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第3話 俺は『追放』しまくることにした。

 ハズレ受付嬢――ノリアに渡された地図を頼りに、俺はこれから住む家へと向かっていた。


 森の中を歩くのは正直、苦痛だ。虫は多いし足場は悪い。都会育ちの俺からすれば、こんなサバイバル環境は願い下げだ。

 ギルドから歩くこと三十分。ようやく見えてきたのは、小さな集落だった。


 その一角にある建物が、俺の家らしい。

 六畳一間のワンルーム。風呂、トイレ、キッチン付き。中世風とはいえ、意外にも水洗トイレだったのは救いだ。最悪の事態(汲み取り式)は免れた。


 だが、問題は金だ。転生ボーナスで貰ったのは20万ゼニー。

 この家の家賃は4万ゼニー。

 生活費を考えれば、のんびりニート生活を送れる猶予はない。


「魔力は極小、魔法は使えない、おまけに集団行動は苦手……」


 一人暮らしを続けるには、稼ぐしかない。

 俺は家具や食料を揃えるため、商店街へ出かけた。

 活気はあるが、美味しそうな肉や果物はどれも高い。結局、俺の買い物カゴはリーズナブルな野菜ばかりになった。


「満足に肉も食えないなんて……これが転生者のテンプレ通りの生活なのか? 異世界ってすげぇ楽しいところだからみんな行きたがったんじゃねーのか?」


 必要なものを買い込み、一旦家に帰る。

 手持ち無沙汰になった俺は、散歩がてらダンジョンへと続く道に足を踏み入れた。

 一人は危険だと言われたが、入り口付近を少し覗くだけなら大丈夫だろう。


 未知の世界への高鳴る鼓動。

 ゆっくりと森の奥へ進むと、そこに青くてプニョプニョした物体がいた。


「――これは俺でも、知ってるぞ! 『スライム』だ!」


 周りの冒険者たちは目もくれず素通りしている。スライムは自ら攻撃してくる気配もない。


魔法は使えないけど、物理的な攻撃は効かなくはないよな……?


 俺は、ハニートラップにハメられた怒りをぶつけるサンドバック代わりに、その弾力のある体を思い切り蹴飛ばした。


 ゲルを蹴る独特の感触。数回蹴りを入れると、スライムは「パンッ!」と弾けて消えた。


おお…!! 倒せたのか!!


 残ったのは、小さな破片。

 これがアイテムか。これを換金すれば金になるとか言ってたか??


 俺は久々に体を動かす快感に浸りながら、無限プチプチを潰すような感覚でスライムをボコボコにしていった。怒りをすべて乗せた一撃を、次々とスライムに叩き込む。

 大量のアイテムを回収し、俺は再びギルドのノリアのもとへ向かった。


「これ、換金してください」

「早速仕事っすか! 仕方ないっすね、換金してやりやすよ!!」


 しばらくして、ノリアが「受け取りやがれっす!」と硬貨を一枚、カウンターに放り投げた。


「…………1ゼニー?」

「そうっすよ」


 100匹近く倒したのに!? 野菜一つ買えねえじゃねえか!

 反撃してこない、誰でも倒せるスライムの価値は、この世界では文字通りゴミ同然だったのだ。


 それからの数日、俺の日常は「スライムをボコしてはした金を得る」という不毛な作業の繰り返しになった。

 だが、収穫もあった。

 スライムを殴り続ける中で、俺は**『魔力を纏う』**という感覚を掴み始めたのだ。


 体内に流れる微かな魔力を、一点に集中させるのではなく、体の表面に薄くコーティングするように広げてみる。

 すると、うっすらと青白いオーラが拳を包み込んだ。

 その状態で、試しにそこら辺の太い木を殴ってみる。


 ――ドォォォォン!!


 驚いた。

 普通の打撃なら拳が痛むだけの巨木が、一瞬のうちに粉砕された。

 足に纏えば、ジャンプ力もダッシュ力も世界記録を優に超える。


「なるほど……魔法は出せなくても、魔力を身体能力のブーストに使う。これなら戦えるぞ」


 だが、いくら木を壊せても、スライム狩りの報酬が変わるわけではない。

 生活費は底をつきかけ、『異世界ホームレス』という物語の主人公になってしまいそうだ


どうする……。どこかのパーティーに入れてもらうか?


 いや、魔力極小で魔法も使えない俺を、誰が歓迎する。

 仮に入れたとしても、一生奴隷扱いされるのがオチだ。そんなのはホームレスよりマシとは言えない。



 ――そもそも、なんでみんな『異世界に行きたい』なんて言ってたんだ?

 魔法は使えない、生活は不便、食事も臭い。異世界のほうがよっぽど過酷じゃないか。

 高校の時、オタクのクラスメイトの奴らが言っていたな


『チート』?『無双』?とか??


全然無双とかないんですけど……


「何か、ここから逆転する方法はないか? このまま『異世界ホームレス』なんて売れない小説の題材にされるのは御免だぞ」


 俺は必死に、日本で目にしていた断片的な記憶を掘り起こした。

 ……そういえば、駅の売店や本屋で、やたらと目にしたタイトルがあったな。

 

 ――『追放』。


 追放ってことは、クビにされる側だよな? ポンコツだよな?

 なんでそれが本になるんだ? ……いや、待てよ。

 

追放されたポンコツが、実は隠れた実力者で、後から見返して復讐する……。

 

そうか! 追放ものが流行っていたのは、つまり**『追放された優秀な奴を集めてパーティーを作る』**という最強のテンプレがあるからに違いない!


「これだ……! 日本人で良かった。アニメ天国舐めるなよ?? 凡人でもわかることはあるんだよ!!」


 目標は決まった。

 

『ダンジョンで金を稼いで、いい生活をする』。

 そのためには優秀な仲間が必要だ。

 追放されたやつを探す!!

これがテンプレだったとはな!!!



 翌日、意気揚々とギルドや森でパーティーを観察したが、現実は非情だった。

 どいつもこいつも和気藹々、楽しそうに笑い合っている。俺みたいにボッチで腐っている奴なんて一人もいない。


「おかしい。テンプレじゃないのか……?」


 いや、待て。よく考えろ。

 冒険者なんてみんなビジネスの関係だ。

 表面上は仲良くしていても、腹の底では追放したいやつがいるはずだ。ポンコツとかな。


何かあるはずだ。テンプレとなる答えが


あ!!


そうか。


退職代行するのか!!

俺が【退職代行】の仕事をすればいいんだ!!


頭の中で、カチリと最後のピースが嵌まった。


俺がポンコツを『追放』する手伝いをする。

それを集める。

異世界ではポンコツは強いはずだ!

最強のパーティーの出来上がり。


これが、『追放』もののテンプレってことか!

知らなかったぜ!!


なるほどな……やっと真実に辿り着いたぜ。

これで俺もテンプレに乗れて安定した異世界生活を楽しめるだろう!!




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