断罪6
貴族の子女は社交界デビューをし、将来の伴侶探しをする。15歳の誕生日、私は王宮の広間にいた。ワルツが流れ、人々は思い思いに踊ったりワインを飲んだりしている。
私はというと、もう1時間も、かわるがわるやってくる招待客のおべっかとやっかみ混じりの挨拶を、突っ立ったまま聞き続けている。
「お誕生日おめでとうございます」
「それにしてもアレクシア様は美しい!国でも5本の指に入りましょう!」
「まあ、素敵!最新流行のドレスですわね。どんな田舎娘も洗練された淑女に見えると評判ですのw」
そばに居る父はニコニコご満悦の様子である。
「皆口々にお前の美しさを褒めそやしておる。嬉しいのう」
「…(お父様、あまり褒められてはいません。特に最後の)」
この父は育ちの良すぎるせいか、世に悪意があることを知らない。一貴族の誕生日会を王宮で行うのは異例のことであったが、金にモノを言わせ実現させた。恐らく、かなりの嫉妬ややっかみを買っているだろうが、無自覚なのだ。
不意に音楽が止んだ。広間の入り口に目を向けると、2人の男性が入ってくるところだった。
2人とも軍学校の制服を身につけている。
「フランツ王子殿下だ」
「ロイ様もご一緒だわ」
ざわざわ人々が喋っている声が聞こえる。
フランツ王子は真っ直ぐにこちらに向かって歩いてきた。光に溶ける金の髪、スカイブルーの瞳。私はフランツ王子に釘付けだった。前世から恋焦がれていた人が目の前に!!
王子は、立ち止まって見つめ合うと予想した地点を遥かに飛び超え、パーソナルスペースをも一気に詰め、ガバリと抱擁してきた。
「!!!」
香水の強い匂いが鼻に入ってくる。あまりの事態に目の前が真っ白になった。