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七六話 心のある生物

 仲間の死体を見て、涙を流している自分がいる。


 俺は今まで多くの人間や魔族を殺してきた。

 自分の仲間が死んだ時に泣く資格なんてない。


「良かったのじゃ。儂もこやつ等の死体を見ると心が痛む」

「お前もか」


 死体を見ただけの俺とは違って、死んだ時を見ているレイの方が断然辛いはずだ。

 自分は寿命で死ぬのは相当先なのに仲間がどんどん死んでいく。


「復活は止めようか。こいつらだって、疲れているからな」


 本当はまた話したいが、死んだ後もこき使われるのは俺だったら絶対に耐えられない。

 やられたら嫌な事をするのはクズのすることだ。


「石像でも作って、終わりにしよう」


 レイの肩を引き、部屋を離れようとした時。


「剣聖のガイゼルは死に際に『勇者と剣の勝負をしたかった』と言っていたのじゃ」


 いきなり、話を始めた。


「龍人ジョンは『かくれんぼのリベンジがしたかった』」


 あいつ等との思い出がよみがえる。


「それで、蘇生させる必要はないじゃないか?」


 メリットが一切感じられない。


 心の中ではまた、あいつらと何かをしたいと考える。

 だが、感情的に動くことは悪くは無いが結果が伴う確率は低い。


「奴隷を強く育てるなら、役に立つのじゃ」

「そうだな」


 子供たちの師匠として、生き返ってもいいんじゃないだろうか?

 建前は完璧だな。


「それで、魔力はどの位。必要なんだ?」

「一人当たり、一億なのじゃ」


 一億か。全力でも足りない気がする。


「ちょっと、待ってろ」


 転移で魔族の町に転移した。

 

 ――――――


 ただ、石を積み上げたような汚い大きな城壁が目の前にある。


 こんな、適当な城壁だとちょっとしたことで崩れて町に被害が出るだろう。

 もっといい物を作らないといけない。


 そういえば、もう魔王が出ているはずだ。


「いい街作れよ」


 一瞬で城壁を消滅させた。

 これで俺の目的は達成だ。


 後は魔王様が強い城壁を作ってくれるだろう。


 転移で元の場所に戻った。


 ――――――


「準備は完了だ」

「ここに魔力を入れるのじゃ」


 コンセントの様な紐を渡された。

 液体の入ったカプセルに繋がっているみたいだ。


「分かった」


 ありったけの魔力を注ぐ。

 意識が朦朧としてきた。


 手持ちの魔力はこの辺でなくなる。

 なら……。


「創造すればいい」


 ゼロを一に変える。

 人間のみだと到底到達できない領域の技。


「もう、いいのじゃ」


 魔力の創造を止めた。


「かなり、やばい状態になった。ちょっと世界を消してくる」


 上空に転移して、空間を消して、空を移動する。


 なるべく遠くに誰もいない場所に行かないといけない。

 もしくはクズの巣窟を見つけないと理性が持たない。


 ――スベテヲケシタイ。



 ――――――


「どうして、こうなった」


 今の状況を説明しよう。


 目の前が砂漠になっている。

 以上。説明終わり。


 ここが何処だが分からない。

 下手したら、国を滅ぼしているかもしれない。


 精々、森を消しただけだと信じたい。


『クウ。ここ、どこ?』

『分かりませんね。私も意識を失っていたので』

『そうか』


 消滅と創造は最強の力だが、その分、代償も大きい。


 例えるなら、質量保存の法則みたいなもので創造した分は消滅しなければならない。

 逆に消滅した分は創造しないといけない。


 もし、その法則を破ってしまったら今みたいな事になる。


 理性が吹っ飛び不足しているものを創造または消滅させる。


 今回は魔力を創造する量が、魔族の町の城壁を消滅した量よりも圧倒的に多かったため、俺の理性が飛んでしまった。


 要するにどちらか一方だけを使うことはあまりよくない。


「とりあえず、帰るか」


 何処だが分からなくても、クウの力があればすぐに帰れる。

 唯一つ勇者の時よりも長けている分野だ。


 もし、五百年前の俺みたいにチート盛りだくさんの勇者が来たら、世界最強は俺ではなくなる可能性が高い。


 奴隷たちには勘違い系の教育をしたい。

 例えば、『実は自分が世界最強でした』的な育て方だ。


 最終的に一人ひとりが俺を超えるようになって欲しい。

 そして、世界は広い的な事を言って……。


 いかんいかん。つい。妄想が激しくなってしまった。


「人間の反応が近くにあるな」


 【魔力感知】が集団的な魔力を感知した。

 どうやら、この近くに町があるみたいだ。


「少し、観察でもするか」


 人生。行き当たりで進むのも悪くはない。

 元仲間の復活も気になるが、あいつらは俺の性格をかなり知っているはず。


 なら、多少遅れても笑って許してくれるだろう。


 歩きながら、どんな種族がいるかを予測する。

 今は更地だが、森があった場合や砂漠があった場合を想像すると楽しいな。


 地平線あたりに何かがある。


「綺麗な城壁だな」


 地形変化を気にせずに走り、町に着いた。


「美しい」


 美的センス皆無の俺が見ても分かるような綺麗な塗装がされている。

 

 ……消したい。


 素晴らしい物ほど壊したくなる。

 これが、創造の代償。


 破壊衝動が湯水のように湧いてくる。

 壊したい()()()()()()させて、一時的に抑えた。


 これ以上ここにいると精神が持たない。


『白い空間に頼む!』

『分かりました』


 目の前が真っ白になる。

 何もない空間に入ったお陰で消滅衝動が収まった。


 デリデリと会話すれば、この気持ちは落ち着くがまた居なくなったみたいだ。

 もう。どうしようもない。


「何を消せばいいだろうか?」


 命がある物を消した方がスッキリする。

 正直、クズを探すしかない。


 クズだからって存在事消していいのか?

 気に入らないだけで消される相手の気持ちを考える。


 そもそも、クズとは何なのか?

 人を殺した奴? 仲間を傷つけた奴? 弱者を傷つける奴?


 分かった。気に入らない奴だ。

 簡単な事を理解していなかった。


「はははは!」


 全く身勝手な人間だな。

 笑いすら込み上げてくる。


「自分勝手でもいいか」


 別にその程度で揺らぐような精神なら、創造と消滅を扱えない。


 冷静に消滅をする相手を考える。

 消えても世界に影響が出ないような奴を探す。


『時間を消しませんか?』

『時間?』

『はい。時です』


 クウから提案を受けた。

 だが、時間の概念なんて、イメージできない。


『現在。私の知っている限り時間を操れるのは時間の精霊王でしょう』

『それでどうすればいい?』


 精霊王は確か対象の属性を操る事が最も得意な精霊。


 クウの場合は空間の精霊王。

 そもそも、空間の精霊が一体しかいない時点で王なのは確実だが。


『実際に会ってくれませんか?』

『別に構わない』


 やけに焦っている様子だな。

 普通なら理由を問いただすが、面倒臭い。


『移動します』


 景色が変わるかと思って待機していたが、何一つ変わらず、真っ白いままだ。

 もしかして、失敗か?


『ここです。この空間はあいつとの共同制作なんです』


 とても、俺の知っている精霊じゃない獣の化け物が目の前にいた。



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