いつも通り
翌日。
ギルドのカウンターは、昨日と同じく静かだった。
リスティが扉を押し開け、荷物を下ろす。
いつものように、依頼達成の報告に来ただけだ。
「今日も誰もいないですね?まぁ、今日は僕が遅くなっちゃったからかな?」
リスティは苦笑いしながら、辺りを見回した。
エセスがカウンターから顔を上げ、柔らかく微笑んだ。
「本日もお疲れ様でした、リスティさん」
彼女は報酬の袋を差し出し、いつものように紙コップのコーヒーを添えた。
しかし、今日は笑顔が少し違う。
少し、意味深だ。
「実はですね……一ヶ月後の話になるんですが、エセスさんに頼みたい依頼があるんですよ。ちなみに、この依頼を引き受けないと、リスティさんはうちのギルド出禁になっちゃいます」
リスティはコーヒーを手に取り、苦笑いを深めた。
「なんですなんです?また、新規案件ですか?」
エセスは周りを軽く見回し、小声で囁いた。
「はい。これは他言無用ですよ?レッド国の王子の護衛案件です」
リスティの表情が一瞬、真顔になった。
「……マジっすか?」
エセスも真顔で頷いた。
「はい。こちらを頼めるのは、リスティさんしかいません。いつものように、受けてくれますよね?」
リスティはコーヒーを一口飲んで、静かに息を吐いた。
少し考えてから、真剣な表情で答えた。
「わかりました。やらせて頂きます」
その時、奥の部屋から足音が近づいてきた。
サイクスが現れ、エセスに視線を向けた。
「彼が、リスティ君だよね?」
エセスが頷く。
「はい、サイクスさん」
リスティは慌てて頭を下げた。
「幹部のサイクスさん……あっ、よろしくお願いします」
サイクスは軽く手を上げて、笑った。
「エセスから話は聞いたと思うが、君の貢献は見させて貰ったよ。気負う事はない、大丈夫だ。ジョン、エヴァンス、シンパー、イアンの四名も参加する」
リスティの目が少し丸くなった。
「ええっ?有名人ばかりじゃないですか?」
サイクスは肩をすくめて、穏やかに言った。
「あぁ、Sランクの有名人ばかりだ。だから、君が気負う必要はない。君はいつも通りの仕事をしてくれれば、それでいい。一ヶ月後、頼むよ」
彼はそう言って、軽く微笑んだ。
エセスが横から明るく声を掛けた。
「リスティさん、頑張って下さい!」
リスティはコーヒーカップをカウンターに置き、笑顔で答えた。
「わかりました。いつも通りに頑張らさせて頂きます」
サイクスは満足げに頷き、奥の部屋へ戻っていった。
エセスはリスティを見送りながら、静かに息を吐いた。
彼女の目には、達成感と少しの緊張が混じっていた。
リスティは荷物を肩にかけ、ギルドの扉を押し開けた。
いつもの街並みが広がる。
彼は一歩踏み出し、いつものように淡々と歩き始めた。
一ヶ月後、王族護衛が待っている。
でも、彼にとっては「いつも通り」の仕事だ。
だが、それでいい。




