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婚約破棄した悪役令嬢が「ふはははは!よくぞ我が正体を見破ったな!」とか言ってきた上に、か弱い男爵令嬢が「ついに正体を現したな!魔王め!」とか言い出したんだが、どうしたらいい?

作者: 夕日色の鳥
掲載日:2021/11/14

あらすじから読むことをオススメします。

「マオ!

貴様との婚約を破棄する!」


 俺は婚約者であり、侯爵令嬢であるマオ・ウワルーイを指差し、高らかに宣言した。


「そ、そんなっ!

ヒロ・インカワ様っ!

お考え直しくださいましっ!」


 俺に婚約破棄を告げられたマオが俺にすがってくる。

 王子である俺に捨てられることは、国での生活がほとんど絶望的となるということだ。


「ふんっ!

貴様の悪行はすでに分かっているんだよ!」


「わ、わたくしは悪行などっ!」


 その時、俺の後ろからおずおずと現れた女性が、俺の腕に隠れるようにマオに顔を見せる。


「ユ、ユウ・シャツヨ男爵令嬢っ!」


 ユウの姿を見たマオが顔をひきつらせる。


「そうだっ!

貴様はユウに今までどれだけの嫌がらせをしてきたんだっ!

彼女がそれに、どれだけ傷付いたと思っている!」


 俺がそう言うと、ユウは俺の背中に隠れ、その細い体を震わせる。

 ああ。

 なんて可哀想なユウ。

 俺はユウを抱き寄せ、髪を優しく撫でてやる。


「……ヒロ様」


 ユウは安心したように、その身を俺に預け、嬉しそうに撫でられる。

 やはりユウはかわいい。

 それに、華奢で可憐だ。

 彼女は、俺が守ってやらなければ。


「あ、あ、あなたが!

そのようにヒロ様の庇護欲を煽るから!

わたくしの婚約者に近寄らないように注意しただけですわっ!」


 マオが全身をわなわなと震わせて、こちらを指差す。

 それに恐怖を感じて、ユウがきゃっと俺の背中に隠れる。


 ああ。

 かわいいなぁ、ユウ。

 安心しろ。

 俺がおまえを守るからな。


「うるさい!

貴様のそういうところが気に食わんのだ!

とにかく、貴様との婚約など解消だ!

さっさと出ていけ!」


 俺が指を指して、はっきりと宣言すると、マオはあからさまにショックを受けた顔をした。


 たしかに、マオのような背も高く、肉感的な体を持つ女も捨てがたいが、やはり俺はユウのようなか弱い女性を守っていきたいのだ。


「ん?」


 わなわなと唇を震わせるマオの様子がおかしい。


「いつまでそこにいるつもりだ?

ほら。

さっさと出ていけ!」


 俺に追い打ちをかけられ、マオは体をびくっと揺らす。


「……おのれ」


 うん?


「おのれおのれおのれおのれ!

我の計画もここまでかぁ~!!」


「うわっ!」


 突然、マオが異形の生物へと変貌した。

 黒いマントを羽織ったそれは、おでこの横に2本の長い角を生やし、口には邪悪な牙が並ぶ。

 眼光は鋭く、人を近付けない暗黒のオーラを纏っていた。


「きゃーー!!」


 俺は思わず女みたいな声を上げていた。


 や、やばい。漏らしそう。


 周りの人々も叫び声を上げて逃げていく。


 待って!

 俺を置いてかないで!


「ついに正体を現したな!

魔王め!」


 え?

 ユウさん?


「ふははははっ!

よくぞ我が正体を見破ったな!

やはり貴様が勇者だったか!」


 魔王さんとお知り合いでしたか?


「おまえがヒロ様に近付き、内側から王国を破壊しようとしていたことは分かっていた!」


 え?そうなの?


「だから、貴様はそこのバカ王子に取り入って、我を追い出そうとしたのだなっ!」


 あれ?いまバカって言った?


「当然だ!

このバカなら、すぐに私を庇護すると思ってな!」


 ユウ?せめて王子はつけて?


「おのれ!

勇者め!

許さん!」


 マオ、改め魔王は、両手をこちらにかざす。


「魔王獄炎波!」


「きゃーー!!」


 魔王の手のひらからものすごい炎が襲ってくる。

 この悲鳴は誰だって?

 俺だよ!


「ふっ!

勇者聖光盾!」


 ユウ、改め勇者様が軽く笑いながら左手を炎に向けると、光の盾が現れて、向かってくる炎をすべてかき消した。


「お、おのれ!おのれ!」


 魔王は怒り心頭といった様子で、天を仰いで力を解放しようとする。


「させない!

いまだっ!

勇者雷光剣!」


 勇者様が右手に出現させた剣を天に掲げると、雷が剣に落ちて、剣はバチバチと雷を帯びる。


「滅びよっ!

魔王!」


 そして、雷光の速さで魔王に迫り、その首をあっさりとはねた。


「ば、ばかなぁ……ぐわぁぁぁぁーー!!」


 そして、魔王は爆発して消え去った。


「きゃーーー!!!」


 俺はその爆風に巻き上げられる。

 え?いい加減慣れたまえ。

 この叫び声は俺だ。


「きゃーー……あ、あれ?」


 が、


「大丈夫ですか?

ヒロ様?」


 俺は勇者様の腕に抱かれて、お姫様だっこ状態で助けてもらっていた。


「は、はい」


 思わず敬語になってしまう。


「ふふ。

ヒロ様はかわいらしいですね」


 そう言って微笑むユウは、誰よりもカッコよかった。


「脅威は滅びました。

ですが、いつまた新たな脅威が現れるか分かりません。

これからは、私がヒロ様のお側で、ずっとお守りしてさしあげますね」


「は、はい、ユウ様」


 か、カッコいい~~。


 そうして俺は、完全にユウ様の虜となったのだった。








 数年後。


「ヒロ様!

ただいま帰りましたよ~!」


「ユウ様!

おかえりなさい!」


「「ママ!

おかえり~!」」


 父のあとを継いで王となった俺は、ユウ様を正式に勇者に認定。

 結婚もして、2人の子宝にも恵まれた。

 ユウ様は王妃の立場でありながら、勇者として各地を点々とし、魔物を狩り続けている。


「マオ!

掃除は終わったの?」


「お、終わりました~。

ユウ様~」


 こいつは魔王の成れの果てである。

 ユウ様にやられ、魔力のすべてを失ったマオはただの人間になっていた。

 それをユウ様が監視も兼ねて、城で召し使いとして使ってやることになったのだ。

 今ではすっかり毒気も抜けて、子供たちの良い遊び相手になっている。


「魔王はいなくなったけど、まだまだ脅威はなくなりません。

愛するあなたと我が子と、そしてこの国を守るために、私の戦いは終わらないわ!」


 か、カッコいい~~!


「どこまででもついていきます!

ユウ様!」


 そうして、俺はユウ様の小さくて大きい背中に身を寄せるのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] タイトルに惹かれて読みました。 こういう変化球だと、先が気になって一気に読んでしまいますね笑 まさかの展開に翻弄されながらも、ユウにベタぼれな主人公がちょっと可愛かったです。
[良い点] 楽しく拝読しました♪ マオも元気そうでホッとしました。王子視点で、しかも王子の内面の揺れが激しくて面白かったです。 [一言] 婚約破棄の作品はついつい悪役令嬢(婚約破棄される側)に肩入れし…
[一言] ユウ様カッコいい~~! これは惚れちゃう( ˘ω˘ )
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