見るべき場所
エセスはワイングラスを飲み干し、ゆっくりと立ち上がった。
部屋の視線が一気に集まる。
彼女はカヴァーデルの前に歩み寄り、静かに、しかし強く言った。
「私、今のランク査定システム、間違っていると思います」
マーレイが無言で拍手をする。
ロード、ダンバー、エイリーが続き、部屋に拍手が広がった。
カヴァーデルは少し驚いた顔で、エセスを見上げた。
エセスは深呼吸をして、言葉を続けた。
「確かに、大型モンスター討伐、夜間の業務などは、我々ギルドにとっても重要な仕事です。ですが、評価対象は果たしてそれだけでしょうか?」
カヴァーデルはグラスを置いて、身を乗り出した。
「よしよし、聞こう、聞こう……じゃあ、お前は他にどういった物が評価対象だと思うんだ……?」
エセスは視線を落とさず、声を張った。
「私達の担当メンバーの力、そのものですよ!?」
カヴァーデルが少し戸惑う。
「お、おう……」
エセスは一つずつ、指を折って説明を始めた。
「リスティさんは、新規案件の信頼感を得る能力に優れています。それこそが、彼の能力の本質です。闘技場の新規契約を成功させ、以降の取引を安定させたのも、遠方交易路の初回護衛を完遂させたのも、すべて『信頼を築く』という地味な力によるものです」
サイモンが強く拍手をする。
エセスは続ける。
「サイレンさんはAランクではありますが、人を見る目があります。だから、私の担当のハルキを指名してくれたんです。こういった人員選別能力も、評価対象ではないでしょうか?」
ロードが強く拍手をする。
「ガストさんは、少人数の無理案件を知恵と工夫で熟しています。三人でキマイラ討伐を成功させたのも、毒矢の支給を諦めずに求めたのも、すべて『工夫と執念』の賜物です。これらが他のBランク案件と同じような扱いでよろしいのでしょうか?こういった部分も評価対象と考えます」
ダンバーが強く拍手をする。
エセスは最後に、声を強めた。
「ミリアさんは、ギルド内での崩壊寸前のパーティの立て直し能力があります。今活躍しているAランク・Bランクのパーティが、ミリアのおかげで生まれ変わったんです。こういった部分こそが、私達ギルド全体の底上げになっているのではないでしょうか?こういった部分も評価対象だと思います!」
マーレイが強く拍手をする。
一同の拍手がさらに大きくなった。
「現在の査定システムでは、評価されるべき人間が評価されないという結果を生んでいると私は考えます。こちらの査定システムの見直し……どうか、よろしくお願いします」
エセスは深く頭を下げた。
カヴァーデルはしばらく黙っていた。
やがて、ゆっくりと頷いた。
「わかったわかった……お前の言う通りだな……?見直すわ」
一同が大きな拍手を送る。
エセスは静かに下がった。
胸の鼓動が、まだ少し速い。
サイクスが笑いながら、マーレイに声をかけた。
「マーレイも言ってやれ!」
マーレイはグラスを手に取り、ゆっくり立ち上がった。




