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七十話 無視

 一見、黄色い草が辺り一面に生えているただの草原。

 一歩でも中に入ると全てが罠になる。


 更に【夜目 十】以外の魔法やスキルは発動もしない。


 試しに石を投げる。


 草が伸びて、石を貫いた。

 一本では無く数百本単位で刺さっている。


 これはまだ序の口でまだまだ、トラップはある。


「魔王拳 虚実霧(キョジム)。奥義、ニュ


 基本技と奥義を組み合わせる。


 黄色い草に足を踏み入れる。

 すると、十か所の草が伸びた。


「はずれだ」


 本来人間を相手に使う技である虚実霧キョジムの効果は錯乱。

 俺が何処にいるかは分からない。


 一歩一歩を確実に歩く。


「次は投石か」


 隕石のように顔ほどの大きさの石が何個も落ちてきた。

 躱すのも面倒臭い。


 頭に石が当たる。

 体を捻じ曲げて威力を分散した。


 ニュは物理攻撃を無効化する技である。

 軟体動物のような動きから名付けられたらしい。


 そもそも、ネーミングはあいつがしていたから俺にはよく分からない。


 流星群を抜けたら、次は迷路になった。

 いくら進んでも景色が変わらない。


 このままだと延々と歩かされる羽目になる。

 悩んでいると声が聞こえた。


『帰って……来たよ』


 デリデリの声だ!


『この迷路をどうやったら攻略できると思う?』

『消すのが……面倒臭くない』


 ――そういうことか。

 西の方向を向き、左手を構える。


 世界が真っ暗になった。

 一人の影が俺の左腕に絡むように抱きつく。


「「消滅デリート」」


 前方の空間をすべて()()()()()


『ありがとう。デリデリ』

『ずっと一緒』


 無になった空間を進んでいく。

 歩き続けていると、幹に大きな穴が空いている黄色い葉の世界樹を見つけた。


「こんにちは。私は〈あの世への誘い(アナザーインページ)〉の妖精です」


 黄色髪の半透明の羽根を持つ少女が挨拶をしてきた。

 妖精? 初耳だな。


「世界樹の葉っぱくれませんか?」

「分かりました。どうぞ」


 手のひらサイズの葉を手に入れた。

 紅葉前の葉っぱって感じがして結構風情があるな。


『戻ったよー』


 今度は頭の中に元気なエリエリの声が響いた。


「それで、世界樹が破損をどうにかしてくれませんか?」

「分かった」


 無にしてしまったものは再び創る事でしか、元に戻せない。


 右手で大きな幹に触れながら集中する。

 世界が真っ白になる。


 一人の光が手に巻き付いた。


「「創造クリエイト」」


 一テンポ遅れで、一瞬で木が戻った。

 元から変化が無いように見える。


『ありがとう。エリエリ』

『ずっと一緒だよ』


 二人の補助が無いと俺は消滅デリート創造クリエイトを扱いきれない。


「ありがとうございます。ついでにいい情報を」

「結構です。それでは」


 無視をする。


 ――――――


 北にやって来た。

 ここの名前は知らない。


 とりあえず、環境が厳しい。


 気温は七二度からマイナス五九度まで変化して、嵐や火山の噴火すべてが揃っている。

 重力が不安定な場所すらあった。


 スキルと魔法が使用可能だったお陰で難なく進めた。

 正直、これ作った奴はつまらないだろうな。


 今度は白髪の少女がいた。


「世界樹の葉っぱを下さい」

「どうぞ」

「さようなら」

「え。待って。自己紹か――」


 目が眩むほどの白い葉っぱを貰った。

 次は東だ。


 ――――――


 真っ赤なビルが乱立した異世界らしくない場所。


「ここはスキルと魔法禁止か」

『消滅は……使えるよ』

『創造もいつも通り』


 全てを消してから進んでもいいが、流石にそれでは妖精とやらが可哀そうだ。


 石を投げ入れると石が一瞬で砕けた。


「銃か」


 地面に空いている円形の穴から使われた武器を仮定する。

 建物を観察すると影がライフルみたいな銃を持っていた。


圧縮散弾コーポレショット


 指を広げて、思いっきり動かす。

 これで指の間に空気の爆弾が完成する。


 爆弾を無数に撒く。


 赤いコンクリートの地面に足を踏み入れる。

 ビルの一部が光った。


 狙撃に対して一切防御をしない。

 目の前が爆発する。


 圧縮された空気が破裂しただけだ。


 この技の特徴は壁等の動かないものに当たっても爆発しない。

 そして、俺やマクのように魔王拳で流せない限りは見えない。触れない。躱せない。の三点セットがついてくる。


 つまりは、この環境では俺以外の動く何かは攻撃が当たる。


 ビルの内部から爆発音が聞こえた。

 一発なったと思えば、連鎖するように爆発する。


「何体いるんだよ」


 あちらこちらで音がするので相当な数がいたのだろう。


 進んでいくと今度は戦車が現れた。

 主砲が俺の方向に向く。


「見えすぎなんだよな」


 狙っている場所を教えてくれて当たり馬鹿はいない。

 戦車を壊すのも面倒臭いな。


 いい事思いついた。


 戦車の上に乗り、操縦席に入る。

 なんか、ボタンばかりだ。


 前世も含めて戦車を動かした事も調べた事も無いので操作方法が分からない。

 とりあえず、レバーを動かす。


 一つ目は主砲用。ガックンガックン動いて少し可愛い。


 二つ目は右のキャタピラーで反対側にあったのは左のキャタピラー。

 これで、動かすんだな。


 東の方向に戦車を向けて進む。

 結構楽だなこれは。


 次は真っ赤な平原の真ん中に着いた。


「「「「「「「「うおー!」」」」」」」」


 戦車の中からでも聞こえる声が響く。

 画面の上に映し出されている映像を見る。


 銃を持った影が左右から走って来ていた。


「戦争かなこれは」


 戦う気は一切無いので戦車に弾が当たる金属音を聞きながら東へ進んだ。

 また、ビル地帯に入った。


 今度は戦闘機が爆撃を仕掛けてくる。

 戦車だといい的になるため降りた。


 落ちる場所が予測できる以上躱すのは簡単だった。


 途中でビルの色が灰色に変化していた。

 戦闘機はいないが、危険が迫ってくることを感じる。


 空を観察した。

 あれは、ミサイル!


「頑丈そうな建物の中に入らないとな」

『創造しようよ』

『あれごと……消滅』

『却下』


 あのサイズを消すのは俺一人では無理だ。

 二人の力を借りるのは最低限にしたい。


 一番高い建物に入った。


 中は空洞かと思ったが、ショッピングモールっぽい感じで商品が並んでいた。

 懐かしさを感じる。


 そんな事より、身を守る道具を探そう。

 工具店に入る。


 いろんな物があるな。

 マンホールみたいな蓋何枚かとスコップを数本持っていく。


「百パーセントオフなんて太っ腹ですね」


 自分に言い訳をしながら店を出る。


 一階に戻ってきた。


粉砕ゴフ


 コンクリートの地面を砕き、地面が見えるようにする。

 そして、スコップでとにかく掘った。


 十メートル辺りで穴に蓋をする。

 魔法が使えれば一瞬で出来る事もこんなに手間がかかった。


 後は運任せだ。


 鼓膜を破りそうなほどの爆音が響いた。

 

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