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第1話 雷の女と、少年の朝

SNS(X)を始めました。

物語やキャラクターのことを少しずつ発信しています。

もしよければ、覗いてみてください。

「kagena」で検索すると出てくると思います。

ご感想や反応も、とても励みになります!


この世界には、ただひとつだけ存在する特別な力がある。


それは、物を、姿を、運命を――“別のもの”に変えてしまう力。


けれど、その力を持つ者は、たったひとりしかいない。


 


ある村に、少年がいた。


よく笑い、よく転び、よく空を見上げる、どこにでもいるような少年。


でも彼の中には、“誰にもない何か”があった。


 


それは、石を剣に、風を炎に、無を有に変える力。


本人すら気づいていない。

その力が、やがて世界を揺るがすほどのものだということに。


 


この物語は、

そんな力を持つ少年が、「何を変えるのか」を選ぶ物語。


世界か。

誰かか。

それとも――自分自身か。


 


まだ誰も知らない。

けれどその選択が、すべてを変えていく。


朝の日差しが、山の家をゆっくりと照らしていた。


 鳥の声が聞こえる。

 薪のはぜる音、石鍋から立ち上る湯気。

 まだ少し冷たい空気が、窓の隙間から忍び込んでくる。


 


ライゼン:「起きろ、エリオス。朝だ」


エリオス:「……今日は休みでしょ……寝かせてよ……」


ライゼン:「朝飯、冷めるぞ。あとで“残りもの”になっても知らないからな」


エリオス:「……うわ、目玉焼きの香り……ずるい……」


 布団の中でごろごろと転がりながら、

 エリオスはようやく顔を出した。


 


 台所では、ライゼンがエプロン姿で手早く調理をしていた。


 見た目は雷の神獣。

 でも、中身はガミガミうるさい姉御で、そして――


 たまに、ものすごく家庭的な一面を見せる。


 


ライゼン:「お前、昨日“剣の素振り”サボったろ」


エリオス:「……バレたか」


ライゼン:「バレるに決まってんだろ。鍋のふたより大きな音してたしな」


エリオス:「……え、あれ聞こえてたの?」


ライゼン:「あたしを誰だと思ってんだ。雷の加減、耳の加減、全部極めてんだよ」


 


 そんな言葉をかわしながら、ふたりはちゃぶ台を囲む。


 焼きたてのパン、焦げ目のついた目玉焼き、具だくさんのスープ。


 エリオスは「いただきます!」と元気に手を合わせ、

 遠慮なくパンを頬張った。


 


エリオス:「んー、やっぱライゼンのごはんが一番!」


ライゼン:「おだてても修行は減らさないぞ」


エリオス:「そのセリフ、毎回言ってる気がする……」


ライゼン:「“あたしの口癖”ってやつだ」


エリオス:「……あー、あの人の?」


 


 ふと、ライゼンの目が少し遠くを見る。


 その声に、ほんの少しだけ懐かしさがにじんだ。


ライゼン:「ああ。……かっこいい人だったよ。昔な。口調も、目つきも、生き方も。全部」


 


 その言葉に、エリオスは静かに耳を傾ける。


 心のどこかが、じんわりと温かくなる。


 


エリオス:「じゃあ、俺も……いつか、誰かの憧れになるのかな」


ライゼン:「なるさ。だから、鍛えるんだよ」


エリオス:「……やっぱり修行する流れ!? 休みの日なのにー!」


ライゼン:「あたしの子になった時点で、そういう運命さだめだ。覚悟しとけ」


 


 そう言って、ライゼンは笑った。


 男前な笑み。けれど、どこか母親にも似た強さと優しさがある。


 


 朝食を終えるころには、日が高くなっていた。


 


ライゼン:「食ったら外出とけ。山の上の空気でも吸ってこい。寝腐るなよ」


エリオス:「はいはい……森には入っちゃダメ、だよね?」


ライゼン:「……そういうことになってる」


 


 エリオスはジャケットを羽織って、ドアを開ける。


 差し込む光に目を細めながら、彼は小さく伸びをした。


エリオス:「さて、今日はどんな日になるかなぁ……」


 


 ――この日。


 彼はまだ知らない。


 “運命”という名の出会いが、森の奥で彼を待っていることを。

『あとがき|変わるのは世界か、心か』


物語をここまで読んでくださり、ありがとうございました。


この物語は、「変えられる力」を持ってしまった少年が、

何を変えるべきか、何を守るべきかを、自分で見つけていく話です。


彼の前には、多くの分かれ道がありました。

けれど選ぶのは、誰でもない“彼自身”。


どこかにいるかもしれない、

「変わりたいけれど、変わるのが怖い」誰かに、

この物語が少しでも届いたなら、とても嬉しいです。


そして、彼の旅はまだ続いていきます。


その先に何が待っているのか、

一緒に見届けてもらえたら幸いです。


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