第二十一話:ラッカーナ(前編)
一行は’ようこそラッカーナへ ’と書かれた看板が掲げてある、木で出来た鳥居のような門を馬車でくぐる。
「潮のにおいがするね?」
ゼイルが皆に問うとメニイが真顔で答える。
「港町ですからね。・・・ですから、料理はやはり魚でしょうね」
「・・・そうね」
ミリィーが浮かないような、笑顔のような複雑な表情をしていることに気付いたのは、ジーニーだけだった。
ジーニーは酒場の前で馬車を止めると三人に声をかける。
「今回もありがとう。助かったよ」
「いえいえ」
「またごひいきに」
「縁があったらまた」
メニイとゼイル、ミリィーも返事を返した。
三人は酒場に入ろうと馬車を降りて歩き出すと、
「ミリィーさん、ここは活気のある町だからパワーをもらえるよ。それじゃあ」
ジーニーは去り際に一言いい残す。
「・・・ありがとうございます」
ミリィーは小さめの声で言った。
翌朝、朝食後に皆で町を見て回ることになった。
「先ずは船を見に行かない?」
「ゼイルさんは船が好きなんですか?」
テンション高めのゼイルにメニイが質問する。
「うん、でかい船ってかっこいいじゃん」
「ゼイルも男の子ね?」
ミリィーが言った。
「まあね」
などと話しながら一行は港へ向かう。
「おー、船だ」
「あれっ、船が好きじゃないんですか?」
先程までの勢いがなくなったゼイルを見て、メニイが不思議そうに問いかけた。
「いや、大きいのが無いからさ。でかいのがいいんだよ」
「へー、そうなんですね?」
メニイが合点のいかないような顔で返事すると、ミリィーが呟く。
「やっぱり、男の子ね」
「うん、男の子ですよ」
ゼイルが答える。
「まあ、それでも船は嫌いじゃないけどね」
カモメの鳴き声と波の音が聞こえる港で、三人はしばらくまったりとした時間を過ごした。
三人は正気に戻ると市場へ向かうことにした。
「港町と言えば魚。魚と言えば市場ですよね?」
メニイが突然二人に真顔で同意を求める。
「うん」
「まあ、そうよね」
ゼイルとミリィーが返答すると、メニイは満足そうに呟く。
「やはり、そうなりますよね」
市場に到着すると早速メニイは、豪快そうな髭のおじさんに駆け寄り、声をかける。
「おじさん、今日は何が取れました?」
「おお、今日はアジとイカが大漁だったよ! お嬢ちゃん買い物かい?」
「そんな所です。・・・アジを食べられるお店とか、ありますか?」
「それなら市場の真ん中にある食堂がいいねぇ」
「わかりました、ありがとうございます」
メニイはお礼をすると、更に数人のおじさんと話をしてから、ゼイル達と合流した。
「情報収集は完了しました。今日はアジがおすすめということでした」
メニイは二人に情報を伝える。
「ああ、そうなんだ」
「アジ、良いわね」
ゼイルとミリィーは返事する。
「では、市場中央の食堂に向かいましょう。そこで極上のアジが食べられるようなので・・・」
そう言うとメニイはゆっくりと歩きだす。
二人はアイコンタクトをすると、無言でついていくことにした。
そして三人は目的の食堂に行きつく。
「へぇ~、いかにも港飯の店って感じね?」
「そうだね。なかなか上手い言い回しだね、ミリィー」
「私も今のはよかったかな~、なんて・・・」
ゼイルとミリィーが会話しているとメニイが呟く。
「外観は素朴でシンプル・・・中身で勝負ということですね?」
三人は再び無言になり、店に入った。
「「「いらっしゃいませぇ~ぃ!」」」
入店すると威勢のいい挨拶があちこちから飛び交う。
「挨拶は完璧、店内は清潔ですね・・・。ではあの席に座りましょう」
二人はメニイについていき、テーブル席に着いた。
すると数秒で水の入ったコップ三つを店員が持ってくる。
「メニューが決まりましたらお呼びください!」
一言いうと忙しそうに去っていった。
「さて、今日はアジとイカがおすすめのようですが、何にしますか? ・・・あっこれなんていいですね。アジの叩き定食、私はこれにしますね? ゼイルさんとミリィーさんはどれにしますか?」
「えっと・・・メニイのやつおいしそうだね? 同じのにするよ」
「あっ、私も同じの」
ゼイルとミリィーはメニイの圧に負けて同じものを選んだ。
メニイが右手をピッと挙げて店員を呼ぶ。
「すみませ~ん」
すると先程の店員がすぐに駆け寄る。
「はい、ご注文ですか?」
「はい。アジの叩き定食を三つ、お願いします」
「はい、ご注文を繰り返します。アジの叩き定食を三つですね?」
「はい、お願いします」
メニイが注文をすると店員は厨房の方へ戻っていく。
ゼイルが辺りを見回すと確かに汚れが見当たらず、隅々まで清掃されているように感じた。
「それにしてもこの店、涼しくない?」
ミリィーが二人に声をかけるとゼイルも同意する。
「確かに、外より涼しいね?」
「・・・気が付きましたか? これは恐らく魚の鮮度を保つためでしょう。魚が傷むと味が落ちるのはもちろん、食中毒の心配も出てきますからね」
「そ、そうか!」
「確かにそうね!・・・気付かなかったわ」
メニイが語ると二人も合点がいく。
そうこうしていると、定食を店員が運んできた。
「はいお待ち、アジの叩き定食を三つです。ごゆっくり」
定食はアジの叩きとごはん、豚汁のセットであった。
三人はまず豚汁を飲んでのどを潤し、アジの叩きを口に運ぶ。
「うまい!」
「どちらもっ、すごくおいしいわ!」
ゼイルとミリィーが感想を述べるとメニイが口を開いた。
「この豚汁は豚の骨と皮で出汁をとっているようですね。他の野菜のうまみも合わさって、お互いに引き立て合ってます。そしてこのアジの叩き。身をつぶさないように切ってあります。だからこんなにプリプリしてるんですよ。これは・・・百点満点中、百二十点です!!」
メニイは目を潤ませて感動していた。
その後は皆、普通に食事することにした。
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