第4話
荒い呼吸が、ようやく落ち着いてきた。
その場に座り込み、しばらく動けなかった。
「……はぁ……はぁ……」
助かった。
その実感が、遅れて体に広がっていく。
だが同時に――
「……なんなんだ、今の」
視線が、自分の右手へ向く。
さっき突き出した手。
あの瞬間、確かに何かが起きた。
だが――分からない。
「……考えても無駄か」
小さく息を吐く。
今は、それよりも。
「……ステータス」
意識を向ける。
【ステータス】
名前:――
年齢:18
職業:村人 Lv3 / Lv50
HP:102 MP:100
STR:12 DEF:5 INT:10 MDEF:5 DEX:12 LUK:5
スキルポイント:4
能力:■■■
「……やっぱり上がってるな」
さっきの表示は見間違いじゃない。
「Lv1から3……」
ゆっくりと数値を見る。
HP、STR、DEXが上がっている。
(……この職業の成長か)
細かい仕組みは分からない。
だが傾向は読める。
「体力と、攻撃と、素早さ……か」
村人にしては、悪くない。
「……いや、それより」
視線が、別の数値に止まる。
スキルポイント。
「……4?」
確か、さっきは0だった。
魔物は1体。
普通なら1か、せいぜい2のはずだ。
一瞬、思考が止まる。
そして――
「……ああ、さっきのか」
頭の片隅に引っかかっていたものが、繋がる。
取得したスキル。
「スキルポイント倍加……」
ぼそりと呟く。
レベルアップでスキルポイントが取得できるのは分かった。
加えて――
「……倍になってるってことか」
この世界で生き残るのならこれ以上の幸運はない。
「……まあ、悪くはないな」
小さく息を吐く。
強くなれるなら、それでいい。
思考がまとまったところで足に力を入れて立ち上がる。
「……軽いな」
さっきよりも、明らかに動きやすい。
踏み込みが安定する。
反応も速い。
(これがレベルアップか……)
実感として、理解できる。
「……悪くない」
その言葉は、素直に出た。
ふと、視線を横へ向ける。
倒れたままの、白いウサギ。
「……」
ゆっくりと近づく。
今なら、少し冷静に見られる。
大きい。
普通のウサギとは明らかに違う。
だが、もう動かない。
「……これ、どうすっかな」
腹が減っていることに気付く。
食料として使えるのか。
「……いや、その前に」
ピリッ、とした感覚。
背中を走る。
「……っ」
反射的に振り向く。
草が揺れる。
一つじゃない。
複数。
(……またか)
さっきの気配と同じだ。
いや、それ以上に多い。
「……冗談だろ」
思わず呟く。
今の自分なら、さっきよりは戦えるかもしれない。
だが――
「……いや、無理だな」
冷静に判断する。
さっきのは、運が良かっただけだ。
あの“何か”がもう一度出る保証はない。
「……なら」
視線を遠くへ向ける。
草原の先。
うっすら見える林。
そこで各個撃破をするしかない。
「まずは場所を変える」
ここは開けすぎている。
見つかれば、逃げ場がない。
「……行くか」
足裏の痛みを無視して、一歩踏み出す。
さっきより動ける。
それだけが、今の救いだった。
背後の気配を感じながらも、振り返らない。
目的は一つ。
生き延びること。
そして――
「……次は、もう少しまともにやる」
小さく呟き、走り出した。




