表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第3話『眠れる森の少女たちと、目覚めた剣』

 “変える力”を持つ少年、エリオス。

 けれどその力のことを、彼自身はまだ知らない。


 彼は神々によって力を封印され、記憶を失い、別の世界に転送された“神の子”。

 今はただの少年として、普通の日々を過ごしている――そう思っていた。


 この日、学校は休み。

 本当はゆっくり寝ていたいエリオスだったが、育ての親・ライゼンに叩き起こされ、朝から軽い修行をさせられる。

 ライゼンは男勝りの口調を使うものの、内面はとても優しく、彼女の言葉には不思議とあたたかさがあった。


 昼になると、森の中へひとり足を運んだエリオス。

 空気の澄んだその場所で、彼はふしぎな“光に包まれた場所”を見つける。


 そこに眠っていたのは、赤い髪と緑の髪をもつ、双子のような少女たち。

 そのとき、エリオスの手にしていた石が、突然“剣”へと変わった。


 そして現れる黒き魔物。

 眠りから目覚めた少女たちは、風とともに魔物を斬り裂く。


 気持ちが物を変えたのか?

 剣と風が共鳴した理由は?

 そして、なぜ彼女たちはそこに眠っていたのか――


 運命の歯車が、ゆっくりと音を立て始める。

 第3話では、出会いと戦い、そして笑いと食欲と、少しの希望が交錯する「日常と目覚め」の物語が描かれていく。


魔物との戦いが終わり、森には再び静けさが広がっていた。

 だけどその静けさは、さっきまでの“張り詰めた感じ”とは少し違う。

 少しだけ、あたたかくて、やさしい空気だった。


 リセリアは、まだ手に持っていたエリオスの“変わった剣”を見つめていた。

 銀色の刃は、どこかやわらかく光っている。



リセリア:「ねえ、これ……本当に君の?」


エリオス:「え? う、うん……いや、作ったっていうより、石が勝手に……」


フィローネ:「でも、それって君の気持ちに反応したんだと思うよ?」


エリオス:「気持ち……?」



 自分の中から何かがあふれて、石を変えた。

 それが“気持ちの力”だとしたら――



リセリア:「まあ、細かいことはどうでもいいや」


 リセリアはぽすんと苔の上に座り込む。


リセリア:「お腹すいたし」


フィローネ:「お姉ちゃん、さっきまで寝てたのに!」


リセリア:「寝たあとはお腹がすく。それがルール」


エリオス:「ええっと……パンと、ジャムと……りんご、ならあるけど」


リセリア&フィローネ:「それ、食べる!」



 即答。勢いすごい。

 あっという間に、エリオスのリュックの中身は空っぽになった。


エリオス:「俺の昼ごはん~~!」


リセリア:「ふふっ、ごちそうさま」


 にっこり笑うリセリアと、まだりんごをもぐもぐしているフィローネ。

 でも、不思議と怒る気になれなかった。


 それどころか――楽しい。


 エリオスは、ふたりのやりとりを見ながら、ほんの少しだけ肩の力が抜けた気がした。



エリオス:(……俺、今までこんなに誰かと笑ったこと、あったっけ?)



 森の奥、木々のすき間から、光がこぼれる。

 リセリアとフィローネは、木陰の下で丸くなって寝転んでいる。

 その姿は、まるで長い夢から覚めた猫のようだった。



 エリオスは、まだ剣を見つめていた。

 あのとき確かに石だったものが、気持ちとともに剣に変わった。



エリオス:(もしかして……俺、本当に、何か変えられるのかも)



 ふと見ると、リセリアはまたゴロゴロして、フィローネは木の実を探していた。


リセリア:「なあ、次は何か焼いたやつ食べたくない? 肉とか」


フィローネ:「じゃあ、鳥を探して……あ、でも可哀想?」



 そんな他愛のないやり取り。

 けれど、それがなんだか心地よかった。


 森の光の中で、エリオスの心に芽生えたのは――



 “誰かといるって、いいかもしれない”という、ごく当たり前で、ごく大切な想いだった。

今回のエピソードでは、戦いの緊張感のあとに訪れる「ほっとする時間」、そして誰かと一緒に笑い合う日常を描きました。

 リセリアの飾らない強さと食いしん坊な一面、フィローネの素直で少し不思議な感性。

 そんな彼女たちと過ごす中で、エリオスの心にも変化が芽生えていきます。


 まだまだ謎の多いふたりの少女。

 彼女たちがなぜ“眠っていたのか”、どこから来たのか、そして――エリオスの力が何を意味するのか。


 読んでくださったあなたへ。

 ありがとうございます。エリオスの旅は、まだはじまったばかりです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ