わたしのおわり、わたしのはじまり
2023/01/16追記
・pixiv様との二重投稿であるため、読みやすさを考慮した結果前半を1話目、後半を2話目として分割することに決め、修正を行いました。
・タイトルの変更、本文の修正を行いました。またpixiv様での「ページ分け」の代わりとして、シーンの大きな切り替え時には改行を2つ入れています。
本作を開いていただきありがとうございます。本作はなろう様への初投稿作品になります。
病室のベッドで寝ころんだまま、十二歳の子供は白い天井を眺める。
学校に行くことが出来ず、毎日こうして天井を眺め、両親や姉兄が用意してくれた本を読んで、食事を摂って、健康状態を調べられて。
病弱だから仕方ない、誰もがそう言う。
彼女も自分が病弱だから退院できないと思い、大人しくいつか訪れる快復を待ち続けている。
「鏡花、調子はどう?」
「……ん。大丈夫」
「そう、よかった。早く快復できるといいのだけど、なかなか治らないね」
病室へ来た姉に、顔を向けて返事をした彼女は鏡花という。
姉は新しい本を持ってきてくれたらしく、机に置いてあるもう読み終えた本を手に取り、持ってきた伝記を代わりに置いた。
ついでにリンゴを剝いてもらっていると、外から母と医者の話声が聞こえてきた。
「経過は問題ないですね。ただ、少し気になることがあります。下手をすると前代未聞の病である可能性も……」
「いやいや、そんなこと……」
「実はですね、先日のレントゲンにて怪しい物が脳に見つかっていまして。腫瘍ではないのですが、どう考えてもおかしい物でしたので、一度見て頂きたいと」
「そこまで言われるとあり得る話に聞こえてしまうのよねえ……。見せてくださる?」
「ではこちらに……それと、この事は鏡花ちゃんに内緒でお願いします。本人にとって大きなストレスとなる危険性がありますので……」
鏡花に丸聞こえだったが、聞かなかったことにした。
前代未聞の病なんて言われてもどう前代未聞なのかわからないし、きちんとお医者さんの言う事を守っていればいずれ治るはずだから。
「……お姉ちゃん」
「ん?」
「学校、早く行きたい」
「……そうだね。お友達が待っているもの」
「沢山勉強して、沢山食べて、それから……沢山お話したい。遠足にも、修学旅行にも、運動会にも出たい。沢山やりたい事がある」
「頑張って治そうね」
姉はそうとしか言えなかった。
入院して何年も経つのに、未だ妹の病は治らない。
先ほどの医者の話がもし、本当に未知の病だったとしたら。
そうだとしたら、一生彼女の病は治らないのかもしれない。
(信じたくない……でも……『もしも』はいつ来るかわからないから……)
「……お姉ちゃん、りんご……」
「……ああそうだった、はい、どうぞ」
考え事をしていても仕方ない、きっと大丈夫と前向きに考えて終わらせるべきだ。
そう思ってリンゴを皿に載せて差し出せば、妹はシャクシャクと至って普通に食べる。
この様子から考えられないほど彼女は病弱で、かつ生まれてからずっと入院しているのだ。
外を知らない妹の姿を見続けてきた姉は思う。
(もし私に魔法が使えたなら、妹の病気をすぐに治せて、学校にも行かせてあげられるというのに……)
悔しくて唇を噛みつつ姉は病室を出る。
その直後、青ざめた様子の母親に声を掛けられた。
母の様子を見ただけでわかった、きっと次に出てくる話題はよくない話だろう、と。
「加奈子、心して聞いて」
「……わかった」
覚悟はできていた。
でも、聞かされた姉は頭を抱えた。
いくら心が決まっていても、事実はその覚悟すら超えてダメージを確実に与えてくると学ばされるなんて。
「おーう、二人ともどうした?」
そこへ何も知らない父が来て、病室の鏡花にお土産のお饅頭を渡した。
「どうだ、鏡花。元気になったら父さんと何かするか?」
「……うん。私、お父さんとダンスしたい」
「ダンス?」
「楽しそうなんだ。時々看護師さんが教えてくれるの。音楽に合わせて動くだけで、とても楽しいって。だからお父さんとダンスしてみたい」
「そうかー!よし、父さんはダンスを習って先に準備しておこうかな!頑張って退院しような!」
「うん」
娘とのダンスを楽しみにしながら病室を出て来た父親も、母娘からそれを教えられて頭を抱えた。
何故彼女ばかりこんな目に遭わなければならないんだ、と。
しかし嘆いたところで何も変わることはなく、そして、何かを変えられる力はどこにも無い現実を突きつけられた。
その日からちょうど一月経った夜、あと数時間後に誕生日を迎える彼女は、不意に体が動かなくなった。
金縛りではない、手足の先から温度が無くなっていくような感覚。
それと同時に、彼女は自身の死というものを感じる。
死とは概念のようなものらしく、「あ、死ぬ」という何かそういう感情が生まれるみたいだ。
動いている機械の明かりで少し明るい部屋が、鏡花の視界が、次第に暗くなっていく。
そこで改めて死というものを実感する。
(これが……死……?)
最後に浮かんだのは、自分とダンスの約束を交わした父親の笑顔だった。
もし治っていたならできていたことが、今全て夢物語で終わってしまう。
そんなの嫌だ。
でも自分ではどうにもできない。
頭に浮かんでいた家族の笑顔まで遠ざかっていく中、彼女の目から雫が流れていった。
(お父さん……お母さん……お姉ちゃん……ごめんなさい……)
ピー……パン……!
「鏡花!ハッピーバースデー……」
零時丁度に病室へ録音していたクラッカーの音を鳴らしつつ入ってきた人々の手から、次々に物が床へ落ちていく。
彼女が欲しがっていた推理小説はバサリと、彼女が食べたがっていたチーズケーキはグチャと、無機質な機械音に混じり音を立てる。
機械が映す0と直線。
一番最初に口を開けたのは、酷く狼狽えた父親だった。
「鏡花……?嘘……だよな……?」
「鏡花……?鏡花……!?」
13の誕生日を迎える1秒前―藍原鏡花は、12歳でこの世を去った。
チチチ……鳥のさえずりが聞こえて、ゆっくり目を開けると綺麗な青空が見えた。
頭がまだしゃっきりしていない中思い出したのは、死後の世界はとても綺麗な青空があるという話。
(そっか……わたしは、死んだ……)
死後の世界に来てしまったと思い体を起こした途端、目の前が何かによって隠される。
手でどかそうと触れた瞬間、同時に自分の頭に違和感があると気が付いた。
そこに触ってみたら、髪の毛ではないふわふわした何かがあった。
(何、これ……?)
さらに目の前を隠す何かをどかしたら、死後の世界にあるという草原ではなく、石畳の公園らしき場所が目に映った。
自分はベンチの上で横になっていたらしい。
辺りを見回してみると他の人間がいて安心したのもつかの間、別の方角を見たら兎の耳が頭から生えた人を見てその安心はどこかに飛んでいった。
(……な、何……ここ……?まさか、死後の世界じゃない……?)
さらに自分の服装も入院患者の着る見慣れたあの服ではなく、ピンク色の膝丈スカートと白いボタン付シャツ、その上にふわふわの真っ白いファーで縁取りされた襟なしの桃色ジャケットという、着たこともないし持っていないはずの服だった。
足元はピンクと白の横ストライプソックスと水色のランニングシューズ。
どう考えても死後の世界らしい服装ではない。
(と……とにかく、誰かに聞けないかな……)
立ち上がった途端ぐううとお腹が鳴り、空腹で倒れてしまう。
それに驚いた通行人が助けてくれて、いつの間にか持っていたお金もあってなんとか食事にありつくことができた。
食事の途中じっと自分の姿を眺める女性に、鏡花は我慢できなくて質問した。
「……あの、何か?」
「珍しいこともあるのねえ。ラビラ族が公園に一人なんて」
「……ラビラ族?」
「あら、自分の一族でしょう?」
いや、聞いたこともない……。
ラビラ族とはなんぞや?
……その答えは真横の窓ガラスに映る自分が教えてくれた。
(な……何!?う、ウサギの耳が……!)
さっき見かけた人みたいに、自分の頭にも真っ白いウサギの耳が生えている。
他にも髪の毛の色が違っていて、生前の黒い髪ではなく黄色の髪の毛にピンクのメッシュが混じっている。
これが自分なんて、とてもじゃないが信じられない。
(これが、本当に私なの!?だって、私は病院のベッドの上で……)
「そういえば、そろそろラビラ族のダンスオーディションがあるんだったわ。あなたも十四歳でしょ、出ておかないとね」
「十四……?私、十二ですが……」
「いえいえそんな、十四歳の証として前髪にパールがあるじゃないの」
「パール……?」
女性に言われて前髪を触っていると、たしかにヘアピンらしき物に丸い物がついていて、ガラスを見ると白く輝くものがあった。
これがパールらしく、ラビラ族は十四歳になったことを示すため身に着けるという。
「ひょっとしてラビラ族でも珍しい一匹兎かしら?しきたりをあまり知らないで生きている子のことなのだけど、あなたはそれなのかも」
「……わからないですけど、そうなのかもしれません」
正直何が起こっているのか全くわからなくて、女性の話が満足に頭へ入ってこない。
病室で死んだと思ったら、全く知らない場所で全く違う服装になって目が醒めて……、実は夢を見ているだけなのかもしれない。
そう思った彼女は自分の頬をつねってみたが、ただ痛いだけで何も起こらなかった。
いや、女性が焦るということは起きた。
大体四分ほどラビラ族というもののしきたりを女性から教えてもらい、鏡花はラビラ族がこの世界におけるアイドルであり、ユニットを組んで活動していること、ラビラ族は十四歳になるとオーディションへ臨み、他のユニットからスカウトしてもらう必要があることを学んだ。
そして自分はどうやら十四歳のラビラであるから、
「……とりあえず、私はそのダンスオーディション?に出ないとならない……ということですか?」
「そういうこと。十四歳になったら必ず出ないとならないから、エントリーは早めにね」
「そ、そうですか……」
鏡花はそのダンスオーディションというものに参加すればいいと理解したが、結局ここがどこなのかまで聞くことはできなかった。
とりあえず食事は美味しかった。
「ダンス……オーディション……」
お礼を言って女性と別れた後、彼女は石畳と木でできた街の中を歩きながら考える。
ダンスは自分がやってみたいと思っていたもの。
オーディションという物の意味は知っている。
つまりここは死後の世界でなければ自分がいた世界でもない、元いた世界でやりたいと願っていたことをできる別の世界なのだろうか?
……まあ自分がいた世界ならウサギの耳が生えている人なんてまずいないんだから、そう考える方が普通だと思うけどね……。
しかしできるのだろうか、自分にダンスなんて。
ずっと入院生活で歌もダンスもしたことがない自分に、ダンスオーディションなんてできるのだろうか。
考え事をしながら歩いていた時、鏡花は音楽を耳にしてそちらを見た。
視線の先には小さなステージがあり、自分と同じくウサギの耳が生えたラビラ族らしき人物四人が歌いながら踊っている。
それを見た鏡花は心を奪われる。
(か、格好いい……!)
煌びやかな衣装を纏った四人はキレのある動きと共に美しい歌声を響かせ、彼女達の全てが音楽と一体化しているような気にすらさせてくる。
その姿はまさにアイドルと呼ぶべき存在だった。
本で読んだことしかないアイドルが小さなステージの上にいる、そう思うだけで鏡花の心は躍っていた。
「あらそこの貴女、もしかしてあのユニットに興味がおありかしら?」
目を輝かせていると、不意に後ろから話しかけられた。
クリーム色の縦巻きロールがよく目立ついかにもお嬢様というような風貌のラビラ族の女の子が、他にも何人か友人らしきラビラ族を連れている。
縦巻きロールの子が言う。
「あのユニットは名前を持たない、誰もその名前を知らないユニット。名前がないのに名前が知られて来たという矛盾を持ちながら、こうして数多のハートをわしづかみにするパフォーマンスが特徴なのよ」
「そうなんですね……!」
「そして、いずれ行われるダンスオーディションではユニット達によるラビラ族の奪い合いが起こるわ。そこへあのユニットも訪れると小さいながらニュースになっているのよ」
「奪い合い?」
「あら、聞いていないの?オーディションではユニットが自由に参加するラビラ族を選ぶことができて、選ばれたならそのままユニットのメンバーになれるのよ。オーディションだから当たり前だけれどね」
「は、はあ」
「まあ誰が何と言おうと、この私があのユニットのメンバーになるのだけどね!おーほっほっほ!」
「……はあ」
高笑いするラビラに対し、どんなリアクションを取ればいいかわからない鏡花は薄い反応しかできない。
誰だろうこの人?
別にあのユニットのメンバーへ加わるならお好きにどうぞ、なのだけど……。
「まあ頑張りましょう。どこかのユニットに入れるといいわね、お互いに」
「お互いに?」
「そうよ」
「でもあなたなら、どこにでも入れる実力があるんじゃ……」
「あらま、見る目があるわね貴女。でも、そんな甘い話でもないのよ。必ず入れるとは限らないし、入ったとしても実力が無ければ離脱することになる。オーディションはそれだけの実力があるか、ユニットから見定められる場所よ。だからお互い頑張りましょう、ということ」
言われてみると彼女は『必ず自分がなる』とまでは言っていなかったと思い出す。
鏡花もオーディションとはそういうものであると本で学んでいるが、縦巻きロールさんの話を聞くとやっぱりシビアな世界だと考えさせられる。
鏡花は適当な言葉を思い出し、縦巻きロールさんの前で呟いた。
「……弱肉強食、ですね」
「焼肉定食?」
「いえ、弱肉強食です……」
「何かしらそれ?聞いたこともないわ」
「ええと、弱い者は強い者の餌になる……みたいな意味です。強い人だけが生き残る、みたいな……」
「ふんふん、勉強になったわ。言われてみるとそうねえ。ま、私は強者になるけどね!」
おーほっほっほと高笑いしつつ縦巻きロールさんは去っていき、その友人らしき子たちも一礼して去っていった。
鏡花がぽかんとしていると、今度は肩を叩かれる。
「よっす。元気だねえあの子」
叩いてきたのは同じラビラ族の人らしい、白いポニーテールの女性だった。
初めましてなのに気さくな挨拶をしてきて鏡花はちょっと驚いたが、ちゃんと挨拶を返してからあの縦巻きロールさんについて聞いてみる。
するとその人は苦笑いしつつ、
「あの子、ここら辺で有名なお嬢様らしいよ。英才教育を受けて育ってきたから優秀だってさ」
そう教えてくれた。
「たしかにダンスは上手いし歌も上手いんだけど、足りないなあ」
「……足りない?ですか?」
「うん、足りない。ねえ君、パール着けてるってことは十四でしょ。やっぱダンスオーディションに出るんでしょ?」
「えっと……実は迷っています」
「迷ってる?本当?」
「はい……実はダンスも歌も、やった事がなくて……」
「え、それ本当!?ラビラ族なのにダンス未経験なんて初耳だよ!だったら当日までにダンスの本を買って練習しときなよ」
「練習と言われても、何をすればいいかわからないです……」
「何をすればって、ただ体を動かせばいいんだよ。何も考えないでいいの」
「でも、あのステージで踊っていたユニットさんはとても格好いいダンスを……」
「そんな最初から上手い人はいないし、初心者が上級者の動きなんて真似できないよ。オーディションというけど、好きに踊っておけばどこかから誘われるって!」
「好きに……ですか?」
「何も考えないで、思いついた動きをやっていればなんとかなるよ!前向きに行こう!」
前向きに、それを聞いた鏡花は姉がよく口にしていた言葉そのままだと思い出す。
そうだ、前向きに進めばいいことがあるはず。
全く知らない世界で全く知らない姿になって全く知らない催しに出る、というなかなか理解が追い付かない現状だけど、そんな時こそ前向きが一番に決まっている。
「前向きに……そうですよね、前向きになって頑張れば、いいことがありますよね!」
「おっ!いいね!ナイス前向き!」
知らない女性と笑いつつグータッチを交わして、鏡花は彼女に連れられてダンスオーディションのエントリーを流れるように済ませると、その足でダンスの本を探しに行った。
それから一ヶ月間、鏡花はダンスの練習に打ち込んだ。
途中で縦巻きロールさんに出会い、どこで知ったのか「オーディションのライバルとはいえ、ダンスができないライバルではつまらないわ」と彼女にもダンスを教えてもらった。
その途中、彼女は気を許したのかこんな話を振ってきた。
「貴女、オーディションとは何と考えておられるの?」
「オーディション……出た事がなくて、何とも」
「それは私も同じよ。いい?オーディションとは『戦い』なの。貴女も私も、他のラビラ族も全員がライバル。それまで友達だったとしても、会場で出会えば皆ライバル、友情なんて無くなるわ」
「……」
「今こうして教えているのは、あくまで貴女がライバルだからこそ骨が無いと面白くないから。決して友情だとか何とかで教えているわけではないわよ、勘違いしないこと」
「……友達とか友情とか、よくわからないです」
「え?」
これまで同じ事を何度もラビラ族へ言ってきた縦巻きロールさんだが、鏡花から返ってきた言葉は初めてらしく目を丸くしていた。
何故わからないか聞いてきたため、鏡花は正直に答える。
「病弱でずっと入院していたから、友達ができたことは一度もありませんし……友情と言われても、本で読んだこと以外のことはわからないです」
「……そうなの。ラビラ族なのに入院続きなんて初耳だわ。まあそれならお互い友達感覚なんて無いわね。一切妥協なしで勝負ができるわ」
「……あなたはオーディションを戦いと言ったけれど、戦いに勝ってどうしたいの?」
そう質問を返すと、彼女は鏡花に言う。
「決まっているわ、私がラビラ族で最も優れていることを見せつける。全てにおいて最高のパフォーマンスで、最高のユニットを私の手でもっと素晴らしく彩るためよ」
続けて、
「敵に塩を送るのはあくまで私のステージを盛り上げるための前置きにするため、全て踏み台にするため。特に貴女、ダンス未経験のままでは私のステージが盛り上がらなくなるわ。勝ちしか見えていないからこそ、その勝ちをより美しくするためには既に盛り上がっていなければならないのよ」
「……そうですか」
「……やけに軽々しい返事ね?それとも、私に勝てる自信があるからかしら?」
「いえ、私は自分の好きなように踊りたいだけなので……」
「あらそう……まあいいわ。覚えておきなさい、最後にすべてを手にするのはこの私、メルスイープであるとね!」
そんな彼女と本に教わり、自分が踊りたいと思った曲とも出会い、オーディションに臨む準備はできた。
ラビラ族なら誰でも自由に使える宿のベッドで寝ころびつつ、鏡花は茶色い木の天井を眺め思う。
(明日がオーディション……。実感がない……)
一ヶ月の間に考えたことは多々あるが、自分はいわゆる異世界転生をしてしまったのではないか……という考えは特に大きくなっている。
本で読んだことがあるシンデレラストーリー、死後に異世界で自身が最強になる、そういう物の主人公に自分もなってしまったのかもしれない。
ただ、最強とは程遠い。
ダンスなんて教わるまでできなかったし、歌もようやく音程が理解できてきた頃合いだ。
そういう系統の主人公なら余裕で優勝するのだろうが、自分ではまずありえないだろう。
……じゃあ何故異世界転生してしまったとしたら、自分なのだろうか。
(わたしなんかが、どうしてなの……?)
ラビラという種族になっていた藍原鏡花の、一人のアイドルとして成長してゆく物語は、こうして幕を開けた。
続)
ここまで読んで頂きありがとうございました&お疲れ様でした。作者のTU-NOです(読みはご自由に…)
異世界転生×アイドルものというジャンルへ初投稿ながら挑戦しております。頑張ってストーリー作りますので、応援して頂けるとありがたいです。
※本作はPixiv様にも投稿しております