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積み重ねの果てに  作者: 星狼
酒席の決戦

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21/22

担当者の覚悟

拍手が収まった頃、マーレイがゆっくりとグラスを置いた。

部屋の視線が自然と彼に集まる。

マーレイは静かに立ち上がり、カヴァーデルを見据えた。

表情はいつも通り冷静だが、目には静かな決意が宿っている。


「正直、私はミリアの担当はカヴァーデルさんにして頂いても大丈夫ですよ」


カヴァーデルが目を丸くした。


「えっ……?マジで……?」


マーレイは鋭い目でカヴァーデルを捉え、言葉を続ける。


「ミリアを使う事でカヴァーデルさんの担当が底上げされるなら、私はミリアをお譲りします」


カヴァーデルは慌てて身を引いた。


「それは、どういう事だ……もう少し詳しく聞かせてくれないか……?」


マーレイは淡々と説明を始めた。


「私の担当の『銀翼の剣』『鉄壁の盾』。こちらはミリアのおかげで立て直されただけではなく、自分達もミリアのようになりたいとの目標を持ち、同じように他のチームの立て直し業務を行なっております。ミリアがいなくなる事は苦しくなりますが、なんとかミリア抜きでも回す事は可能かと」


カヴァーデルは喉を鳴らした。


「お、おう……そ、そうなのか……」


マーレイは視線を外さず、静かに続ける。


「ミリアが加わる事で、カヴァーデルさんの担当にミリアの調整力が受け継がれるのであれば、私はミリアをお譲りしても構いません」


エセスは息を呑んだ。

マーレイの言葉に、組織のためなら担当を手放す覚悟を感じる。

同時に、マーレイの本音は違うとも思った。

この人は、ミリアを誰にも渡したくないはずだ……


マーレイはさらに言葉を重ねた。


「ただ、カヴァーデルさんは多くのSランクを担当されていますよね?ミリアと同じような調整力を持った人材はいませんか?どうしてもいないと言うのであれば、ミリアの担当変更を引き受けますが、どうなさいますか?」


強い瞳でカヴァーデルを見つめるマーレイ。

エセスは確信した。

マーレイは本音ではミリアを手放したくない。

でも、組織のためなら……それでも……


カヴァーデルは額に汗を浮かべ、視線を泳がせた。


「いや、えっとな……わかったわかった……そうだな?ジョンや、シンパーに頼めばなんとかなりそうだな……?わかったわかった。ミリアはお前の担当のままでいい……」


マーレイは静かに頭を下げた。


「はい。それでは引き続き、ミリアの担当は継続させて頂きます」


一同が拍手をする。

サイクスが笑いながら手を叩いた。


「いやぁ、無礼講って楽しいねぇ、本当」


カヴァーデルは照れ臭そうにワインを口に運んだ。


「もう、本当、言わなきゃよかった……ここまで総スカン喰らうとは想像してなかった……」


一同がくすくすと笑う中、

サイクスがグラスを掲げて声を上げた。


「お前ら、手に負えないようなヤツがいたら、いつでも俺に回せよ!俺はそういうヤツの扱い専門だからな!なぁ〜んでも引き受けてやっからよ!?」


エセスはグラスを手に取り、静かに息を吐いた。

皆、酒の勢いで本音を出しすぎてしまった。

でも、この本音の語り合いが、

ギルドを少しずつ良くする一歩になるかもしれない。

彼女は小さく微笑んだ。

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