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第6話 ロリは食いしん坊?

 とりあえず、ギルドでのパーティー申請。

 俺は、ロリカを連れ、受付嬢ノリアの元へと向かった。


紋章というものを刻印?するらしい。

 紋章があれば、次回からは手をかざすだけでパーティーに自由に入れることができるらしいが、初めて作る今回はきちんと申請しなければならない。


「来やがりましたか! 今回はどんな用件でございますか??」


「パーティー申請をしたいんだけど……」



 ノリアの口は相変わらず悪い。だが、もうそれも慣れてしまった。逆に、丁寧に対応された方が鳥肌が立ってしまうだろう。

 そういえば、俺はスライムを換金しまくって毎日話していたら、いつの間にかタメ口でもいけるようになっていた。

少し自分を褒めてやろう。


「とうとう仲間見つかったんでございやすか。めでてーですね。……でも、そういう趣味だったとは思いもよらねーっす!! 気持ち悪いっすね! 鳥肌もんっすよ!!」


 俺の隣にいるロリカを見つけ、ノリアは汚物を見るような目を向けてきた。


「──趣味とかじゃないって。まあ、俺にも色々考えはあるんだよ!!」


 確かに、日本でこのペアを見たら、どう見ても誘拐犯と被害者にしか見えないだろう。


「パーティーメンバーは男でもいいのに、わざわざ女を選ぶなんて変態でやんすね!!」

「違うって。たまたま、来たのが女だったんだって!!」


 なんだ、この会話。どこか浮気がバレた時の彼氏みたいな言い訳をしている気分だ。

 ノリアは少しイライラしながら準備を始めた。それにしても今日は随分と態度が悪いな。何か気に障るようなことでもしただろうか。パーティー申請の手続きが面倒なのか、それとも、本当に俺のことをロリコンだと思って軽蔑しているのか。


 確かに、ロリカの顔は美形だ。目鼻立ちがしっかりしているし、将来は美人になるだろう。

 だが、今の姿をよく見てほしい。

 鼻水は垂らすし、服には食べかすがついている。出会ってまだ間もないが、俺の気分はすでに完全に保護者のそれだ。下心なんて、欠片も湧いてこない。


 ……って、なんで俺はこんなに必死に言い訳をしているんだ!?


「で、なんの紋章にしやがりますか?? 変態の紋章にしやすか??」


 ノリアがキレ気味に聞いてきた。そういえば、紋章のデザインなんて全く考えていなかった。


「何にする? 特にこだわりないし、星とかでもいいか?」

「星なんぞセンスがないぞ! こういうのは大事なのじゃ。パーティーの紋章はしっかりとした理由があって作る方がいいのじゃ!」

「そうなのか。じゃあ、何にする?」

不死鳥フェニックスに決まっておるじゃろ!!」


 不死鳥か。別にこだわりもないし、格好いいからいいか。

 でも、何か意味があるんだろうか。この世界では花言葉みたいに、紋章にもメッセージが込められているのかもしれない。


「で、どんな意味があるの?」

「意味ってなんじゃ?」

「いや、不死鳥の紋章に込められた裏のメッセージ的な……?」

「ヌシは何を言っておるのじゃ?? 意味などあるわけないじゃろ!! 格好いいから不死鳥にしただけじゃ!!」

「マジかよ!!」


 自然に大声で突っ込んでしまった。

「何をムキになっているのじゃ!!」

「いや、いいけどさ……」


 結局、俺たちのパーティー紋章は「格好いいから」というIQの低い理由だけで不死鳥に決定した。


「はいはい。変態は随分と楽しそうでいやがりますね」


 ノリアは呆れながらも、事務作業はきっちりとこなした。そして、今日分かったことがある。

 ノリアは全員に対して態度が悪いと思っていたが、全然そんなことはなかった。彼女はロリカに対しては、丁寧に紋章についての説明をしているのだ。

 一方で俺には暴言を吐き、刻印の際には手を強く握り締められた。だからロリコンじゃないって。もしかして、生理的に嫌われているんだろうか……。


 なんやかんやで無事に、俺たちの手のひらには【不死鳥】の紋章が刻印された。認めるのは悔しいが、完成した紋章はなかなかに格好良かった。


 ギルドを後にしながら、ふと思った。

 そういえば、こいつ、家なんて持っているんだろうか。金もないって言っていたし、この様子じゃ寝床も怪しそうだ。


「そう言えば、今までどこで過ごしてたんだ?」

「リーダーが用意した場所で寝ておっただけじゃ」

「もし、俺がパーティー組まなかったらどうなっていたの?」

「死んでいたかもしれぬの!!」


 知らないうちに人殺しになるところだった。退職代行なんてあまり気軽にやるものでもなかったな。

 結局、放っておくわけにもいかず、俺はロリカを自分の家へと連れて帰ることにした。



「金はないから、ここで我慢しろよ」

「別にいいところではないか!! ……ただ、二人きりだからって、わっちに変なことをするんじゃないぞ??」


 ガキのくせに変なことを言う奴だな。

「本当にしないから安心してくれ」

「な、なぬ!? わっちのこのナイスバデーーを見てもか?」


 どこがだよ。

 平らすぎて、ピサの斜塔も真っ直ぐ立つくらいの安定性だろうが。

「はいはい。何もしないから大人しくしてろ」

「へい!」


 たくっ、ガキのくせに、スマホも携帯もない異世界でどこでそんなことを覚えてくるんだ。

 家に戻ったと言っても、やることはない。ただ、狭い部屋でぼーっと過ごすだけであった。

 その時、『ぐ〜〜〜〜〜〜ゴロゴロ〜〜〜』という今までに聞いたことのない凄まじい音が響いた。

 なんだ? 家が壊れ始めたのか?


「ああ〜〜!! 腹がへったのじゃ〜〜」


 ただのロリカの腹の虫だった。


 とりあえず、この間、市場で安く売っていた「もやし」のような謎の野菜を差し出す。


「いただきます!!」


 ロリカは大量にあったもやしを、スパゲティーを啜るような勢いで一口で食べやがった。

 おい!! 貴重なもやしが!! 俺の分が無くなっちまったじゃねーか!!


「──もう終わりなのか??」

「だから言ったろ!! 金ないって!!」

「わっちの退職金、使えばいいじゃろ!!」


 ガキのくせに、そういうところだけはしっかり見ているんだな。

「それは使えない。今後何があるかわからないし」

「肉がいい!! 肉が食いたいのじゃ!!」


 ロリカは狭い部屋の床の上で駄々をこね始めた。

 肉か。そういえば、この世界に来てから一度も食っていない。まだまだ俺らにとっては高級品だ。どこかで、無料で手に入らないだろうか。


「そう言えば、さっき倒したファイヤードラゴンって食えるのか??」

「そうじゃ!! 忘れておった!! あ〜〜〜!! 魔法に夢中で忘れておった!! それに、それくらいの肉はあると思っておった!!」

「悪かったな!! ……食えるのか。じゃあ、明日狩りに行くか?」

「おお!! 今すぐ行こうぞ!!」

「今は遅いからダメだ。明日にするぞ!!」

「え〜〜〜」

「とにかく、今日は我慢して寝ろ!!」

「わかったのじゃ!! じゃあ、寝る!!」


 ロリカはそのまま床に大の字になった。

 一秒後には、『ぐ〜〜〜が〜〜〜〜〜』といういびきが響く。一瞬にして爆睡しだしたのだ。

 えーーーーーー。はっや!!


 それにしても、随分なポンコツを手にしちまったな。

 飯は大量に食うし、予知はあまり当たらねえ。

 本当に、こいつ成長するんだよな……?

 俺は、異世界のことをメタ的に知っている。


きっと大丈夫なはずだ。


翌日。俺とロリカは森へファイヤードラゴンを狩りに行った。

 炎にさえ気をつけていればそれほど脅威ではなく、楽に倒せたのは幸いだったが、相変わらずロリカの予知は当たらず、余計な迷惑を被る羽目になった。

 結局、俺一人で倒したようなもんだ。ぶっちゃけ、俺一人で探しに行った方が効率が良かった気がする。


 何匹かのファイヤードラゴンの肉を抱え、なんとか家まで持ち帰った。


「そういえば、料理できるの?」

「わっちができるわけなかろう!!」

「え。じゃあ、誰がやるの?」

「ヌシに決まっておるじゃろ!!」

「俺はできないぞ?」

「ナヌ!? どうするのじゃ!! どうするのじゃ!!」


 いつものように、バタバタと駄々をこね始めた。

「……仕方ないな。じゃあ、切って塩かけて焼くので文句ないなら、やってやるよ」

「おお!! 早く! 早く!」


 俺は魔物を捌き始めた。

 ……臭え。ニオイがとにかくきつい。日本の豚や牛とは次元が違う。

 一生懸命に吐き気を我慢して捌き、とりあえず念入りに焼いた。食中毒は怖いし、この世界にまともな病院なんてなさそうだしな。


 俺って一体、何をやっているんだろう……。

 現実は見ないようにして、とりあえず皿一杯の肉を焼き上げた。


「おお〜〜!! いっただきまーす!!」


 ロリカは宣言と同時に、フードファイターのような勢いで肉を詰め込んでいった。

 俺も食べたかったが、あまりの獣臭さに食欲が失せ、手が出せない。そんな俺を余所に、ロリカはわずか十秒ほどで山盛りの肉を平らげた。


「もっと食べたいぞ!!」

「もう散々食っただろ!! 残ってねーよ!!」

「食べたい! 食べたいのじゃ!!」

「大体、誰のせいだと思ってる!? お前なあ、魔物が出やすい時間帯を三時間も間違える奴がいるか!? 三分後とか言うから死ぬ気で急いだのに、結局三時間も待たされたじゃねーか! その時間があったら、もっと倒せただろ!!」

「……時間を読むのは難しいのじゃぞ!!」

「そんなに食ってどうするんだよ」

「わかってないの〜〜。食こそ知的、美的センスを上げる最高の薬なのじゃぞ!」

「大体お前、博識なら料理くらいできなきゃおかしいだろ」

「わっちの博識は知的な博識だ。料理は経験なのじゃ、経験!!」

「言い訳だけは一人前だな」

「なんじゃと!! とにかく、料理が得意な奴を仲間にするのじゃ!!」

「そんなくだらない理由でやってたまるか!!」


 ……とは言ったものの、ロリカの考えも一理ある。

 焼いただけでは魔物のニオイは抜けない。野菜だけでは力も出ないし、食は生命線だ。

 でも、料理が上手いという理由だけでパーティーに入れるのも変だよな。それこそ典型的なお荷物枠だろう。


 次のメンバーか……。

 今まで考えたこともなかったが、どんな奴がいいんだろうか。二人パーティーなんて周りを見てもそうそういない。というか、こいつと二人でいるくらいなら一人の方がマシな気すらしてくる。

 そこら辺のパーティー編成のセオリーが、ラノベ知識のない俺にはわからない。ダメ元でロリカに聞いてみるか。


「なあ、もし次にパーティーに入れるとしたら、どんな奴がいいんだ?」

「珍しいな。とうとうわっちの頭脳が欲しくなったか!?」

「いいから考えろよ」

「治癒魔法使い(ヒーラー)は大切じゃ。だんだんと敵が強くなってくる。怪我をした時、必要になってくるぞ?」

「……」


 あまりにまともな返答に、俺は絶句してしまった。

「どうしたのじゃ」

「いや、珍しく真面目だったから」

「失礼な!! いつでも真剣じゃぞ!!」


 まあ確かに、いつも言うこと自体はそこまで間違っていないんだよな。予知がポンコツなだけで。


「やっぱり、俺も怪我しそうか?」

「ヌシはまだまだ大丈夫じゃろ。わっちじゃ」

「お前の心配かよ!!」

「こんなプリチーな美少女が怪我したら、国が困るじゃろ!?」

「誰も困らねーよ!!」


 でも、的を射ている気もする。

 今は大丈夫でも、今後ダンジョンを攻略していい生活をするという俺の目的のためには、いつか必要になる戦力だ。


「じゃあ、次は、治癒魔法使いでも探すか」

「ただ、治癒魔法使いはほとんどおらず、単純に捕まえるのは至難の業じゃぞ? それに、わっちみたいに追放しようとする奴なんて、誰もおらんじゃろ――」

「そうなのか……」


 とりあえず、ゆっくり探すか。そいつが料理もできれば尚更いい。

 そんな激レアを引けるほど、俺の運は持っていないはずだ。いや、転生したんだから、少しは運が開けている可能性もあるか。


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