無謀の証明
会議の空気が少し落ち着いたところで、ギルド員ダンバーがゆっくり立ち上がった。
「Bランクでも構わないのなら……私からも一人、提案させてください」
ダンバーは自分の書類から一枚を取り出し、テーブルに置いた。
名前はガスト。
Bランクの戦士。
依頼履歴を見ると、Bランクの討伐任務がずらりと並んでいるが、どれも少人数の高難度案件だ。
カヴァーデルが書類を引き寄せて、ページをめくり始めた。
ダンバーは静かに説明を続けた。
「ガストさんが担当している依頼は、確かにBランクですが……どれも人数不足の無理案件です。通常5名で回すキマイラ討伐を4名で、時には3名でこなしています。実質、Aランク相当の実力があると私は判断しています」
カヴァーデルが書類の特定の行に目を留め、目を丸くした。
「マジで?コイツ、3名でキマイラ討伐したの?滅茶苦茶じゃん。絶対5名いるだろ?」
ダンバーは落ち着いた声で頷いた。
「はい。ガストさんはそういった依頼を、知恵と工夫で熟してくれています。罠の配置を工夫したり、弱点を事前に分析したり……戦闘力だけじゃなく、頭も使ってパーティを回してくれます。私は一番信頼しております。是非とも加えてください」
ダンバーは軽く頭を下げた。
カヴァーデルは書類をもう一度見直し、ゆっくり息を吐いた。
「……コイツは戦闘力も調整力も間違いねぇだろ。よし、コイツ入れよう」
彼はテーブルに書類を置き、軽く呟いた。
「ただ、これ色々、うちのギルドの見直し必要だよなぁ?Bランクなのにここまでやってるのかよ……ちょっと、また考えておくわ」
部屋に小さな笑いが広がった。
カヴァーデルは苦笑して、視線を巡らせた。
「残り枠はどうする?若手から入れるか?やっぱり、王族相手だけど、うちのギルドの奴は若い奴でもこれだけ出来るんだぞってアピールしておきたいんだよ。若手で何か候補いるか?」
エセスは胸の鼓動を抑えながら、静かに待っていた。
今はリスティが入っただけで、十分に勝ちだと思っていた。
これで私の担当が一人入った。
これで……。
(……え?)
若手枠。
予想していなかった言葉が耳に飛び込んできた。
(しまった。若手が入ることは予想していなかった……!
まだ残り枠がある……リスティだけじゃなく、若いいい子も私は知っている……!)
エセスは慌てて自分の書類の束を捲り始めた。
指先が少し震える。
ハルキの書類を探す手が、急ぎすぎて一瞬止まる。
(ハルキ……!私の担当のハルキなら……!回復も雑務もこなして、パーティの雰囲気を保てる子だ……!今、ここで……!)
カヴァーデルが部屋を見回し、静かに言った。
「若手候補、いるか?」
エセスは書類を強く握り、息を吸った。
まだ、声は出せない。
でも、心の中で決意が固まっていた。
(行くしかない……今だ……!)




