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色んな人に怒られたよ。

「よっ…と」


やっとのことで窓の近くまで来た僕は、半分ほど空いていた部分から中が見え、目の前の黒々とした光景に息を飲んだ。



周りは焼けており、薄暗いのと煙でよく見えないが、奥の方で赤い光が見える。


早くも怖じ気づきそうになったが、こうしている間にも妹達に身の危険が迫っているわけで。


ふんばれ俺…!!




足で軽く蹴りながら窓を全開にし、躊躇する前に入ってしまえと、身を投げるようにして入った。



そして。




ガラガラッ


中に入った衝撃で、焼けて脆くなっていた木材が崩れ、唯一の出入口であった窓が塞がれてしまった。


外からの光を失い、暗闇にぼんやりと炎の光が見える。



「…っ…!」

妹の所在を知るため声を出そうとしたが、煙を吸ってむせてしまい、思うように声が出せない。

せめて光だけでもと、尻のポケットから携帯を探った。

電柱を登って落としたかもと不安だったが、手にはしっかりと携帯を握ることができ、僅かな希望にすがるように開けた。


しかし、画面には赤い文字。

「充電…切れ…?」


本当に僕は、運が無い。





全ての音が遠くに聞こえる…。


焼けた木材を踏みしめ、煙で朦朧とした意識を必死に繋ぎながら、金原明日香は友人を支えていた。


明日香が再び火の中へ飛び込んだ後、必死の声かけでようやく友人、美紗と合流したが、彼女は足を負傷した状態だった。


崩れかけている建物内で出口を塞がれてしまい、暗い中で炎の光と燃える轟音により右も左も分からず、微かに遠く聞こえる外の声を頼りに這うようにして歩いていく。



「明日香…」


消え入りそうな声で話しかけてくる美紗に耳を傾けるが、自分を案じる゛優しい言葉゛に苛立ちまぎれに答えた。


「助ける為にっ来たのに…、美紗置いて逃げたら…バカじゃん」


感情のままに叫ぼうとしたが、絞り出した声は震えていた。



脆い床を踏みしめていると、木の割れた音と共に底が抜けた。


「…っ」


足元がふらつき、美紗と共に倒れ込む。



慌てて美紗を起こそうとしたが、天井がミシミシと音をたて始め、明日香の焦燥感を煽る。


倒れた衝撃で苦痛に顔を歪める美紗。

明日香もまた、足を床に挟まれ思うように動けなかった。


ついに天井は音をたて、


崩れる


「っ…け、て…」





「こういうときこそ『助けてお兄ちゃん』、だろ」



木の割れる音が鳴り、焼けた木材が明日香達を襲った。

しかし、当たったのは破片程度。


恐る恐る顔を上げると、薄暗く煙の渦巻く中、至近距離で兄の面影を感じた。


「やよいくん…」



「生存者を3名発見。意識はあります」

『了解!』


近くから無線と会話を交わす声が聞こえ、あぁ助かるんだと漠然と感じ、そのまま意識が遠退いていった。





救急車のサイレンが、朝の空気に溶けていった。

消防隊は未だバタバタと世話しなく動いている。


報道陣は、野次馬に囲まれながら一連の騒ぎを報道し、沈火後は不審火の原因を探るべく刑事達が進入禁止の黄色いテープで辺りを囲い始めた。





――深夜から長く事情聴取をされていた高校生、弥生の悪友・飛左木伸吾。

突然の火事により警察もそちらに動くことになった為、弥生がパトカーに乗り込んだ後、彼は最後に夜間外出の厳重注意を受け自宅に帰されていた。


誰もいない部屋。

何の感情も伺うことの出来ない顔で、彼は携帯を弄る。




午前9時、病院。

妹の気絶は安堵と疲れからきたものであり、命に別状は無いそうだ。

妹の友人の美紗ちゃんは煙を吸ってしまっていたことと、火傷や足の傷があったため検査も含めて何日か入院することになるらしい。


バイト先に来た連絡で飛ぶように駆けつけてきた大学生のお姉さんが、泣きながら僕の妹と美紗ちゃんに謝罪してから入院の手続きを行っていた。


不審火についてもこれから何日か聴聞が入るらしい。

同じことを何度も聞かれる、と疲れ果てた顔で妹は僕に訴えてきた。

うむ、わかる。



いやぁ、まいったね。


あの時、妹とその友達を助けに燃える家の中を丸腰で突っ込んでいった僕は、おろおろとさ迷い、妹を見つける前に消防士に発見され、保護された。


正直どうしようも無かった僕は消防士に思わずすがり付いてしまったよ。

白状しよう、泣いた。

だってマジで死ぬと思ったし。


消防士はすぐに僕を外に出そうとして、思わず「妹を助けるまでは出れない」って言ったんだ。

ここだけ聞けばかっこいいだろ。

でも消防士の連中は、俺の様子で無防備に飛び込んだことを悟って凄い形相で睨んできたんだ。一瞬で涙が引っ込んだ。


そんなことをしていたら床が抜ける音がして、音がした方を見たら妹達がいたってわけだ。


ようやく目的が果たせたことが嬉しくて何も考えずに2人を抱き締めちまったけど、立とうとして上見たら、天井落ちてきてたのな。

消防隊の人が天井支えてくれなかったら僕は妹達と一緒にペッチャンコだったかと思うとゾッとするね。



そんな話を興奮気味に明日香に話したら何故か怒りだした。

助けてやったのに(正確には消防士がだが)なんて態度だ。


何はともあれ、大事に至らなくて良かった。



あんだけ怖い目に合った後にも関わらず、妹は"やよい君"に母親気取りでこの後の指示をだし、僕を病院から追い出すのだった。



あまりにも変わりない妹の態度にうんざりもしたが、少しだけ嬉しくもあった。



無事で良かったよ、ほんと。




人通りの少ない、コンビニ。

昨晩、金原弥生が警官との追いかけっこをする内にばらまいてしまった、コンビニで購入した肉まんやらコーラやらはすっかり片付けられていた。

飛佐木伸吾が酒を溢したと思われる箇所は、雨が降ったわけでもないのに洗い流したように跡形も無くキレイになっていた。




ここまでお読み頂きありがとうございました。

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