六七話 ゲーム
「ドゥーユーライクウドン?」
多くの人間に話しかけられた中で一番興味を持ったのがこれだ。
英語で更にこの国にはないうどんが好きか聞かれた。
反応をしてもいいが、転生者だとばれるのは確実だろうな。
「イエス、アイドゥー。ハウアバウトユー」
「イエス!」
何だこの会話。
異世界でするような会話ではない。
「ちょっと来てもらえるかな」
「ええ」
面白い奴を野放しにするのは損失だ。
仲良くなるために二人きりになる。
他の女は興味が無いのでお帰り頂いた。
人目が無い場所まで歩く。
「日本語。喋れます?」
「大丈夫です」
英語をずっと使うのは流石に疲れる。
そもそも、この世界には英語の概念がないから、辞書を引きながら話せない。
「べ、別にあなたの事が気になってきた訳じゃないんだからね!」
「ツンデレか!」
文脈は無いがそれもまた面白いな。
話していて楽しい。
「よし、お前の事は気に入ったから困った時や遠くに移動したいとき遠慮なく話しかけてくれ」
「分かりました」
「死ぬなよ」
ローゼン家の部屋へと戻った。
――――――
部屋にはシーしかいなかった。
「他のみんなは?」
「お母様は他の貴族の方と挨拶してますね。お父様は筋肉が凄い人に連れ去られました。シュウは知りません。あと、私の精霊王は寝ています」
「ありがとう」
シーの頭を撫でながらこの後、何をするか考える。
特にすることも無いな。
「シー。暇だから、さっきあった事を話すがいいか?」
「はい、勿論です。私も暇ですから」
馬鹿貴族が来てから、面白い少年に出会った所まで話した。
「面白いですね。それでその少女はどんな顔でしたか?」
「えっと、確か……ってあれ? 思い出せない」
身長はシーと同じ位だったのは憶えているのに顔が分からない。
「そうでしょうね」
「何?」
「今から話す事は絶対に誰にも話さないと誓って下されば話します」
「ああ、誓う」
ここまで、話題を引っ張られたのだから気になる。
「この世界はゲームの世界に似ています」
「ふう。もう一度頼む」
「この世界はゲームの世界に似ています」
よし、とりあえず魔王を倒しに行こう。
ゲームの定番だろ?
「恋愛用のゲームですが、ほとんど同じです」
「恋愛用?」
「リュウにいは攻略対象外ですけど」
「俺は仲間外れか!」
攻略されるなら攻略されてみたかったな。
「いや、仲間外れではありません。シュウルートと逆ハーレムルートでは絶対に必要なキャラです」
「友達的な立場か?」
「近いですね。簡単に言えば移動用の人間です」
「……。利用される人生なのか?」
ただの道具としてプレイヤーをサポートします。
処刑されるよりはいいが、悲しいな。
「だって、リュウにいの公式設定が『神に身を捧げし者で神に対してしか恋愛感情を抱かない』ですもん」
「合ってるけど、違う!」
神のためなら、心臓を抉り出す覚悟はあるが、恋愛という感情は恐れ多くて抱けない。
「同人なら沢山ありますよ。主に男同士のほうで……」
「諦めるしかないんだろ」
「今は現実なんでいくらでも未来を改変出来ますよ」
「男同士はあり得ないな」
深くは考えないでもいいだろう。
「俺の正体は何処まで知っている?」
「元勇者で神の信仰者で最強キャラって位ですね」
「意外と知られているな」
元勇者だと知られているのか。
まあ、隠す必要性も既にない。
「そろそろ。いい時間だろう。また、ゲームの話を聞かせてくれ」
「分かりました」
外は暗くなり、部屋に付いている照明用の魔道具は発光し始めている。
それにしても、誰も来ないな。
「どうする?」
「ストーリー的には主人公が来ます」
「じゃあ、待機だな」
お助けキャラは常に一定の場所にいるのが相場である。
どんな要件かは知らないが、面白い事になりそうだ。
ドアが開き、少女が入ってきた。
「失礼します。世界樹の葉っぱを下さい」
これは随分急いでいるご様子。
確か、世界樹って……
「!?。世界樹! 魔王すら恐れる〈死の森〉の中心部に生えているという伝説の木です。リュウにい! どうしますか?」
「あそこか。一時間待ってくれ」
〈死の森〉その名の如く侵入した者を確実に殺す森。
南の最果てにある森だ。
ここからだと、走っても相当時間が掛る。
【アイテムボックス】から槍を取り出す。
『クウ。転移の準備を頼む』
『分かりました』
久々に魔王拳を使用するな。
投球フォームをとる。
「吹っ飛べ。穿槍」
踏み込みの威力を足から背中、腕そして、槍に伝える。
筋肉を使い更に力を増す。
「あとは頼んだ」
――――――
クレーターの真ん中に転移する。
この三年で新たな移動方法を作った。
槍に目印になる魔力を入れて投げる。
後はクウが空間を調整するだけ。
「もういっちょ。穿槍」
一回の投球では進めても一万キロメートルが限度。
あと、五回位投げれば〈死の森〉が見えるだろう。
――――――
目の前には幹も葉も真っ黒の森が当たり一面に広がっていた。
「久しぶりだなこの森も」
この世界の東西南北にある四つある、人類が立ち入れない領域の一つ〈死の森〉。
ここはモンスターの強さが異常で面白い。
勇者の時にはレベル上げの為に来ていた。
「空には飛龍がうようよ。森もうじゃうじゃモンスターがいる」
今回は中心部にあるらしい世界樹の葉っぱを回収することが目的でモンスターを倒す必要はない。
槍を投げても、飛龍に邪魔されるか着地先で壊される可能性が高いだろう。
久々に魔王拳を本気で使うか。




