断罪2
「アレクシア、立て。裁きの間に向かう」
膝の上に伏せていた顔をあげた。鎧を着込んだ兵士が2人牢の前にいた。
私は後ろ手に縛られ、牢屋から出された。どうしてこうなってしまったんだろう。連行されながら昔を思い出した。
前世の記憶を取り戻した私は、自分がどうすべきか考えた。このままいけば私は処刑が良くて追放か。ならば恋の鞘当てになど参加せず早々に隠居してしまうべきなのか。でも…フランツ王子の溢れるばかりの笑顔が頭にチラつく。ルネサンス絵画の少年神のように美しい姿、ゲーム画面越しにしか見られなかった成長した姿をどうしてもこの目で見て触れてみたい。
本ヒロインが現れるのは16歳のとき。フランツ王子と同じ年齢だったから、あと8年ある。それまでに私は出来うる限り運命に抗おうと決めた。王子と何としても私のものにするのだ。今現在は、フランツ王子も私のことを憎からず思っている様子。家柄的には問題ない。あとは私自身の魅力の勝負だ。
「お父様、私フランツ王子殿下と結婚したく思います。に最高の教養と礼儀作法を身に付けさせてくださいませ」
「おお、アレクシアよくぞ申した!国内随一の家庭教師を付けてやろう。なんとしても、フランツ王子殿下にふさわしき娘になるのだ」
私を溺愛し、また国主の外祖父となるという貴族ならではの当然の野望を持っていた父は、一3日後には十数人のあらゆる種類の専属教師を揃えてくれた。そこからはひたすらに、鍛錬の日々だった。毎日13時間の勉強と、乗馬の稽古、日常生活もハイヒールを常に身につけ、所作が少しでも美しくなければ、容赦無く教鞭で手先を叩かれる日々。貴族の娘として大切に育てられた現世は当然、前世でもこんなに厳しく躾けられたことはなかった。夜ベッドに入ると翌日の授業のことを考え涙が溢れたが、「絶対に王子と結婚する。でなければ死ぬだけだ。」自分に何度も言い聞かせた。