七七話 整理
『こいつは何だ?』
『時間の精霊が過去から持ってきたモンスターです。与えた傷の時間を止める呪いと自分の時間を戻す能力を追加で持っています』
目の前の化け物の正体は過去のモンスターらしい。
見ただけの強さだが今の時代なら国を一つ落とせる位の力はあるな。
しかも、傷の時間を止める能力があるせいで自然回復が出来ない。
時間を戻す能力で与えたダメージも時間でゼロになる。
シュウがやられたのはこの系統のモンスターだろう。
『消していいか?』
『いいです』
口を開けて、ビームを出そうとしている獣を見ながら左手を向ける。
あのビームでどの位の被害が出るのだろうか?
「まあ、お前はここで消える」
一瞬にして、モンスターが消える。
時間をいくら戻したところで存在を消された奴は戻って来ない。
つくづく、チートな能力を手に入れたことを実感する。
他人から与えられた能力では無いのでチートではないと認識している。
消滅を使ったことにより、かなりスッキリした。
これなら、帰っても問題ない。
『それで時間の精霊とやらはどこにいるんだ?』
『逃げましたね』
『そうか、じゃあ帰るか』
『分かりました』
時間の精霊に会ってみたかったが、逃げられているのならしょうがない。
森の中の家に戻った。
――――――
太陽が地平線から見える位の時間になっている。
早く城に戻った方がいい気がする。
家族を心配させる事はあまりしたくない。
とりあえず、今は仲間の確認が優先だ。
ドアを開けようと手を触れようとした瞬間。
肩を叩かれた。
振り向いても誰もいなかった。
「楽しい人生にしろよ」
誰もいないのに声が聞こえてきた。
一体こいつは何なのだろうか?
敵意はまるで感じられないから無視をしているが、これ以上関わってくるようなら何か対策をしないといけなくなる。
それは面倒臭い。
今度こそドアを開こうとすると、触れてもいないのに開いた。
もしかして、このドアに嫌われているのだろうか?
「おう。リュウじゃあねえか」
五百年前に俺に冠を教えてくれたガイゼル・ローゼン。
その男が目の前にいた。
全身的に白い姿がやけに懐かしい気持ちにさせる。
なんだろうか。この込み上げてくる感情は。
喜び? 悲しみ? 怒り? そんな事は無い。
「久しぶりだな。ざっと十年ぶりか?」
「そうなのか? 俺にとっては四十年ぶりなんだが」
時間のずれが起きてしまっている。
「レイからはリュウに復活させられたと聞いた。なにが目的だ?」
「今から話す。ちょっとついて来てくれ……お前もな」
空中を掴むと感触があった。
クリスタルドラゴンのジョンの姿が現れた。
「いてえじゃねえか。ちょっと放せ」
「はい。ちょっと」
「すぐ掴むな」
「また、やってるな」
魔王を倒すと決めたのはこいつらの平和を守るためがほとんどだ。
そもそも、人間が味方だの魔族が敵だとかはどうでもいい戦争だった。
引っ張りながら、元奴隷たちが寝ている部屋に連れて行った。
「へえ。リュウ。お前はそっち系が好きなのか」
「違う。とは言い切れないかもしれない」
ガイゼルの質問に曖昧に返す。
ロリコンではないと思っていたが、少女や美女に体が反応しない以上は否定できない。
体が変わったせいなのだろうか?
「本題だが、この子たちの師匠になって欲しい」
「化け物製造をしろ。って事だろ……いててて」
いらない事を言うジョンの頭を強く握る。
言っている事は正解なのが、更にムカつく。
手を離す。
「そうゆうことだ」
「じゃあ、俺は黒い狐と銀髪のドワーフ。あと灰色の鼠の子に剣を基本とした戦い方を教える」
「コンとエネとインだな」
剣聖のガイゼルが担当をする子を決める。
才能を見ただけで見抜く能力は流石だ。
俺なら少なくとも歩いたりの行動がないと強さや才能を見られない。
「次はレイが教える魔法系は、白猫の子とエルフの子が適任だな」
「俺は何をすればいいんだ?」
正直、ジョンは人に何かを教えるのが上手くはない。
この子たちの為に何をさせるべきか。
「そうだな。冒険者にでもなっていてくれ」
「俺が邪魔なんだな」
「そんなことは無い」
この考えが出てくるまでは確かに邪魔者の可能性もあったが、今は重要な存在だ。
「種族差別が激しい今の時代で何も地盤が無いのは困る。お前が龍人として有名になれば、種族に対する考えも少しは変わるだろう」
「ちょっと待て、今の時代は差別があるのか?」
「俺の知っている限り一つの国を除けば、他種族を排除する習慣が今はある」
「よし。分かった。俺がいい意味で有名になればいいんだな」
さて、いい感じに説得が終わった。
「おい。あと二人はどうするんだ?」
「男の子の方は後回しでいいが、金髪のドワーフのデンは鍛冶系の才能がある。付与する能力を手に入れるまでは魔法を学べばいいが、鍛冶を教えられる奴が欲しい」
「じゃあ、俺が探してきてやるよ」
ジョンが自信ありげに胸を張って言ってきた。
まあ、いいか。
「頼んだ。じゃあ、俺は用事があるから後は頼んだ。また来る」
後の事はこいつらに任せても大丈夫だろう。
「転移」
魔法名を詠唱する事によって、新たな自分の能力を仲間にさり気なく伝える。
奴らなら、適切に俺を扱ってくれるだろう。
――――――
「ただいま戻りました」
家族が周りにいるが、今はどうでもいい。
「シュウは……寝ているな」
シュウに近づきながら、神鉱石・邪神と神鉱石・聖神が届くことを強く願う。
あの二柱なら、すぐに来てくれるはず。
『急いで作らせた……よ』
『【アイテムボックス】の中に入れておいたから、これから、面倒臭い会議があるんだ。だから、十年位は帰って来れないみたい』
録音を聞かされたような声が頭に響いた。
神も面倒臭いことをしないといけないんだな。
シュウに近づきながら【アイテムボックス】から、二種類の金属を取り出す。
一つは漆黒の禍々しさ。もう片方は純白の清廉さ。
名前を体現したようなオーラが感じられる。
どの割合がいいかは分からないが、適当に混ぜるか。
レイが解析してくれたシュウの体のデータを思い出しながら、腕を制作していく。
この世界のみあるミスリルなどの金属は大抵は魔力で操れる。
ただし、どんなに極めてもかなりの集中を必要とされるため、敵の剣をただの棒に変えるとかは出来ない。
歩きながら他人の体という複雑な工作をするのは負担が激しいが早くこの場を去りたい。
この感情は何なのだろうか?
「《闇の障壁》」
五秒の間、聴覚以外の感覚を無くす魔法を作り発動させた。
黒い霧が周囲を覆う。
かなり、広範囲に広がるように作った。
これで、今からやる事を誰にも見られない。
シュウの仮初の腕を切り落とし、今作った義手を繋げる。
そして、目も嵌めた。
もう片方と見分けがつかない位に隠せている。
「じゃあな。しばらく賢者の所にいることにした」
転移で帰った。




