表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/6

第5話 天才少女の実力

一人、地面を見つめてしょぼくれていた少女に、俺は改めて向き直った。


「本当に、組まないか? ただ、俺もそこまで資金に余裕があるわけじゃない。それでもいいなら、一緒にパーティーを組もう」


 さっきまでの絶望が嘘のように、少女が弾かれたように顔を上げた。


「おお!! わっちと組みたいとは、見る目があるのぉ〜〜!!」


 急に尊大な態度に戻り、腰に手を当てて胸を張る。


「わっちは頭脳明晰! そして、魔法も強すぎるがゆえに追放されやすいのでな!! 絶対に正解じゃぞ!!」


 きたきた、これだよ。

 いい感じじゃない??

 


 だが、ここは冷静にならなければ。

 まずは実力の確認だ。


「……疑っているわけじゃないが、一応、実力を測らせてくれ」

「もちろんなのじゃ!!」

「ああ、そういえば名前を聞いてもいいか?」

「わっちの名は、ロリカじゃ!!」


 見た目通り、ロリみたいな名前だな。

「俺はダイキだ。よろしく」

「よろしくなのじゃ、ダイキ!」


 こうして、俺とロリカは実地試験のために森へ向かった。

 いつもスライムを小突いているエリアから、さらに数分。草木が深く、空気の密度が変わる場所まで足を踏み入れる。


 そこで俺たちの前に現れたのは、全身を赤鱗で覆った、トカゲを巨大化させたような生物だった。


「――あれは、ファイヤードラゴンじゃな!!」


 ロリカが教えてくれた。

 大きさは大型犬より一回り大きい程度だが、口から漏れる熱気と鋭い眼光には、本物の怪物の威圧感がある。俺は反射的に身構えた。


「……じゃあ、ロリカ。こいつを倒してみてくれ」

「何を言っておるのじゃ!! わっちは戦闘タイプではないぞ?」

「え」


 おいおい。

 ……まあ、そうか。固有魔法といっても攻撃だけってわけにはいかないか。


「でも安心せえ。わっちの素晴らしい頭脳と魔法があれば、百人、いや千人力じゃ!!」

「……で、その魔法はなんなんだ?」

「聞いて驚くのじゃ!! わっちの魔法は、【千里眼】じゃ!!」

「……何それ?」

「貴様、それを知らぬだと!?」


 ロリカは心底信じられないといった様子で、その特徴的な瞳を見開いた。


「わっちのこの両目でな、未来が見えたり、敵の弱点が見えたり……とにかく便利なのじゃぞ!!」


 おお、やっぱり強そうじゃないか。

 未来が正確に見えるなら、格闘技の経験から言っても、実力差なんて簡単に埋められる。


「どんな感じで未来が見えるんだ?」

「常に何かが見えるわけではないのじゃが、見える時は見えるのじゃ。インシュピレーション……って感じじゃな!」


 インスピレーション……。

 ツッコミたい気持ちを抑える。本当に頭脳明晰なんだよな?


「……敵の弱点は普通に見えるぞ!!」

「それは便利だな」


 会話の最中、ファイヤードラゴンが苛立ったように火花を散らし、こちらを威嚇し始めた。

 仕方ない。なぜか俺の実力テストになっている気もするが、俺が戦うか。


「まあ、ヌシなら魔力を纏えば、ファイヤードラゴンなんて一発じゃろ」

「……そうなの?」


 スライムと変わらないのか?

 少し緊張しながらも、俺は全身に魔力を纏った。

 

 瞬間、ドラゴンが火を吹きながら突進してくる。

 

左へ一歩。炎を紙一重でかわし、無防備な腹部へ右フックを叩き込む。


 ドゴォッ!!


 ドラゴンはあっけなく数メートル吹き飛び、木に激突して絶命した。


「まじか……」


 魔力を纏うと、ドラゴンですらワンパンか。

 どうやら、ロリカの言っている「相性」や「格下」という判断は正しいらしい。


「おお!! すごいの〜〜!!」


 ロリカがパチパチと拍手する。

 素直に褒められると、俺の魔力量がミジンコで魔法も使えないことは、絶対にバレたくないという見栄が生まれるな。


「……次はそっちの番だぞ。予知してくれ。まだ現れるんだろ?」

「任せておれ。わっちにはちゃんと見えておる!! 今のヌシの攻撃で、周りのドラゴン達が戦闘態勢に入ったぞ。――来るぞ、2匹! 『右』からじゃ!! いきなり噛み付いてくるから気をつけるのじゃ!!」


 なるほど、完璧なナビゲートだ。

 右側。噛み付き。

 それさえわかっていれば、炎への警戒を解いてカウンターに専念できる。


 俺は右側へ意識を集中し、ドラゴンの襲撃を待った。

 森がしんと静まり返る。

 来るか……。


「……ッ!?」


 衝撃。

 いきなり『後ろ』から噛み付かれ、俺の体は前方へ吹き飛ばされた。

 木に激突したが、魔力纏いのおかげで痛みは少ない。だが、驚きは絶大だった。


「な、何が起こった!?」


 振り返ると、そこには2匹のドラゴンがいた。

 ――『左』側からやってきていた。


「おい!! 全然違うじゃねーか!! 右側じゃねーだろ!!」

「う、うるさいのじゃ!! 2匹という数は当たっておったじゃろ!! わっちは右と左がわからんだけじゃ!!!」

「箸を持つ方だ!!」

「はしってなんじゃ!!」

「フォークを持つ方だ!! どっちで持つんだ!!」

「もちろん右で持つに決まっておるではないか!!」


 ロリカは堂々と右手を差し出した。

「……わかってんじゃねーか!! 本当は予知がうまくいってないんじゃないのか!?」

「う……。人には間違いだってあるのじゃ!! それに、未来予知は難しいのじゃぞ!?」


 逆ギレかよ!!


 とりあえず、俺は襲い掛かる2匹をさっきと同じ要領で片付けた。


「おお!! 無事に倒せたな!!」


 満足げに頷くロリカ。

 ……どうやら、こいつの未来予知、かなり怪しいな。


 本当にこいつをパーティーに入れていいのか?

 

だが、待てよ。


数は当たっていたし、ドラゴンの生態知識もありそうだ。

それに、人付き合いが苦手な俺でも、ロリカの傍若無人な振る舞いは、不思議と嫌な感じがしなかった。


 こいつに俺が殺されることもなさそうか。


 追放させてしまった罪悪感も、まだ少し胸に残っているしな。


 初めはメンバーの出来が悪いってのがテンプレなのか。


「……じゃあ、パーティーを組むか」

「おお!! やっとわっちの実力がわかったのじゃな! 生憎と、わっちは金がない。ヌシが面倒を見るのじゃ!!」

「リーダーは俺、ってことだな」


こいつにリーダーを任せるわけにはいかないし、ガキの下に付くのも御免だ。将来への投資だと思えばいい。


 こうして俺とロリカの生活が始まった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ