がかった金髪が薄暗い部屋の中で輝いている。

 あ、この人がケインさんなんだ……初めて見るはずなのに、すんなりと納得してしまいました。

 

 

「姉ちゃん、ほんと? ほんとのほんとに見える?」

「うん、ペート君が泣きそうにしている顔もばっちり見えます」

 

 

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