第29話 沈黙の共犯者たち
第29話 沈黙の共犯者たち
■テレビ局・制作会議室
午後11時、都内某テレビ局の編集フロアの一角。数人の現役プロデューサーとディレクターたちが無言のまま画面を見つめていた。
映されているのは、ユナの最終配信と、記者・キタ・タロウの謝罪会見。
スクリーンが暗転し、重たい沈黙が会議室を満たす。
「……俺たちは、何をしてたんだろうな」
最年長のプロデューサーが口を開いた。彼の言葉に、他の誰もが反論できなかった。
■沈黙の構造
「ヒサシさんの番組が打ち切られたとき、スポンサーから圧力が来た。皆知ってたよ。“報道内容の真偽”じゃなくて、“空気”で判断してたって」
中堅ディレクターが頷く。
「“確定情報出るまで放送見合わせろ”って内部メモは回した。でも、確定したあと、俺たち何かしたか?」
「いや。“関わるな”って空気に従った。……それが、沈黙の正体だった」
■封書の届いた日
翌朝、ユナのチャンネル「YUNA/REVENGE」運営宛に、匿名の封書が届く。
中にはテレビ局の内部資料——
《この番組は当面の間、ヒサシ氏出演回を使用禁止とする。関係者はSNSでも発言を控えること》
それは、「ヒサシという存在を消す」ための無言の命令だった。
レイナは震える手で封書をスキャンし、動画に挿入する。
■配信動画:《共犯者たちの沈黙——テレビはなぜヒサシを消したのか》
タイトルは鋭く、訴えるような文字で始まる。
動画では、通達文書、関係者の証言、そして「過去映像封鎖」の事実が明かされる。
「ヒサシという一人の芸人が、社会的に“いなかったこと”にされたのは、なぜか?」
「“空気”に従った人々が、沈黙によって殺したのです」
■コメント欄
【ここまで組織ぐるみとは……】【まさに“記憶の抹消”だ】【でも、誰が責任を取るの?】
■モリヤマ・ケンジ 視点
かつてヒサシのマネージャーだった男は、古びた契約書をめくりながらつぶやいた。
「“品位に反する行為”って条文がある。でもな……“品位”って誰が決めるんや。空気か?」
「黙って従うことが“品位”やったら、もうこの業界、死んどるで」
■アユミの配信
ユナの死後、沈黙していたアユミがライブ配信を再開する。
「私は、彼女の言葉に揺さぶられてきました。でも、怖かった。“告発”なんて、大それたことはできなかった」
「でも今なら言える。私は、沈黙していた“共犯者”でした」
彼女の言葉は視聴者の心を刺し、同じように“見て見ぬふり”をしていた者たちからの告白が続々と届き始める。
■ユナのノート(回想)
レイナがページをめくると、最後にこう書かれていた。
——「父の沈黙に、私は怒った。でも、今ならわかる。“黙ること”もまた、“叫び”だったのかもしれない」
■ナレーション
“沈黙の共犯者”たちが、ようやくその沈黙を破り始めた。
それは、復讐ではなく、“記憶”という名の祈りだった。
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