第十話:初の護衛(後編)
ゼイルたちは気を取り直して目的地を目指す。
少し行くと森を抜け、視界が開ける。
目の前には草原が広がり、空には様々な大きさの星達がまたたいていた。
「今夜は月明かりがあるから、遠くまで見渡せるな。もうすぐ村に着く。今日はそこで休もう」
ジーニーに言われて前方を見ると、確かに灯の明かりが見えた。
歩みを進めて村の宿屋に到着すると、馬車が止まる。
「ではまた明日、朝八時半にここに集合で。よろしく頼むよ」
ジーニーから声を掛けられると、ゼイルたちは軽く会釈してからその場を離れる。
「お腹すいたね?」
ゼイルが二人に言うと、メニイが返答する。
「そうですね。食事にしましょうか?」
「そうね、酒場に行きましょう」
ミリィーがそう言うと、三人は商店が並ぶ方向へと歩く。
程なくして酒場の看板が見えてくる。
「今日はよく働いたな~」
ゼイルがため息交じりに呟くと、ミリィーが「そうね」と返事する。
するとメニイがにこやかに言った。
「明日も頑張りましょうね?」
ゼイルは、”メニイの笑顔を見ると疲れが吹き飛ぶな”と思ったが口には出さなかった。
翌日、午前八時半には酒場の前に昨日のメンツが揃っていた。
「じゃあ行こうか?」
ジーニーが皆に声をかけると、一行は前進を始めた。
馬車は村を出て、広大な草原の中を進んでいく。
「もう、ここからはまっすぐパンタンに向かうだけだ。難所もないから気楽にいこう」
ジーニーが穏やかな声で言う。
「そうね。見晴らしもいいし、盗賊に出会うことも無いでしょうね」
ジーニーとミリィーの言う通り、そこからの道中では特に問題は発生しなかった。
陽が傾き、辺りが赤く照らされ始めた時
「みんな、見えてきたよ」
ジーニーの指さす方を三人が眺めると、灰色の壁が見えてくる。
更に近づいてゆくと、初めて見る壁の大きさと高さに気付いて、二人は驚いた。
「かっ、囲いがカッコイ・・・」
「大きな壁で囲われているとは聞いていましたが・・・本当に大きいですね!」
メニイはゼイルの呟きに食い気味で、少し興奮したように感想を述べた。
正門の前まで移動するとジーニーが衛兵に声をかける。
「パンタンで商売をしてるんですが・・・これが身分証です」
「はいっ、問題ないですね。お通り下さい」
兵士は笑顔で言うと、また門の脇に戻ってゆく。
するとメニイが口を開く。
「とても良い対応ですね。さすが都会ですね?」
「彼らは騎士団の団員なのさ。だからその辺の兵士とは違って、ちゃんと教育されているんだ」
ジーニーが説明すると「そうなんだ」とゼイルとメニイは感心したように頷く。
「二人とも典型的な御上りさんって感じね?」
ミリィーが少しからかうように言うと、ゼイルとメニイが答える。
「俺は確かにそうかもね」
「私は騎士団員を見たことが無かっただけです!」
一行はわいわい話しながら大きな門をくぐっていった。
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