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積み重ねの果てに  作者: 星狼
静かなる宣戦布告

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4/22

帰還と小さな約束

ギルドの扉が静かに開き、リスティが荷物を肩から下ろした。

遠方の荷運び護衛から戻ってきたばかりで、埃と汗が少し混じった匂いがした。

カウンターの向こうで、エセスが顔を上げて微笑んだ。


「おかえりなさい、リスティさん。無事に終わったんですね。報告書、ありがとうございます」


エセスはすぐに書類をめくり、報酬の袋を差し出した。

その横に、紙コップに入った温かいコーヒーをそっと置く。


「いつもありがとうございます。これ、飲んでください」


リスティは報酬の袋を受け取り、コーヒーを手に取った。

カップから立ち上る湯気が、疲れた体に優しく触れる。


「ありがとうございます。いただきます」


彼は一口飲んで、軽く息を吐いた。

カウンター周りを見回すと、いつもより人が少ない。

他の受付嬢の姿がほとんどない。


「今日、人少ないですね?」


リスティが辺りを見回しながら尋ねると、エセスは少し苦笑いを浮かべた。


「ええ……これから大きな会議がありまして。私も今から参加なんです」


彼女は書類の束を軽く叩いて、肩をすくめた。


「ちょっと大きな案件で、上層部が集まるんですよ。ちょっと緊張してます」


リスティはコーヒーをもう一口飲んで、静かに頷いた。


「大変そうですねぇ。まぁ、頑張ってください。僕は明日も早いので失礼させて頂きます。困った事が合ったら、声かけて下さいね」


彼はカップを空にして、丁寧にカウンターに置いた。

荷物を肩にかけ直して、扉の方へ歩き出す。


その背中に、エセスが小さく声を掛けた。


「リスティさん」


リスティが振り返る。

エセスは少し照れくさそうに、でも真剣な目で言った。


「私、頑張りますね」


意味深な言葉だった。

リスティは一瞬、首を傾げたが、すぐに淡々と答えた。


「はい、頑張ってください」


彼は軽く会釈して、ギルドの扉を押し開けた。

外の風が少し冷たく、夕陽が長く影を伸ばしていた。


エセスはカウンターに肘をついて、リスティの背中を見送った。

カップの底に残ったコーヒーの香りが、まだ少し漂っている。


「……絶対に、チャンスを掴んでみせます」


彼女は小さく呟いて、会議室へ向かう書類の束を抱えた。

足取りはいつもより少し速かった。

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