第二十四話:ラッカーナでの休息(前編)
翌朝、食事を済ませると早速三人は海館へと出かけた。
「ミリィーさんはどんな水着を買ったんですか?」
メニイが道すがら問いかける。
「秘密よ」
ミリィーはゼイルに視線を送りながら答えた。
「なら私も秘密です」
メニイも負けじとゼイルに向かって呟く。
「ここだよ! 到着~!」
ゼイルはそう言うと海館に向かって走り出した。
「ちょっ、ちょっと・・・」
「あっ、待ってくださ~い!」
するとその後をミリィーとメニイが追いかける。
三人は海館の受付で使用料を払うと、それぞれ男女の更衣室に向かう。
遊泳スペースに最初に出てきたのは、緑地に黒の柄が入った水着を着たゼイルである。
海館は人工的に作られた水槽に海水を入れてあるので、館内は潮のにおいがする。
「水温もちょうどいいな・・・」
大半の海館は魔術で水温調整されていて、快適な遊泳が出来る。
「ゼイルさん、お待たせしました!」
メニイが着替えを終えたようだ。
「ああ、全然待ってない・・・よ」
メニイは白地に青いラインの入った、パレオ付きの可愛い水着を着ていた。
「ど、どうですかね? 似合ってますか?」
少し恥ずかしそうに、上目づかいでゼイルに問いかける。
「うん、凄く似合ってるよ!」
「ゼイル、私のは似合ってる?」
背後からいきなり声をかけられて、驚きながらゼイルは振り返った。
そこには少し際どいオレンジ色のビキニを着たミリィーが、手を後ろ組みして立っていた。
「どうなの?」
反射的に目を逸らしたゼイルに、ミリィーは前かがみになって更に追い打ちをかける。
「すっ、凄く似合ってるよ!」
そう言うとゼイルは逃げるように水槽に飛び込んだ。
するとメニイが凄む。
「ミリィーさん・・・そういうのはいけないと思いますよ!」
「いけないって何が? 私はゼイルに水着を見てもらっただけだけど? ・・・もしかして、メニイも構って欲しかったの?」
「ちっ、違います・・・!?」
否定するメニイをミリィーがハグする。
「メニイは可愛いわね~。肌はツルツルスベスベだし・・・」
ミリィーはそう言うとメニイに頬擦りする。
「ちょっと、やり過ぎですよ! ミリィーさん!!」
メニイは赤面しながら身を離そうとする。
「仲良きことは素晴らしきかな~!」
メニイは声のした方にゆっくりと視線を移すと、そこにはやはりゼイルが佇んでいた。
「ゼッ、ゼイルさん!! これは・・・」
’ドッパーンッ’
メニイが何か伝えようとしたが、言い終える前にゼイルは勢いよく水飛沫を上げて水槽に飛び込んでいった。
十分後、三人は水槽に入っていた。
「みんなで泳いで競争してみる?」
ゼイルが二人に提案する。
「良いわね。一番の人には何か賞品があると、やる気出るわよね? そうね~・・・一番の人の言うことを、他の二人は何でも聞くっていうのはどうかしら?」
「えっ、何でも!?」
ゼイルは大きなリアクションをとった。
「ええ、何でもよ! どんな言うことでも聞くの」
ミリィーがテンション高めに言うと、メニイが俯きながら呟いた。
「すみません。私、泳げないんです・・・」
するとミリィーが落ち着きを取り戻し、メニイに告げる。
「そうだったの・・・それじゃあ仕方ないわね」
「・・・もしよかったらだけど俺が泳ぎ方、教えようか?」
ゼイルが尋ねると
「いいんですか?」
メニイの顔が’パァッ’と明るくなった。
「じゃあ、私は滑り台を滑ってくるわ」
ミリィーはそう言うと滑り台の方に泳いでいく。
ミリィーを見送ると、メニイがゼイルの耳に、顔を近づけて囁いた。
「お願いします、ゼイル先生・・・」
ゼイルは驚いて、赤面しながらメニイを盗み見ると、耳を赤くして俯いていた。
「ま、まずメニイは水に顔を付けられる?」
「どうでしょうか? やってみます・・・」
そう言うとメニイは水面に顔を付けた。
十秒程して顔を上げる。
「出来ますよ、問題ありません」
「じゃあ、次は潜ってみようか? 目を閉じて、息を止めて十秒間、水に潜ってみて」
メニイは言われた通りに潜る。そして十秒後、水面に顔を出すと
「先生、出来ました!」
笑顔で答える。
するとゼイルも笑顔になる。
「じゃあ今度はバタ足だな。水槽の縁を掴んでバタ足をして体を浮かせよう」
「はいっ先生」
メニイはバタ足を始める。
これも十分程でクリアする。
「メニイは筋がいいね? じゃあ今度は俺と手を繋いで、バタ足をして水槽の中を泳いでみよう」
「あっ、はい。お願いします・・・」
そう言ってメニイとゼイルは両手を繋ぐ。
そしてメニイは、バタ足を始めると・・・前に進んだ。
その喜びと、ゼイルに手を繋いで支えてもらっていることで、高揚感に包まれる。
”ずっとこうしてたいな~”
メニイが幸福感に浸っていると、頭が何かにぶつかった。
水槽の底に足をつき、顔を上げると、肌が触れ合うほどの距離にゼイルがいた。
「すいませーん・・・」
ゼイルの後ろを人が横切っていく。
人がいなくなったのを確認すると、ゼイルが前に向き直った。
するとメニイが至近距離に立っていることに気付く。
「あっ、あのっ・・・ゼイルさん・・・」
「メッ、メニイ・・・」
二人が見つめ合っていると、ゼイルの背中に何か柔らかいものが当たった。
「二人で何やってるの~?」
ミリィーが声をかける。
「!? こっ、これは・・・そういうんじゃなくて・・・」
メニイは焦って答えたが、すぐにその感情は怒りへと変わっていく。
ミリィーがゼイルに抱き着いていたからだ。
「何してるんですかミリィーさん! 早く離れてください!!」
メニイはゼイルを挟んで、後ろのミリィーの腕をゼイルから離そうとする。
「へぇ~、水中は苦手なはずなのにやるじゃない! でも、今どういう状況かわかってる?」
メニイは動きを止めると、ゼイルと密着していることに気付く。
赤面しながらゼイルの表情を窺うと
「ゼッ、ゼイルさん!?」
白目で気絶していた。
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