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響界のレゾナンス  作者: 近松 叡
ペルティカの夜想曲
19/45

M18. 来訪者

 爽志が荷物を下ろし、少しの間寛いでいると部屋のドアがコンコンコン、とノックされた。爽志がどなたですか?と声を掛けると、私ですとロディーナの声で返事があった。その声を聴いて爽志は慌てて部屋へと招き入れる。


「ソーシさん、休んでるところにすみません」


「い、いえ、ボーっとしてただけですから!

…もしかして、この村のことで?」


 ロディーナは少し不安そうな顔を浮かべ、頷いた。


「はい、やっぱりこの村、何かおかしいと思うんです。部屋から通りを見ていたんですけど、村の規模からみて人口はそれなりに多いはずなのに人通りがほとんどなくって、外を歩いている人がいてもどこか生気が無いというか…」


「うーん、皆寝てないとか?」


「もう!ソーシさん!ちゃんと考えてください!」


「す、すいません…」


 爽志は適当なことを言った。だが、思い当たる節が無いのだから仕方がないと言えば仕方がない。村人に直接聞こうにもよそ者にホイホイと答えてくれる人がいるのかは疑問だった。


「あ、そう言えば村の門が無いのも気になりました。ここって平原のど真ん中ですよね?

そんなところで、あんな不用心な入口って有り得るんですか?」


「…いえ、普通ではなかなか考えられないことでしょうね。音災だけではなく、野生動物や野盗のような人間に対しても有効なものですから、人が多く住む場所での門の設置は常識と言っても良いでしょう」


「じゃあ、どうして…。もしかして、建設中だったとかですかね…?」


「…その可能性はありますね。でも、厳密に言えば建設と言うよりは、修復と言った方が正しいかもしれません」


「修復ですか…。そう言えば、確かに入口の辺りに結構傷が付いていた気がしますね」


「理由はわかりませんが、この村の住民に生気が無いことと何か関係が―」


―――コンコンコン―――


 ふいに爽志の部屋のドアがノックされた。ロディーナは部屋の中にいる。この村には他にここを訪ねてくる知り合いなどはいないはずだが、誰だろうか。爽志はどうぞと声を掛けた。すると、男が二人入ってきた。一人はさきほど出て行った宿屋の主人だ。だが、もう一人は見たことのない白髪の男性だ。年は60代後半から70代前半くらいに見える。


「お客さん、お楽しみ中すみませんね。ちょっと良いですか?」


「お楽しみ中って…俺たちは別に―」


「ご主人、どういったご用件ですか?」


 ロディーナが言葉を遮るように問い掛けた。何かを感じ取ったようで、仕事モードといった顔をしている。爽志はその様子を見て思わず背筋がピッと伸びた。


「いや、実はね。お客人に折り入って頼みがあるんです」


「…頼み?」


「えぇ、詳しくは村長が話しますがね。村長、お願いします」


 村長と呼ばれた物腰柔らかな男性は落ち着いた態度で話し始めた。


「えぇ、はじめまして。私はここペルティカの村長をしております、ラギリスと申します。

お二人をルーディオだと見込んでのお願いがございます」


「ルーディオ?…私たちが?」


「えぇ、このタイミングでの村への宿泊、この男がルーディオに違いないと…」


「…残念ですが、私たちはルーディオではありません」


「そ、そんな…。コ、コラ!モークス!話が違うじゃないか!」


 ラギリスは目論見が外れたのかショックを受けているようだ。宿屋の主人、モークスに向かって語気を強める。


「い、いや、だってこんなタイミングで宿泊なんてルーディオ以外有り得ないと思って!」


 この村に来てからまだ間もないというのに早くもややこしい状況になってきた。このままでは埒が明かないとロディーナが二人に問い掛ける。


「それで、ルーディオにお願いというのは?」


「いやいや!ルーディオで無いのならこの話は忘れてくだされ!お騒がせしてすまなかった」


 二人は申し訳なさそうに体を縮こまらせながら、部屋を後にしようとする。ロディーナは改めて二人の背中に話し掛けた。


「私はルーディオではありませんが、ボーダーチューナーではあります。あなた方のお話次第では、お力になれると思いますが?」


 ロディーナの言葉に二人はギョッとした様子で振り返った。ロディーナは二人の言葉を促すようにゆっくりと頷く。完全にロディーナのペースだった。

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