side 元魔王の転生 二
少々時間を遡り、いじめを撃退し、リュウに教室で技を見せた所まで戻る。
「この技は魔王拳っていってな。私が開発した」
「すげえな。他に効果はあるのか?」
魔王の時に作った。魔王拳。
遊びで作ったものだが、教えてやるのも悪くはない。
私の考えた技はすべてかっこいい名前がある。
リュウの腹部に手を置く。
「例えば、掌波」
これは人間を吹き飛ばす技である。
リュウが地面に勢いよく転がる。
「……痛くない」
「掌波は相手にダメージを与えない」
「こんな感じか」
集中し始めた。
まさか、基礎技とはいえ魔王拳を教えも無しで習得しようとしているのか?
いや、長年の付き合いだから分かる。
私はとんだ化け物と仲良くなったものだ。
「掌波」
衝撃とともに私の思考は一つに纏まった。
――こいつを最強に育ててやる。
――――――
たったの三年で基本技をすべて教え尽くし、中学二年生になった。
「マクは部活どうなんだ?」
「まずまず、県大会にも出られたからな」
「俺はそろそろ、新人戦があるから練習が厳しい」
「今度は入賞しろよー」
私もリュウも格闘技をすれば、全国大会に出られるほどの実力は軽くある。
最近、読んだライトノベルでは主人公が実力を隠して生活するというものがあった。
私たちは揃いもそろって全力で部活をしている。
卓球が予想以上に難しかった。
ちょっと力を籠めると見当はずれの方向に飛んでいく。
「そうだ。久しぶりに家に来いよ。妹がお前に会いたがっていたし」
「行く。行く!」
「じゃあ、明日の二時に来てくれ」
私の楽しみが待っている。
――――――
私は恋をしている。
相手はリュウの妹名無 美菜。
容姿端麗、成績優秀で更に性格まで良いとされている。
控えめにいって、私の女神だ。
彼女のためなら私は死ねる。
そんな子である。
名無の表札を確認してインターホンを押す。
すぐに扉が開いた。
「あ、マク先輩」
「み、美菜ちゃん。おはよう」
「おはようございます。龍之介お兄ちゃんは二階にいますよ」
更に丁寧に応対してくれた。
ああ、黒髪で美しい。
襲いそうになるのを耐える。
「今日、クッキー焼いたんで後でお邪魔します」
「ありがとう」
「いえいえ、私の趣味なので」
彼女の作るクッキーはおいしい。
いつか、毎日作って貰おう。
台所にまでついて行くと流石に紳士ではない。
おとなしくリュウの部屋に向かう。
「美菜ちゃん可愛かったな」
「そうか? 貰って欲しい位だよ。俺の部屋に勝手に入ってくるし、朝起きたら布団の中に入っているし、困っているんだよ」
「おい、そこ私に替われ!」
「じゃあ、家に泊まるか?」
!?。その手があったか。
いや、それでは私の理性は到底持たない。
「泊まるのは止めておくよ。私の姉がうるさい」
「真菜先輩か。あの人はお前の事になると過激になるからな」
「あの野郎は絶対に許さん」
「聞かれていたら、ぼこぼこにされているな」
あの暴力魔は大っ嫌いだ。
女で身内だから甘く見ていると調子に乗る。
ドアが開いた。
「クッキーをもって来ましたよ」
天使がやって来た。
私もこんな妹が欲しかった。
「サンキュー。美菜」
リュウが食べ始めている。
「すみません。マク先輩は……」
私に顔を近づけてきた。
吐息で体が痺れる。
「お兄ちゃんのは薬を入れています。マク先輩はこちらをどうぞ」
こっそり、別の袋に入ったクッキーを手渡された。
薬。男と女のあれ専用の薬だ。
どうやって入手したかは不明だが。
兄に対してやばい薬を入れる美菜ちゃんもやっぱり可愛い。
「最近、乾燥が凄いので加湿器を入れておきます」
ガスマスクをさり気なく渡してくるのは止めてくれるかな。
……可愛い笑顔に免じて許してあげよう。
「お兄ちゃん。今日は一緒に寝ようね」
「自分の部屋で寝ろよ。来年中学生だろ」
「いいじゃん。兄妹なんだし」
「マクと寝てやれよ」
心の友よ。
ここで、提案に飛びつくのは紳士ではない。
「遠慮しておくよ」
「そうか。俺は眠たくなってきたから寝る。ゲームでもやっていてくれ」
「分かった。スーパーオリオでもやるか」
リュウの奴、友が遊びに来ているのにこの対応はないだろう。
気軽な所が友としていいのかも知れないが。
某有名なおっさんが土管を飛んで目的地に行くゲームをプレイする。
初めてこのおっさんを見た時は三十は超えていると思っていたが、設定では二十代前半らしい。
「先輩。私はお兄ちゃんと寝るので気にしないで下さいね」
「ちょっと! 急に脱がないで!」
「?」
脱ぎかけの服のまま可愛く首を傾げられると理性が無くなってしまう。
「男の前で脱ぐと大変な事になるぞ」
「何言っているんですか? お兄ちゃんと大変な事になりたいのは前に伝えましたよね」
「でも、もう一人」
私の事を忘れられたら困る。
「先輩どうしたんですか? この部屋には女二人と男一人しかいませんよ」
おっさんが落とし穴に落ちてゲームオーバーの音楽が鳴る。
一瞬の静寂だった。
「そうだな。私は女だもんな」
コンテニューを押して、おっさんを走らせる。
後ろで物音が聞こえるが完全に無視をする。
性転換までは魔法陣に組み込んでいなかったはずなのにな。
あ、今度は敵に当たって死んでしまった。
「はあ、次はオリオカートでもしますか」
やけに高いため息が漏れた。
著作権大丈夫ですかね? (オリオにしていますが)
もし、問題がありましたら、教えて下さるとありがたいです。




