そのもふみに包まれて。第二話
目を開けるとトラバーチン模様の白い天井が見えた。
(ここは? すごく素晴らしいユニットたたみが敷いてある場所で、とっても高貴なもふみにあったような?)
起き上がって自分のいるところを見わたす。
ベッドの周りは白いカーテンで囲まれていて、外の様子はわからない。
鞄はベッドの横にあった小さなチェストの上にある。
ベッドから降りてみれば床に自分の靴が揃えて置いてあったので履く。
鞄を持ってカーテンをそっと開けると白いシーツをまとったかけ布団が背を向けて椅子に座っていた。
「ん? あぁ、よかった目が覚めたんだね」
私が話しかけるのを迷っていたらそのかけ布団がくるりと私のほうに向いてシーツをさざめかした。
「ここは保健室。体調はどう?」
角に持っていたペンをデスクの上に置いて私を見るそのかけ布団の眼差しは柔らかい。
「だ、大丈夫です! あの、あなたは……?」
「自己紹介がまだだったね。僕は西川 絹有、保健室で生徒の仮縫いをしたりしている保険医さ」
「わ、私は」
「君はこの学園では有名だから知っているよ。入学式に出れなくて残念だったね」
名前を言おうとしたら遮られたけど、入学式という単語に私の背中をサァッと冷たいものが走る。
「そうだった……! 私、迷ってしまって……素晴らしいイグサの香りを堪能していたら、とても高貴なもふみにあったんだった。それから……それから……?」
「気絶していた君をユズ君が運んできたんだよ。今度ユズ君にあったらお礼を言うといい」
「ユズクン様ですね! 教えてくださりありがとうございます、西川先生!」
西川先生にお辞儀をして顔を上げたら間近に西川先生のかけ布団があって驚く。
びっくりして固まっていると私の頬に西川先生の角が触れる。
「起きてるか乙葉!!」
スパラシャーンッ!!! とすごい音を立てて保健室のドアが開いた。
開けたのは青さび色のタオルケットの男子生徒。
あまりにも音に驚いてしまって西川先生のシーツを握ってしまいシワができてしまった。
「……。」
「君の専属かけ布団が来たようだね? 残念だけど授業に行っておいで」
無言になってしまった彼の目の前で、先生のシーツの角が私の頬を名残惜しそうに滑って離れていく。
「西川先生……?」
(どうしてそんなに悲しそうなシーツの皺なの……?)
「行くぞ乙葉」
「待って綿織くん……!」
保健室に入ってきた綿織くんは私の腕を掴んで廊下へと引っ張っていく。
綿織くんのパイルは分らないけど、なんとなく怒っているような気がする。
腕を引かれながら後ろを振り返ると西川先生が保健室の外に出て角を振っていた。
私はペコリと軽くお辞儀をして小走りで綿織くんの後ろをついていく。
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「この学園で唯一の人。君の寝具になりたい布団はたくさんいるよ。どの布団を選ぶのか楽しみだ」
角を振って見送っていた西川先生は乙葉の背中を見ながらうっそりとシーツの皺をよせるのだった。
眼鏡属性とかほしいよね。