第19話 ゲームの真相
第19話 ゲームの真相
■ユナ 視点
深夜の渋谷。ネオンの明滅が映るカフェのテラス席で、ユナは無言でアイスコーヒーを口に運んだ。向かいに座るのは、父・ヒサシの元マネージャーであるモリヤマ・ケンジ。
「……この話は、お前にしかせぇへん」
そう前置きしたモリヤマは、古びたICレコーダーを差し出した。そこには、事件報道の数日前に録音されたヒサシの肉声が残っていた。
『……“ゲーム”って言葉、最初に言い出したんは後輩や。“接待やなくて遊びや”ってな。ワシは、ただ流れに乗っただけや』
『けど、やったことにされたんは、ワシだけや』
■録音の真実
再生された音声には、ヒサシの哀しげな声が確かに記録されていた。
『証拠? あるにはある。でも業界は守ってくれへん。“お笑い”がウケてるうちは味方でも、滑ったら敵や。それが“芸人”やって、ようわかってた』
ユナの表情が歪む。
「父は、共犯の“盾”にされたってこと……?」
モリヤマは苦く頷いた。
「せや。“大物芸人”って看板があったからこそ、“主犯”に仕立てられた。下っ端のやらかしは、全部ヒサシの責任になったんや」
■配信:ゲームの真相
タイトル:《“ゲーム”という報道が作った物語》
ユナは画面越しに語りかける。
「今日は、父が“スキャンダルの主犯”にされた“ゲーム”の真相について話します」
映像には、防犯カメラの記録、当時の週刊誌記事、そしてモリヤマが提供した音声が順に映し出される。
「父は“主導者”ではなかった。証拠もある。だけど、記事が欲しかった週刊誌は“一番名前のある人間”を撃った。“真実相当性”という名のもとに」
■コメント欄の反響
【ヒサシだけが潰された理由、これか】【やっぱり名前がデカいほど狙われる】【業界の闇が見えた】
一方、冷静な意見も。
【聖人扱いは違う】【一部は事実じゃないの?】【報道を全部否定しても前に進まない】
ユナは、そんなコメントを読みながら、ひとつだけ応えた。
「私は、父の過ちを否定する気はありません。ただ、“壊され方”には順序がある。公平さが必要だった。それがなかったから、父は死んだのです」
■ミナト・マサノリ 視点(元相方)
録音を見たミナトは、独りごちる。
「ヒサシ……お前は最後まで、後輩をかばってたんやな。でも、その優しさが命を削った」
彼は一枚のネタ帳を開き、最後にヒサシが書いたと思しき一文を指でなぞった。
——「笑いは、人を救える。でも、人を殺すこともある」
■ユナ 視点
その夜、ユナは父のノートの隅に新たな言葉を書き加えた。
——“父が報道に殺されたなら、私は“自分の意思で”終わらせる”
そしてカメラに向かって、ただ一言。
「責任を取る世界。その中心に、私自身を置いていい。父が選べなかった結末を、私が選ぶから」
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