Sランクの雑談
王族護衛の依頼から、数日後。
ギルドの受付カウンターは、いつもより静かだった。
エセスとエイリーの二人が、書類の整理をしながら待機している。
そこへ、扉が開いてSランク冒険者のイアンが入ってきた。
「お疲れ様です、イアンさん」
エセスとエイリーが同時に頭を下げた。
イアンは軽く手を上げて、カウンターに肘をつく。
「あれ? カヴァーデルさんいない?」
彼は辺りを見回しながら尋ねた。
エセスがすぐに答える。
「もう数十分で来ると思いますが……呼んできましょうか?」
イアンは首を振って、笑った。
「いいよ、いいよ。今日、早く終わったし、十分ぐらいなら待っておくよ」
彼はカウンターの端に腰かけて、雑談を始めた。
「あのさ?リナちゃんって子いるでしょ?あの子の担当って誰?」
エイリーが明るく手を挙げた。
「はい、リナの担当は私です」
イアンは目を細めて、満足げに頷いた。
「あの子、凄いねぇ。とんでもない大物になるかもしれないから、大事にしなよ?」
エイリーの目が輝いた。
「王族護衛の任務ですよね?リナの様子、どうでした?」
イアンは軽く肩をすくめて、楽しげに答えた。
「ずっと、ペイジ王子の隣にいたよ。あの子、歳が近いからペイジ王子に気に入られたっぽいよ。護衛もやりつつ、王子の話に付き合ってね、若いのにしっかりしてて関心したよ」
エイリーは嬉しそうに頰を緩めた。
「ありがとうございます。リナ、王子に気に入られたんですね」
イアンはさらに言葉を続けた。
「だから、レッド国からの依頼が来たら、リナを優先的に回した方がいいかもしれない。あの子出しておけば多分、相手方の信用は買えると思うよ」
エイリーはすぐに書類を取り出し、メモを書き込んだ。
「はい、ありがとうございます。参考にさせて頂きます」
イアンは満足げに頷き、次に話題を変えた。
「それでね?もう一人、若い子いたでしょ?ハルキ君。ハルキ君もエイリーさんが担当?」
エセスが笑顔で前に出た。
ハルキの成果に期待しながら、静かに尋ねる。
「ハルキの担当は私です。ハルキはどうでしたか?」
イアンは少し間を置いて、苦笑いを浮かべた。
「あのねぇ、あの子はねぇ……ちょっとヤバいかもしれない……」
エセスの表情が一瞬、固まった。
イアンの言葉に、不安がよぎる。
(ヤバい……?ハルキが、何か……?)
部屋の空気が、少しだけ重くなった。




