断罪7
「フランツ、ご令嬢にいきなり抱きつくなど失礼だぞ」
後ろから歩いて来たロイから注意が飛んだ。
「ああ、ごめんごめん、小さい頃から一緒だったからさ、つい」
笑いながら腕を外す。王子はその手を肩にするりと移動させ、私の目を覗き込んできた。
「アレクシア、久しぶりだね」
近い!抱きつかれた時よりもマシだけどすごく近い。
「お、お、王子殿下もご、ご機嫌麗しゅう…」
思わず目を逸らしながら応えた。この方を前にすると身につけた上品な仕草などどこかに行ってしまう。
ふふと笑って、王子は肩から手を放し一歩下がった。
「紹介するよ。こちらは友人のロイ。いつも手紙に書いてた奴だよ。」
ロイの方は、慣例通り跪き私の手を取り挨拶をした。
「ロイ・シュダウツと申します。お見知り置きを」
ドキドキいっている心臓を宥めて、丁寧に礼を返した
私の首元と同じくらいの位置にダークブラウンの頭がある。
(随分背が高いのね)
まだ少年の部分を残したフランツ王子とは随分と違う。
「…」
ぼんやり考えていると、ロイは手を取ったまま何か言おうと口を開いた。
が、その前にフランツ王子の声が広間に響いた。
「さて、アレクシア、再会を祝して踊ろうじゃないか!」
王子の言葉を合図にゆったりとしたワルツの音が再開する。
「は、はい」
ロイの手を離して、フランツ王子の向かいに立った。
ワン・ツー・スリー、ワン・ツー・スリー
リズムに合わせて足を動かしながら、先ほどロイが何か言おうとしたことが気になっていた。
「ねえ、せっかく僕が目の前にいるのに考え事?」
フランツ王子が顔を覗き込んでくる。美しい顔が近い!
「だめだなー、ちゃんと集中してくれないと」
王子は強引にターンを決める。その後もぐいぐいとリードしていくので、ついていくのがやっとだ。一曲終わる頃にはすっかり息が上がってしまった。
身を離そうとする瞬間、耳元に囁かれた。
「アレクシア、ずいぶんダンスの腕を上げたね。よかったよ」
王子の呼吸も少し荒い。吐息が首筋にかかるのを感じ、頬がより熱くなった。
フランツ王子はクスクス笑いながら
「疲れちゃったみたいだね。休憩してくるといいよ」
言い残して離れていった。