引き抜きの影
エセスはカウンターに手をつき、声を震わせながら聞く。
「ハルキ……何かご迷惑おかけしました……?」
心の中で最悪のシナリオが浮かぶ。
プレッシャーに負けて、王子に失礼な態度を取ってしまったのではないか。
護衛中にミスをして、騎士団に迷惑をかけたのではないか。
イアンは慌てて手を振った。
「あっ、いや、そういうヤバさじゃないよ?仕事は完璧だった。そこは大丈夫」
エセスはほっと息を吐いた。
(よかった……ハルキはプレッシャーに負ける子じゃない……)
イアンは少し声を落として、続ける。
「あの子はねぇ?リナちゃんと違って、王国騎士団の方から評価されてる臭いんだよ。騎士団連中が滅茶苦茶可愛がってた」
エセスの内心で喜びが広がった。
(王国騎士団に認められた……!ハルキの気遣いが、ちゃんと届いてたんですね……)
しかし、イアンの表情は少し複雑だった。
彼は苦笑いしながら、言葉を続けた。
「それで、連中も冗談で言ってると思うんだけど……ハルキ君に『うちの騎士団に来ないか?』とか言ってたんだよ」
エセスの顔色が一瞬で青ざめた。
「えぇ!?ハルキを引き抜こうとしてるんですか!?」
イアンは肩をすくめて、苦笑いを深めた。
「いや、流石にレッド国だから、そんな事はしないとは思うけど……俺は、ハルキをレッド国の依頼に駆り出すのは、ちょっと危ないんじゃないかなぁとは思う」
エセスはすぐに書類を取り出し、メモを書き始めた。
「イアンさん、重要な報告ありがとうございます。ハルキの使い方、参考にさせて頂きます」
イアンは軽く頷いて、言葉を続けた。
「まぁ、あの子なら、引く手数多でしょ?どの任務でも通用すると思うよ。だから、俺はうちのギルド内の依頼で回した方がいいと思うかな?」
エセスはメモを書き終え、静かに頭を下げた。
「……ありがとうございます」
イアンはカウンターに肘をついたまま、ふと話題を変えた。
「他、あの任務に参加してたメンバーで担当してる人いる?」
エセスはすぐに答えた。
「リスティさんも私の担当です。リスティさんはどうでしたか?」




