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八七話 恩

 弟子たちを育て始めて一週間が経った。


 スポンジみたいに教えたことを吸収する彼女たちは、一週間だけで大抵の事は教え切った。

 才能を可視化したら、相当な数値が出るだろう。


 まるで、神から与えられたかのような才能(チート)だ。


「予定が壊れるよな」


 弟子たちを各種族の里に放り込むのは二か月後だと言った。

 だが、二か月で教えようとしていたことも教えてしまった。


 はっきり言って、やる事がない。


 既に帝国を乗っ取って来いって言っても達成するような化け物集団になっている。


 頭を掻きながら、ゆっくり考えようとした。


「なぜ、貴官はここにいるのでしょうか?」


 赤髪の少女が現れた。

 ここは東の最果て、確か名前は……。


「〈死の戦争区域(デスウォーエリア)〉であります」

「そうそう」


 今、俺がいるのは〈死の戦争区域(デスウォーエリア)〉真っ赤な世界樹が生えている場所だ。

 ここに来たのには理由がある。


「ここの武器ってどっから仕入れているんだ?」


 この場所には銃や戦車などの近代兵器がある。

 別に奪おうとしている訳ではない。ただの興味だ。


「神の創造物であります」

「神か……」


 召喚された勇者が作ったとかだったら面白かったが、神の創造物か。

 少し気になったことが出てきた。


「疑似戦争とか出来るのか?」

「可能であります」

「え!?」


 駄目元で聞いたが、意外な反応だった


「そもそも、疑似戦争をする事がこの場所の制作の目的であります」

「そうなんだな」


 何故、そんな目的で作ったかは神に聞かないと分からない。

 邪神とは友達だから、今すぐに訊きに行ってもいいが、そんな気分じゃない。


「じゃあ、今度弟子たちを呼んでくるから使えるようにしてくれないか?」

「それは、無理であります」


 ?。

 何が何だか分からない。


「ここまで来れた生物のみが楽しめるコンテンツであります」

「そうなのか」


 神も面倒臭いことを企画するもんだ。


「攻略をさせるか」


 暇つぶし的になるが、この〈死の戦争区域(デスウォーエリア)〉を攻略させよう。


「攻略者が来たらこれを千切ってくれ」


 通信用の魔力を込めた紙を少女に渡した。


 ――――――


 思い立ったら即行動。


 マクロを除いて全員で真っ赤なビルが建つ場所についた。

 ちなみにマクロは勉強をさせている。


 流石に才能の塊の彼女たちについて来れていない。

 まあ、マクロの成長スピードが普通だということは誰も気づいていない。


「ここはスキルも魔法も使えない。あと……」


 大きな石を魔法で作り、ビルの近くに飛ばす。


 石が蜂の巣になる。

 近代兵器の破壊力はこの世界の物だとは思えないほどある。


「まあ、頑張ってくれ」


 転移で弟子たちを残して、去った。


 ――――――


 現在、俺は気分転換にマクロと戦っている。


 剣が当たる反動を生かして、後ろに下がった。

 魔法を撃つタイミングを晒している。


「魔法の使用タイミングが悪い。並列思考をしろ」


 防御の為に土の壁を作った。

 壁に高圧の水が当たり、崩れる。


「剣と魔法の両立」

 

 接近戦をした状態で魔法のイメージをする。

 言葉にすると簡単だが、動くのは難しい。


 魔法を使おうと努力をしているのは分かる。

 しかし、剣が疎かになるのはよくない。


 マクロの体を蹴り飛ばした。


「今日はここまでにしよう」

「はい」


 マクロが転がっている場所まで移動をする。


 久々に二人きりになったので聞きたい事でも聞くか。


「お前の夢は俺を倒すことなんだろ?」

「ええ」

「やっぱり、俺に復讐したいとか思っているのか?」


 どんなに鍛えた人間でも近寄ろうともしない危険な場所に放置した。

 想像を絶するような苦痛を味わったはずだ。


 特にあの場所は魔法が使えないと極寒の氷山地帯や灼熱の乾燥地帯を体験する。

 一体、どうやって適応したのかは謎だが、苦痛の中で俺を恨む可能性は高い。


「勿論、復讐したいとは思っているけど、特に憎悪はないと思う」

「それは興味深いな」


 掘り下げて、話したい所だったが用事が入った。


 頭の中にブザーのような電子音が響いた。

 この信号は紙に込めた魔法が発動した事を伝えるものだ。


 あの化け物たち、一体どうやってあの場所を攻略したのだろうか?


「すまない。話の続きはまたいつかな」


 転移で〈死の戦争区域(デスウォーエリア)〉に移動した。


 ――――――


「あれ、誰もいない」


 【魔力感知】に反応がない。


 赤髪の少女に確認を取る。


「私は何もしてないであります」

「分かった」


 すぐに転移をした。

 かなり、急がないといけない用事になってしまった。


 ――――――


 転移をした先では女を何人が侍らせた男が剣を持っていた。


 薄暗い部屋で周りには拷問器具のようなものが並んでいる。


「助けに来ましたよ。ソーフスさん」


 後ろには縄で拘束されている人物。奴隷商人のソーフスさんがいた。

 忘れかけていたが、ソーフスさんにも通信用の紙を渡した。


 急に現れた俺に驚いて、男が何歩か後ずさった。


「お前は誰だ!」


 男の言葉に対しての答えを考える。


 大体、ソーフスさんに復讐心を持っているのは競争に負けた商人やこき使われた部下。

 ……最も有力なのは元奴隷だろう。


 男が侍らせている女の首を見る。

 やっぱり、奴隷の首輪があった。


 しかも、ハーフではない獣人。

 男の方は差し詰め正義感の塊で行動している転生者と言ったところか。


 結構、面白い状況になっている。


 悪役を演じてみるか。


「俺はこの人に雇われている用心棒さ。金の分は働かないとな」


 奴隷の代金を安くしてくれた分の金があるから、嘘は言っていない。


「こいつは彼女たちを痛めつけたんだぞ! 許されるはずがない」


 男の正義を聞かされた。

 世界が違うことを知らないのだろうか?


「僕は精霊に愛されるチートを貰っている。この魔導の力で今はAランク冒険者だ」


 次は自分の強さを語り始めた。

 Aランクの冒険者がどの位の力があるかは不明だが、魔力量は大したことはない。


 とりあえず、噛ませ役みたいに驚いておくか。


「Aランクの冒険者だと……」


 アイテムボックスから鉄の剣を取り出す。

 魔剣を使うまでもない。


「お前は敵だ。風の精霊よ我が魔力を代償に……」


 長ったらしい詠唱を始めた。

 目を瞑って詠唱しているせいで剣を投げれば、簡単に殺せる。


 詠唱中にソーフスさんの拘束を解いておく。

 レベル的に俺の動きは見えていないだろう。


「《暴風(ストーム)》」


 男の魔導が発動した。


 暴力的な風が部屋を包んだ。

 所々に風の刃があり、周りの拷問器具に傷を付けた。


 勿論、俺には効かないが……。


 《結界》で術者の男以外を守る。

 男の使った魔導は制御が甘く、後ろに待機している獣人にまで被害が及ぼうとしていた。


「なかなかやるな」


 ダメージを受けたかのように体を消滅させた。

 消えた部分は【超高速再生】が発動しない。


 これが消滅の強みの一つである。


「ここは撤退をさせてもらう。じゃあな」


 《土球》と《クリエイトウォータ》を組み合わせて、子供が作った泥だんごを作る。

 作っただんごを地面に投げた。


 地面に当たった瞬間に魔法で霧を発生させる。

 見られていないうちにソーフスさんを触り、転移した。


 忍者の真似をしようとしたが、タネが分からなかったとはいいずらい。



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