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七三話 帝国

 月は綺麗なのに炎に包まれるなんて、運がない。


「無意味だがな」


 俺にダメージを与えるには鉄を溶かせる温度の三倍は欲しい。

 それでも、一つでも魔法を使って守れば、ダメージは限りなく少なくなる。


「どちら様でしょうか?」


 杖を持った怪しい雰囲気を出している黒マントが問いかけてきた。

 謎の紋様が無ければ、マントを貰いたかった。


「剣聖の息子。リュウ・ローゼン」

「まさか、あの」


 最近、『まさか、あの』が流行っているのだろうか?

 まあ、そんな事はどうでもいい。


「所属をはっきりしたら、殺しはしない」

「帝国軍人があっさり情報を吐くわけないだろう」

「流石。帝国軍人かっこ笑いさん」


 確か、ソーネット帝国しか帝国を名乗る国は無い。

 知りたい事は知れたな。


 西の方角。つまりは家に向かって槍を投げる。


「交渉決裂だな。じゃあ。本国に帰還願おう」


 高速で敵の後ろに移動する。

 マントの腕を掴み、転移した。


 ――――――


 豪快に抉れた天井に赤い絨毯に刺さった槍。

 どうやら、帝王の間的な場所みたいだ。


「ど、どうも。帝王さん。ここに任務を失敗した奴を置きますんで、それでは」


 このまま、帰りたいな。


「戻しておくので許してくれ」


 地面に手を触れる。

 元の城をイメージして、壊れた場所を直していく。


 本当は時間を戻して的な感じで圧倒的な力を見せつけたかった。


 俺には操れない物がいくつかある。


 代表的なのは空間と時間だ。

 どちらもイメージが全くできないのが原因だ。


「この辺で帰る……とはいかないか」


 槍を担いだ鎧と黒い変な仮面を着けている狼が現れた。

 見ただけで強さが分かる。


不死の騎士(アンデットナイト)。こいつを殺せ!」

「分かった。面倒くさいけどやるか」


 空気と化していた帝王が荒げた声を出し、鎧がだるそうに返答した。

 それにしても不死の騎士(アンデットナイト)って、かっこいい名前だな。


「面倒臭いなら、殺さなくてもいいんじゃないか?」

「お前が私より強ければ殺せないな」


 これは戦闘が好きなタイプの人間だな。

 久しぶりの殺し合いも悪くない。


 渾沌魔剣ボールトと秩序魔剣ポネストを引き抜く。

 こいつらには魔剣を使う価値がある。


「じゃあ、やりますか。帝王さん。逃げる事を提案しますよ」

「ひい」


 空気が退場したことでお互いの準備が完了した。

 

「じゃあ、戦おうか」


 瞬間。目の前が火に包まれた。

 温度的にはそこまで熱くはない。


「なかなか、消えないな」

「《付与炎(エンチャントフレイム)》。姉さんの技だよ」


 狼を撫でながら、喋っているところから見て姉さんとは狼の事なのだろう。

 よくよく見てみると目が赤い。


 モンスターのスキルだろうな。


「残念だが、俺には効かない」


 表面の皮を溶かして、新しい皮を作る。

 痛いな。


「転生者のスキルかな。凄いな」

「エンチャントウルフか。懐かしい」


 俺を燃やした狼はエンチャントウルフというモンスターで、相手に一つの属性を付与する能力を持っている。


「こっちからも行くか」


 斬撃を鎧に向かって、振り下ろす。

 あの槍で防げば、余裕で耐えられるレベルだ。


 ……?。俺が見た感じ斬撃を防げる実力はあるはずなのに、一切防御をしていない。

 鎧は見た感じアダマンタイト製でそこそこいいが、魔剣の前では無いに等しい。


 真っ二つに鎧が割れ、中身も真っ二つになっている。

 地面に血が広がった。


 流石にやり過ぎたか?

 殺し合いだから、別に罪悪感は無いが反省する。


「お前もすぐ送ってやる」


 仮面をつけているモンスターに向かってボールトの斬撃を飛ばす。

 せめて、苦痛のない死を与えてやる。


「残念だったな」

「人間か?」


 真っ二つにしたはずの鎧が動き出して、エンチャントウルフを守った。

 今度は槍で守っており、ダメージは入っていない。


「転生者って、毎回厄介なスキルをもっているけど君はどうかな?」

「この剣こそ俺の力だ」

「そういうタイプか」


 転生者にはチートが与えられることは、転生する前にプラハスから聞いている。

 今まで忘れていたが。


 今回、剣がチートだと言ったのは道具に頼るただの雑魚だと思わせるためだ。

 どうにかして、この戦いを終わらせよう。


「じゃあ、こんなのはどうかな? 虚実霧(キョジム)

「その技は」


 鎧が複数に増えた。いや、そう見えるだけだ。

 本物は一つしかない。


 目的が変更された。

 こいつには聞かないといけない事がある。


 複数の偽物による攻撃を見分けながら、本物を探す。


「そこだな」

「本当に剣が君のチートとやらなのか?」


 槍を掴み、引っ張り出した。

 見つけ出すのは意外と簡単だった。


「もうちょっと、練習した方がいいぞ」

「調子に乗りやがって、貫通粉砕(スルーゴフ)


 今度は腹を殴ってきた。

 しかも、魔王拳を使ってくるとは驚きである。


 血を吐きながら、鎧の腕を握る。

 口角が吊り上がる。


「本来はこうやって、使うんだよ! 貫通粉砕(スルーゴフ)


 頭の部分を狙って殴る。


 硬い鎧を貫通して、中にいる人間の頭蓋骨を砕く。


死の城(デスフォートレス)。起動」

「お前の正体は何だよ」


 俺の腕が爆発した。

 これは鎧の能力で中身の人間が受けたダメージを八割以上の割合で敵に返す。


 遠くにいるエンチャントウルフがいつ動き出すか分からないし、頭蓋骨を粉砕したはずなのに未だに元気に動く鎧。


「面倒臭い。だから、帰る。掌波(ショウハ)


 鎧を遠くに飛ばして、扉の方に向かって歩く。


「姉さん。逃がさないで」


 ワンと一声聞こえた後、体が凍った。

 丁寧に顔の部分は動かせるようになっている。


 鎧が近づいてきた。


「もしかして、お父さんの事知っている?」

「知らないな」


 体を炎で包み氷を燃やす。

 蒸気で周りが見えなくなる。


「その鎧をどこで手に入れた?」


 声を荒げない様に冷静に問いかける。


 鎧の名前は死の城(デスフォートレス)

 俺が五百年前の聖女ジュリアの為にドワーフと共に作った世界に一つの鎧だ。


死の城(デスフォートレス)は五百年前の聖女ジュリアの鎧のはずだ」

「そんな情報を知っているのはやっぱりお父さんだね」


 どうも、話がかみ合わないみたいだ。

 そもそも、俺は帝国の不死の騎士(アンデットナイト)すら知らない。


 殺そうにも頭蓋骨を粉砕しても死なずに更に攻撃の八割をこっちに反射してくる敵の殺し方が分からない。

 聖剣があればまた別の話だが。


「また、三日後位に来るからその時に話そうか。じゃあな」


 今度は邪魔されずに部屋を出れた。


 ――――――


 今、ソーネット帝国の宝物庫の中にいる。

 目の前には金色の硬貨が山のように重ねられられている。


 金貨一枚が百ゴールド。つまりは五万円が広い部屋の中にぎっしり詰まっている。

 更に、金貨の百倍の価値の価値がある白金貨が一区画に大量にある。


 ここに来た理由は慰謝料の請求だ。

 二回も燃やされて、そのうち一回は皮を剥ぐほどの痛みを味わった。


 多少は金を貰ってもいいだろう。


「金貨二〇〇枚と白金貨十枚でいいか」


 合計三万ゴールド。円に換えると一千五百万円。


 帝国さんにとってはスズメの涙程度の量しか取っていないので許して欲しい。

 まあ、こちらが被害者なので文句を言われても無視するが。


 戦争するなら、アーツ王国の城で出会った謎の人物が出てこない限りは余裕で勝てる。


 五百年前の魔法がある時代なら苦戦もあったかも知れない。

 しかし、今の時代は余裕で無双できる程度だ。


「奴隷でも買うか」


 金を持ち続けていても、何の意味もない。

 使ってこそ意味がある。


 《透明化》を使い、兵士にばれないように城下町に入った。



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