調整役の価値
マーレイは手元の書類から一枚を取り出し、テーブルに広げる。
そこに書かれている名はミリア。
Aランク冒険者。
書類には依頼履歴が並んでいるが、どれも「大規模討伐」や「高難度単独任務」の類はなかった。
カヴァーデルが書類を睨み、眉を寄せた。
「ミリアか……実績を見ると、大きな仕事はしていないな?王族護衛に適任とは思えんが」
マーレイは落ち着いた声で、すぐに言葉を続けた。
「確かに、派手な単独討伐や大規模任務の記録はありません。ですが、それは崩壊寸前のパーティに調整役として入ってもらっているからです。今活躍しているAランクパーティ『銀翼の剣』……元々はメンバー間の連携が悪く、依頼失敗が続いていました。ミリアが入ってから半年で、連携が劇的に改善。今では安定した高難度依頼をこなしています」
マーレイは書類を指で示しながら、さらに続ける。
「Bランクの『鉄壁の盾』も同じです。前任の調整役が抜けた後、パーティが分裂寸前だったのを、ミリアが半年間フォローして立て直しました。現在はBランクながら、Aランク並みの依頼を安定して受けています。彼女の仕事は『目立つ成果』ではなく、『パーティが崩壊しないようにする』事なんです。王族護衛でも、チームの安定が一番大事だと私は思います」
部屋の空気が少し変わった。
カヴァーデルは書類をもう一度見直し、ゆっくり頷いた。
「……なるほどな。派手さはないが、裏で支えてるタイプか。確かに、王族相手にチームがバラバラじゃ意味がない。よし、ミリア採用だ」
カヴァーデルはマーレイに視線を移し、軽く笑った。
「お前、上手く回してるな?そういう使い方してるんだな?」
マーレイは小さく頭を下げた。
「ありがとうございます。担当として、彼女の強みを活かせる依頼を優先的に回してきました」
カヴァーデルは満足げに頷き、テーブルを叩いた。
「いいぞ。Aランクはこれで二名埋まったな」
エセスは席で息を潜めていた。
枠がどんどん埋まっていく。
心臓が早鐘のように鳴る。
(もう、行くしかない……Bランクのリスティだけど……今、この流れなら……)
彼女は書類を強く握り、深呼吸をした。
カヴァーデルが部屋を見回し、静かに言った。
「他いるか?」
エセスはゆっくり立ち上がった。




