違う道へ
「どこだ……! どこにいる……!」
リガールは、重く、薄暗い雲空の下に広がる森の中を一人で駆けている。
オリヴィエを探しに来たのだ。
小隊全員には、連隊と行動するように伝えた。
実はリガールも、連隊長から暗殺の話を聞いていたのだ。
もちろんリガールはこれを承諾し、連隊とともに本隊を目指していた。
だが、リガールがこれを話されたのは、連隊長が森から戻ったあとの話だ。
(アイツのことだ、どうせ断るに決まってる!)
しかし、いくら探してもあるのは倒木か、動物の死体ぐらいだ。
「クソっ!」
リガールは、走る速度を更に上げた。
「移動を開始する」
連隊長を筆頭に、部隊は進行を開始した。
(リガールのやつがいないな……逃げたか、或いは気付いたか……。まぁ、やつがいてもいなくても判断は変わらん)
「どこに行ったんだ……オリヴィエ……!」
小さく呟き、リガールは地面に崩れ落ちる。
「どうして断ったりなんかしたんだ……戦っても勝てないことは分かってたはずなのに……」
拳を地面に強く打ち付けながら、枯れた声で叫ぶ。
歩き疲れたリガールは、枯れ葉の布団に寝転んだ。
「はぁ……どうしたもんかな……」
天を仰ぎ、深呼吸を繰り返す。
すると、枯れ葉の上を通る足音が聞こえた。
リガールは急いで飛び上がる。
「動くな」
気付けば、喉元に短剣を当てられていた。
リガールは息を呑んだ。息を呑んだとき、刃が少し喉に当たり、激痛を覚える。
「見たところ傭兵みたいだな。どこの傭兵団に所属している」
「…………答えなかったらどうなる?」
「殺す」
「まずはあんたから名乗ったらどうだよ」
「言う必要はない」
リガールは質問をしながら、ゆっくりと腰の生活用の短剣に手を伸ばす。
「だったら俺も、言う必要はない……なぁっ!」
短剣に手が届いたその刹那、一気に抜いて振るった。
しかし、相手は肩に腕を回し込むと、リガールの身体を回転させて地に伏せる。
「名乗れ」
鋭い眼光を向けて、相手は言う。
なんとか顔を横に向け、相手の顔を見たところ、少年がいる。
「まだガキかよ。自信失うぞこりゃ……」
「言えと言っている! さっさと言ったらどうだ!」
「あー、わかったって。騒ぐな」
リガールは抵抗を辞め、大人しく従う。
「俺の名はナグル。フリーの傭兵だ」
だが、だからといって本名を名乗るわけではない。
「フリー? 因みに、どっち側についている?」
「どっち側ってお前まさか……傭兵か?」
「だったら悪いか? さぁ、どっち側なんだ?」
「えーと……帝国側、だ」
「本当か?」
「ほんとうだ」
少年の再確認に、嘘の返事をする。
「なら、なぜこんなところにいる?」
「…………人を探しに来た」
それからしばらく森の静寂が二人を包む。
「ついて来い」
先に話を切り出したのは少年の方だった。
それと一緒に拘束する手も解かれる。だが、縄で縛られているため動けない。
「名乗ったからとはいえ、お前はまだ怪しい。俺のいる傭兵団に連れて行く」
立ち上がり、少年を見る。
想像より少し背が高かった。