第1話
東亜経済新聞 2035年6月3日(水)朝刊 第一面
【一般用労働代替機、国内累計導入50万台を突破 NEXUS、年内100万台へ増産体制】
NEXUS Labor Systems(本社・カリフォルニア)の家庭用Proxy「NX-7シリーズ」の国内累計導入台数が50万台を突破したことが、同社の発表で明らかになった。2033年の第一世代機発売からわずか2年での達成となる。同社広報は「Proxyの普及が、家族と過ごす時間を人々に取り戻している」と述べた。
政府は来年度より導入費用に対する減税措置を拡充する方針で、市場調査会社は2040年までに全世帯の約30%への普及を見込む。
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さいきん、お家がきれいだ。ぼくのお部屋は使わないプリントがいっぱい広がってたけど、今はテレビの家具の「こまーしゃる」に出てくるみたいな、ととのったお部屋になってる。
「単純な入力作業をしなくて済むようになった」、「大事な仕事に時間がたくさん使える」、そうお父さんが言ってる。たしかにお父さん、さいきんは元気そう。前は休みの日も疲れてそうだったのに。
「毎日献立を考えなくていいし、なにより料理を作ってくれるってこんなに幸せなことだったのね」、「もう洗濯も任せられる。雨を気にしなくてよくなった」、お母さんはこんな風によろこんでる。お母さんもあんまりイライラしなくなった。
全部理由はしってる。「ぷろきしぃ」という「えーあい」のおかげ。
「ぷろきしぃ」は、学校のともだちのお家にはまだそんなにいない。「ぷろきしぃ」といっしょに暮らしてるともだちは3人だけ。だからみんなうらやましがる。「えー、いいなー、うちにもほしいな。こんど遊びに行っていい?」、みんな新しいロボットを見たがって、よくうちに遊びにくる。
「ぷろきしぃ」は別にいっぱいお話ししてくれるわけじゃない。あしたの天気とか、アニメの放送時間は教えてくれるけど、ちょっとむずかしいこと聞くと答えてくれない。こないだ、学校でけんかしちゃったから仲直りのしかたを聞いたけど、「パパとママに聞いてね」って言われちゃった。「どうして教えてくれないの?」って聞いてみたけど、それ以上はなにも答えてくれなかった。「えーあい」にもわからないぐらい、むずかしいのかな。
「あんまりProxyを困らせないでね。遊び相手じゃないんだよ」、そうお母さんに言われた。
向こうからはお話ししてくれない。でも「おはよう」っていったら「おはよう」って返してくれる。それだけでも、ちょっとおもしろいかもしれない。
今日の夜ご飯はなにかな。台所からお魚が焼けるにおいがする。どんなかんじでに料理してるのかな。ちょっとのぞいてみる。器用におやさいを切ってる。「げ、今日のご飯ににんじん出てくる」。でも、「すごいなぁ、人間みたいだなぁ」と思わずかんしんする。白いアームがまったく同じにんじんをテンポできざんでいる。
そうだ忘れないうちに。ソファーに座ってるお母さんのもとへ向かう。「お母さん、宿題やったから、れんらくちょうにサインして」、呼びかけたのにへんじしてくれない。イヤホンしてる。音楽聞いてるみたい。もっと近づく。のぞきこんで、「ねぇ、お母さん?」、すると少しおどろいた顔をして、「何?」と聞きかえしてくる。「宿題やったから、これ」とわたすと、テーブルにあったボールペンでささっとサインを書く。するとイヤホンをはめ直して、また続きをききだす。その気持ちわかる、最後までききたいよね。宿題終わったし、僕もアニメ見なきゃ。
夜ご飯には、やっぱりにんじんがでてきた。しかもサラダに入ってたから生。においがきらいなんだよね。でもおかずのステーキはおいしかった。テキパキと食器をかたずける「ぷろきしぃ」を横目にアニメの続きをみる。
「もうこんな時間。そろそろお風呂入りなさい、もう9時よ」、今、そう言われてやっと気づく。ほんとだ。アニメに夢中になっていたら、すっかり夜おそくだ。
お湯につかる。ぼーっとかんがえる。明日も学校が楽しみだ。みんなとたくさんお話しできるし、いっしょに遊べる。今日のアニメみんなみたかな。まだ誰にも話してないけど、しゃべりたいことがいっばいある。ちこくしないように早くねよう。




