第十二話:パンタン(後編)
翌日、折角都会に来たということで、三人はパンタンの観光をすることになった。
宿のドアを開けると朝日が差し込んでくる。今日もいい天気のようだ。
「じゃあ、どこから回りますか?」
メニイがゼイルに尋ねる。
「そうだな~・・・まずは装備を整えて・・・」
「そこは違うでしょ。私たちは観光するのよ?」
彼の返答にミリィーが突っ込む。
「そうだね。朝食もまだだし、何か食べようか?」
「良いですね。行きましょう!」
メニイが答えると三人は屋台群のある方に歩き出した。
「肉串焼きを三つください」
「あいよっ!」
メニイが注文すると、串焼き三つと活きの良い返事が返ってきた。
「はいっ。肉串焼きですよ」
串焼きを二人に渡す。
「うわ~、うまそうだな」
「いい匂いね」
「じゃあ食べましょうか?」
「「「いただきます!」」」
三人で声を合わせて言うと、皆で食べ始める。
「あ~、やっぱりうまいよ!」
「ほんと、香ばしくておいしいわね?」
「っ!? 焼き加減はミディアム。醤油ベースのタレが肉とマッチしていますね
さすが屋台の王様 ’串焼き ’。これはおいしいですね 」
各々食事を楽しんでいると、ゼイルが二人に質問する。
「次はどこに行こうか?」
「洋服を見るのはどうかしら?」
ミリィーが言うとメニイも賛同する。
「いいですね。行きましょうよ!」
「じゃあ次は服屋だね」
「ここはメンズもレディースも両方扱ってるみたいだから、丁度良さそうね」
ミリィーがそう言うと、三人で洋服屋に入店する。
店の棚には色とりどりの女性服や、落ち着いた感じのメンズ服が並べられていた。
「うわ~・・・素敵。こんなに色んな服があるんですね?」
「そうね! さすが品揃えがいいわね!」
女子二人は少しハイテンション気味に言うと、早速服を手に取り始める。
ゼイルはその反応に驚きつつ、メンズ売り場へと向かう。
「でも俺、あんまりファッションとか判らないからな~」
するとシャツの上にベストを羽織った、おしゃれな男性店員がゼイルに声をかけてきた。
「お客様、何かお探しですか?」
店員からにこやかに問われると、しどろもどろに答える。
「あっ、いや。・・・俺、正直ファッションとかには疎くて・・・」
「左様ですか? ではこちらへどうぞ」
そう言うと、店員は笑顔でゼイルを店の奥へといざなった。
その接客技術は鮮やかなものであった。
その頃女子二人は、
「・・・このコーディネート良いわね」
ミリィーが鏡に映った自分を見て言う。やはりノースリーブにミニスカートとセクシーな装いである。
対してブラウスにスカートを合わせた可愛らしい恰好をしたメニイが言った。
「これ、可愛いです!」
「ふーん。じゃあどっちが良いか、ゼイルに聞いてみる?」
ミリィーが少しからかうようにメニイに尋ねる。
するとメニイは言った。
「良いですよ。・・・吠え面をかかないでくださいね?」
「・・・って、あれっ? ゼイルは何処に行ったのかしら?」
ミリィーは辺りを見回す。
二人はそこでゼイルが売り場に居なくなっていることに気付いた。
「・・・ゼイルさんに見てもらおうと思ったのにな」
メニイが誰にも聞こえない程の小声で呟いた。
すると二人に、ベストを羽織った男性店員が声をかける。
「お連れ様をコーディネート致しました・・・」
言い終わると店員の陰からゼイルが出てくる。
「いや~、ファッションとか全然判らないんだけど、どうかな?」
トップスに白地のストライプシャツを着て、アウターは紺のジャケットを羽織っている。下はベージュのズボン、そしてこげ茶色の革靴を履いていた。
「やっぱり変かな?」
黙りこくっていた女子二人は、お辞儀をして声を合わせて言った。
「「・・・負けました」」
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