七九話 娘
帝国の城下町に着いた。
「転移完了」
「ここは何処ですか?」
デンは周りを観察しながら質問して来た。
「ここはソーネット帝国。一応、フードを被っておけ」
夜明け前はあまり、人がいなかったにも関わらず、朝にはかなりの人間がごった返していた。
デンもマクロも俺の手を掴んだ。
本能的に帝国が怖いのだろう。
《洗脳》が解けることは無いとは思うが……。
まあ、もし解かれても俺の元を離れることは不可能だ。
「デン。他人の武器をよく見ておけ」
「あの、粗末な武器たちですか!?」
「声がでかい」
近くにいた冒険者から睨まれた。
手を出して来るようなら、こちらにも考えがあるが、ここで問題を起こすのは面倒臭い。
二人の手をしっかり握り、城に向かった。
――――――
帝国の城に忍び込んだ。
対魔法用の警備が一切なかったため、簡単に侵入出来る。
ある部屋に鎧と狼がいた。
魔力量が城の中で圧倒的に多かったため、すぐに見つけれた。
「よお、不死の騎士さん」
「どうも、謎の少年」
「早速だが、その鎧は俺の仲間の物でな。返して欲しいんだが、もしくはお前たちに来て欲しい」
今回の目的は死の城を回収。または、不死の騎士とエンチャントウルフを仲間にするためだ。
どの種族も弱くなっているこの世界で桁違いに強い奴が居るのはあまり好ましくない。
特にあの鎧はチートを使って作ったため、かなり危険だ。
友好的に話が終わらせるためには仲間にするのが一番だろう。
「お父さんについて、何か知っているかも知れないから、私は行くよ。姉さんは?」
狼が頷くように首を縦に振った。
「少年。私たちを好きにするといい」
「分かった。俺の体に触ってくれ」
エンチャントウルフが俺にまたがれる形で入ってきた。
そして、不死の騎士は俺の頭を触った。
違和感があるが、木の家に転移した。
一瞬で景色が変わる。
「凄いね。お父さんに匹敵する力だね」
「そうか」
頭に乗っかている手を払い、エンチャントウルフから降りた。
「今から、何をするの? 少年」
「少年じゃない。俺は五百年前に召喚された勇者。リュウの生まれ変わりだ」
正体を晒した。
勇者の時に仲間だったガイゼルやジョンを見たら、何かを思い出した。
懐かしいものをこいつから感じる。
もし、勘違いだったとしても知られてもいい情報しか喋っていない。
転移で適当な場所に逃がせばいい。
「そうなの? やっぱり、そうだったの」
兜を脱いだ。
長い翡翠色の髪をした女性の顔が現れる。
疑問が確信に変わった。
「私の事を覚えていますか? お父さん」
「ああ、勿論だ。俺たちが育てた死ねない呪いを掛けられた子供。イオン」
「良かった」
勇者の時に俺は仲間と旅をしていた。
その時に拾った少女が今、目の前にいる人間だ。
名前は理科で習った言葉を使った。
ネーミングセンスがあればもっといい名前を付けれたかもしれない。
「エンチャントウルフのデンシも俺たちが子犬位の時に拾って育てたな」
「ワン」
狼なのに犬みたいに鳴くのも、懐かしい。
「これからはお父さんと一緒に居れるの?」
「そうだな……」
二人は俺たちが魔王討伐をする時の癒しとして、置いといただけだ。
正直、そこまで思い入れがある訳では無い。
「覚えてるかな。私が魔族に攫われた時の話」
「あの時は大変だったな」
確か、あれは魔王城を攻める一週間前の話だったな。
イオンが攫われて、罠が大量にあった魔族の拠点に一人で助けにいったな。
クズどもは、拘束したイオンを刃物で傷つけた。
あの時は、結構怒った。
「一緒に暮らそう。お父さん」
イオンは俺の事を親みたいに慕っている。
俺にとっても可愛い娘として扱っていたが、今は利用する相手だ。
「俺は国を作りたい。そのためには、イオンとデンシの力が必要なんだ」
「私たちを利用して、それがお父さんの幸せに繋がるなら」
デンシが俺に顔を押し付けるようにじゃれてきた。
こいつも俺の為に働いてくれるのだろうか?
「人殺しだろうが、私の不死について研究するならいくらでも刃物を入れてもいい!」
「流石にそこまではしないな。とりあえず、鎧をこの少女に渡してくれ」
「……分かった」
渋々、鎧を脱ぎデンに渡した。
「この鎧は格が違います! さっきまでいた人たちの粗末な武器と比べられません!」
元気な声を出した後にデンが死の城を触り始めた。
「これは、かなり面白い作り方をされてますね」
「分かるのか?」
「はい! 特にこの子は衝撃をほとんど吸収するので使用者のダメージはほとんどありません」
「凄いな」
デンの頭を撫でる。
まさか、初めて見た鎧に威力吸収が細工されていることを見分けるとは。
つくづく、才能が出るな。
「こんなのを作ってみたいか?」
「うん! 他にもいろんな物を作ってみたい!」
道具を渡せば、何かを作りそうな勢いだ。
簡単な道具位なら、今からでも作れる。
「よし、今から道具と素材を渡すから、いろいろ作ってみろ」
「うん!」
オリハルコンを魔力で変形させて、金槌の形や金床の形に変えた。
素材は〈嫉妬〉で入手した物を渡せばいい。
「よし。やってみるよ!」
七層目に居た龍の鱗を叩き始めた。
何が出来るか楽しみだな。
「あの私は何をすれば……」
「帝国の軍人を辞めろ」
「はい。辞めた。次は?」
あっさりと軍人を辞めた。
これ以上の要求は無い。
「先にここを出て行った、ジョンを追いかけて冒険者をやってくれ」
「これですか?」
いつの間にかイオンの手には真っ黒い板が握られていた。
「Sランクの冒険者だよ。私は」
「そ、そうだったのか」
そういえば最近、冒険者組合に行っていなかったな。
今度、ダンジョンを漁って魔道具を売りさばくか。
「出来た!」
デンの大きな声が聞こえた。
完成品を見るために近寄る。
「これは、剣か?」
剣にしては歪な物が出来ていた。
先端部分がツルハシのような形になっている。
一体、どんな用途があるのだろうか?
「試しに使ってもいい?」
「ああ、人を傷つけないなら」
「ありがとう!」
デンが剣を持ち、家とは逆の方向を向いた。
まさか……。
「掘削剣!」
ツルハシの部分が地面に触れた瞬間、地下深くまで罅が入った。
実際には見えないが、音から分かる。
「回収!」
剣が膨らみ始めた。
「これは、どんな剣なの?」
「鉱石を回収する剣」
「そうか」
素材に秘密があるのだろうが、あの鱗の元である龍は一瞬で殺したせいであまり覚えていない。
「あの、私の事は」
「あ、すまん。忘れていた」
デンの才能に夢中になってしまっていた。
完全にイオンの事が頭から飛んでしまった。
「まあ、Sランクだろうと、ジョンの手伝いは出来るだろう。行ってこい」
「はい。姉さん。行くよ」
デンシがクゥーンと子犬のような鳴き声を俺に向かってした。
最後に毛を触る。
決意が出たのか、デンシはイオンを背中に乗せ走り去っていった。
「新しい素材!」
興奮した声で物を要求してきた。
ちょっと、知識を与えてみるか。
「銃を作ってくれないか?」
「銃って何?」
適当に棒を拾い、拳銃の絵を描いた。
「こんな形で、ここから金属の球を高速で打ち出す兵器だ」
「素材があれば、作れそう」
「じゃあ、これを渡しておくから」
手持ちの魔物からのドロップアイテムを全部渡した。
デンほどの才能があれば、面白いものを作るだろう。
さて、あとはマクロをどうにかしないとな。




