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第23話 沈黙のコメンテーター

第23話 沈黙のコメンテーター

■ヒラタ・ジュンペイ 視点


早朝の情報番組「モーニング・フレーム」。かつて「言いたい放題のコメンテーター」として知られたヒラタ・ジュンペイの姿は、今、スタジオのどこにもなかった。


かつて彼が席を占めていた椅子は空白のまま。視聴者も、出演者も、その“沈黙”の意味を知っていた。


ユナの最新配信、《沈黙のコメンテーター——“喋らない責任”は、誰が取る?》。そこには、ヒラタが父・ヒサシを侮辱した過去映像、彼の家族写真、現在の活動停止の様子まで、赤裸々に描かれていた。


■番組控室


ヒラタは、控室のソファに深く沈み込んでいた。スマホに次々と届く通知。叩かれるコメントも、擁護する声も、彼の心には何も届かない。


「……俺があのとき、笑わなきゃよかったんか?」


マネージャーは沈黙を守った。


「“あれが空気だった”って言ったら、今は通用しないんだよな……」


■ユナ 視点


「彼は“言葉”を武器にして人を裁いてきた。でも今、その“言葉”が自分を沈黙させてる」


動画編集ソフトに並ぶ素材の合間、ユナはそう呟いた。


画面には、ヒラタが過去に言い放った一言がループしていた。


「いやー、面白ければ正義でしょ? 最近のネットは過激でいいね!」


「父が殺された理屈。それを一言で要約したのが、彼だった」


■レイナ 視点


「ユナ、あなたのやってること……これ、“裁き”なんじゃないの? 正義じゃない」


スタジオの外、レイナは苦しげに問いかけた。


ユナは一瞬、言葉に詰まる。


「私にとっては、これが“償い”なの。誰かが“沈黙の意味”を教えてあげないといけない」


■ヒラタ 視点


帰宅したヒラタを迎えたのは、無言の妻だった。


夕食の箸も進まない。テレビも点けず、部屋には彼の息子の姿もない。


「……もう、俺、喋らんほうがええんちゃうか?」


その一言に、妻はそっと答えた。


「ジュンペイ……あなたの“言葉”は、今でも人を動かせるの。だから怖い。でも、あなた自身がその“言葉”を信じられるなら、逃げないで」


■配信後の反響


ユナの動画は、わずか12時間で400万再生を突破。SNSでは賛否が入り乱れた。


【言葉で壊したなら、言葉で償え】【沈黙こそ最大の責任回避】【でも晒し行為に意味はあるの?】


そのなか、ヒラタの姿がスタジオに現れることはなかった。


彼は黙り続けていた。


それが、彼なりの“答え”だったのだ。


■ユナ 視点ノート


その夜、ユナはノートに書き記した。


——「沈黙の先にあるのは、裁きじゃない。“終焉”だと、誰かが証明しなきゃいけない」


そして、次のページにこう続けた。


——「その“誰か”になる覚悟が、私にはある。父が死んだ理由を、誰も知らないなら、私が“形”にする」



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