表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/135

八十話 説明

 六人の少女たちは、順調にそれぞれの才能を生かした修行を始めた。

 後はマクロのみだ。


 ()()()()()()簡単な事をする。


「ここは?」

「北の果てだ」


 環境が一瞬で変わる超過酷地帯。

 名前は分からないが、ここが一番修行に向いている。


「じゃあ、俺はいつか迎えに行く。生きろ」

「え!」


 マクロの背中を掴み、北方向に向けて投げた。

 そして、俺は転移で帰った。


 命の過酷さを身をもって知れば、何か変化があるかもしれない。

 勿論、この訓練で死ぬ可能性もある。


 だが、こうでもしないと少女たちには追い付けない。

 才能の差を埋めるためには死ぬ気でやらないといけない。


 それほどまでにこの世界は残酷なのだ。


 ――――――


 現在、俺はデンの鍛冶をのんびり眺めている。

 本当は鍛冶に関することを教えてやりたいが、全く知識がない俺が教えても無意味だろう。


 死の城(デスフォートレス)を作った時は、大体をドワーフにお願いして作って貰った。

 俺がしたのは、攻撃の八割を返す効果を付与した位だ。


「出来た!」


 銃の試作品が出来たみたいだ。


「これ、どうかな?」


 イメージ通りの銃を渡された。

 一回目にしてはかなりの完成度だ。


「試してもいいか?」

「どーんとやっちゃって」


 近くにある木を狙って、引き金を引いた。


 破裂音が森に響く。

 あまりの音に目を瞑ってしまった。


 目を開けながら、木を確認した。


「流石にやり過ぎだろ」


 木が音を立てながら、倒れた。

 一本だけではなく、後ろにあった二本の木も倒れていた。


 ここまでの破壊兵器を作るとは思わなかった。


「問題点は音が大きいから、すぐに場所が特定される。……位か」

「まだ、威力が足りない」

「もっと強いのを作るのか」


 あの弾一発でも、俺の目にかすり傷を負わせるパワーはあった。

 それでも、強くするのか。


 これは、数年のうちに俺を殺せる兵器が完成するかもな。


 ――――――


 リュウがデンの銃を試している時。

 犬の獣人のマクロはマイナス二十度の氷山地帯にいた。


「寒い。なんで、僕がこんな目に」


 魔法やスキルの使い方を知らないマクロは体を縮める事でしか、寒さを対策出来なかった。


 指先の感覚が徐々に薄れていくのを感じ、恐怖に飲まれていた。

 そして、生きるすべではなく恨む相手を探した。


「あの男が悪いんだ」


 幸い、恨む相手はすぐに見つけた。

 自分をこんな場所に連れてきた張本人、リュウだ。


 しかし、恨んだところで何もならない。


「まだ、死にたくない」


 動かない体を強引に動かして、前に進んだ。

 何処に終わりがあるかも分からずに。


 すると、氷山地帯が急に九十度を超える灼熱の砂漠地帯に変化した。


 先ほどの寒さは無くなったものの次は乾きがマクロを襲った。

 靴を履いてないせいで、地面もマクロの足を焼いた。


 痛いのに声が出ない。

 声を出す力すら、無くなっていた。


 体に力が入らずに地面に倒れた。

 地面が体を焼く。


 マクロは痛みの中で願った。

 早く、さっきの寒さに戻ってくれと。


 その願いは叶えられてしまった。


 砂漠が再び、氷山地帯に変わった。


 寒さよりも乾きが強かったマクロは地面の雪を飲んだ。

 体が冷えるのを気にせずに飲んだ。


 腹の中に雪が大量に入り、乾きが薄れた。

 しかし、今度は今まで忘れていた寒さがマクロを襲った。


「冷たい。死ぬ」


 前は体の外側だけだったのに対し、今回は内臓の仲間で冷たい。


「嫌だ。まだ、死にたく……」


 マクロが独り言を言いかけた時。

 再び、灼熱の砂漠に変わった。


 マクロは乾きを思い出した。

 あの苦しみをまた味わうのか。


 マクロの足は震え始めた。


「なん……で」


 だが、マクロがいくら待っても乾きは来なかった。

 皮を焼かれる痛みにも慣れてきた。


 生き残れることを確信し、マクロの目に希望が宿った。


 環境がまた変わった。

 今度は氷山地帯ではなく。竜巻が大量に発生している異常気象地帯だった。


 竜巻の一つの中に巻き込まれた。


 さっきまで無かった木の破片や大きな石がマクロの体を抉る。


 無数の切り傷からは血が、打撲痕は痛々しく変色していた。

 背中には大きな木の破片が刺さっている。


 今にも倒れそうだが、マクロは倒れなかった。

 何故なら……


「なんで、地面に針が」


 マクロの足周り以外に毒々しい針を持った草が生えていた。

 意識が朦朧としていても分かる。この植物に触れてはいけない。


 数十秒が何時間にも感じられた。


 氷山地帯に戻った。

 マクロは地面に倒れた。


 雪の上に倒れたことにより、傷口が冷え、痛みが和らいだ。

 そして、また雪を()()始めた。


 この後も環境はめまぐるしく変化した。

 雪を飲んでいる時がマクロにとって一番楽しい時間になった。


 既に心は砕け、ただ何かを飲みたいという感情だけが残った。


 ――――――


 マクロが正常に戻ったのは三日後の事だった。


 寒い氷山地帯や熱い砂漠地帯に対して、一切ダメージを受けなくなった。

 更に、竜巻から来る木の破片や大きな石もマクロの体に当たる事で逆に砕けた。


 針のような草もマクロの体に刺さらない。


「どうしていたんだ。僕は」


 ここに入れられる前にはなかった圧倒的な力を手に入れていた。


「これなら、あの男を」


 飛んで来た石を拳で粉砕しながら、復讐を考えた。

 マクロは出口だと思う方向へ全力で走った。


「体が動かない」


 急にマクロの体が動かなくなった。

 そして、地面に引き寄せられるように倒れた。


「体が……重い」


 手と足で体を持ち上げるものの、体が上がらない。

 逆に手と足が地面にめり込み始めた。


 必死に抵抗するが、抵抗すればするほど地面の中に入って行く。


 マクロは自然と言葉を吐いた。


「飲み込んでやる」


 意識をせずに放った言葉が、マクロのこの後を大きく変えた。


 徐々に体が軽くなった。


 軽くなった体でマクロは再び走り始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ