第十六話:武闘大会(後編)
そしてゼイルとフォルスは危なげ無くトーナメントを勝ち抜き、決勝に駒を進めた。
コロシアムに選手入場のファンファーレが響き渡る。
闘技場にゼイルとフォルスが姿を現した。
ゼイルとの距離が十メートル程に近づくと、フォルスが口を開く。
「・・・やはり、お前が決勝の相手か」
「まあ、約束したしね」
「ふん」
軽く会話し終えると両者は剣をとり、構えをとった。
程なくして試合開始の鐘が打たれる。
しかし数十秒経っても、二人は試合開始位置から動かなかった。
審判は痺れを切らして声を上げ、二人に近づく。
「もう試合は始まっているぞ! なぜ動かな・・・へっ!?」
審判は遠くからではわからなかったが、二人が全身をピクピクとさせているのに気付いた。
よく見ると剣の切っ先も僅かに上下左右に動いている。
二人は相手の出方をうかがって、動きをとろうとしては止めるを繰り返していた。
両者はゴングが鳴ってからずっと戦っていたのだ。
フォルスは一歩下がると呟く。
「どうやらまた強くなったようだな?」
「それはお互い様でしょ。隙が見当たらないよ」
ゼイルは続けた。
「魔術で勝負すればこうはならない・・・」
フォルスは言い終わる前に、急にゼイルに向かって剣を突き出し、突進した。
「ふんっ」
’ガキィン’
共に両手で握った剣をクロスして押し合う。
「ぐっ」
「ぬぅっ」
するとフォルスがその状態から右への横薙ぎをしてゼイルを後退させる。
後退と同時にゼイルは左上からの袈裟切りを仕掛けた。
フォルスは刃を返し、横薙ぎをしてゼイルの剣を受け流す。
直後ゼイルは一歩前に踏み込み、右上からの袈裟切りを見舞う。
すると二人は再度剣をクロスした状態になり、押し合う形になる。
「絶対に勝つ! お前に勝つんだ!!」
「俺にだって譲れないものがあるんだ! 相手がフォルスでも剣では負けられない!!」
今度はゼイルが左に横薙ぎ、フォルスを後退させる。
そして刃を返して、半身で前にしている右片手で右側に横薙ぎを放った。
「何をしている? その間合いでは届かないだろうが!!」
フォルスはそう言って剣を上段に構える。
が、直後フォルスは違和感を感じた。
”・・・今までより、リーチが長い?”
ゼイルは片手剣を、二十五センチもある柄の端を持って振るっていた。
見ている者全員がゼイルの勝利を確信したとき、
’ズドーン!’
何かが爆発する音がする。
ゼイルはリングの場外に吹っ飛び、気絶していた。
シーンとした闘技場でいち早く気を取り直した審判は大声で叫ぶ。
「勝者、フォルス選手ぅぅぅ!!」
「「「「「うわあああああああ!!!!」」」」」
一瞬の後、観客がその日一番の歓声をあげた。
「今のは、魔力を直接ゼイルさんに当てたようですね・・・」
「つまり、魔術を使ったのね?」
メニイの分析にミリィーが尋ねる。
「ええ、魔力を放出するだけなら、詠唱は必要ありませんからね」
メニイが答えるとミリィーが呟く。
「まあ、何でもありだしね。・・・さてと準優勝のゼイルをわたしが慰めに行かないとね」
「何を言っているんですか? わたしが準優勝のゼイルさんを褒めるんです!」
メニイもそう言うと、二人で我先にと立ち上がり、競うように控室に向かった。
二人は同時に控室の扉を開けると、紫の甲冑の男と鉢合わせる。
「また、あいつには勝てなかった」
フォルスはそう言い残して、ドアから去ってゆく。
ミリィーはそんな彼を一瞬見た後、部屋に入った。
ゼイルは控室のソファーベッドの上に寝転がっていた。
丁度、法術で治癒し終えたようだ。
ゼイルは二人に気付くと座りなおし、声をかける。
「二人とも来てくれたんだ」
「体は大丈夫?」
ミリィーはそう言うと、ゼイルを優しく包み込むように腕を絡め・・・・・・ようとしたが、メニイに羽交い絞めにされる。
「メニイ! 何するの!? これじゃ慰められないでしょ!!」
「どさくさに紛れて何してるんですか!!」
「俺、フォルスに勝てなかったよ・・・」
ゼイルが呟くとメニイが声をかける。
「ゼイルさん、準優勝おめでとうございます」
「・・・ありがとう」
ゼイルはお礼を返すと続けて尋ねる。
「ところで、いつまでそうしてるの?」
抵抗するミリィーを羽交い絞めにしていたメニイは笑顔で答えた。
「ゼイルさんがソファーベッドから立ち上がるまでです」
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