六五話 邪神との繋がり
ルーミスにシュウの服の改造を頼んだら、暇になった。
日が傾くのをのんびり待っていてもつまらない。
そうだ。マーウィルに他の邪神について聞いておくか。
レヴィに聞こうとすると。
「私より、他の子の方が気になるのかな? レヴィ悲しいな」
なんて、涙目で言われて聞く気が失せた。
魔力の大きさですぐに見つかる。
「ちょっといいか?」
「なんです。師匠」
「強欲の邪神ってどんなや……方なんだ?」
一瞬、奴と言いかけたがマーウィルの表情が無くなったのを察して方にした。
俺も同じ立場だったら激怒する気がするな。
「とても素晴らしい方ですよ。時々、使徒である私に信託を下さるのですが、その時の声があまりにも美しく。五発はいけます」
「女性っぽいのか?」
「ええ。とても可愛らしい声です」
五発ってなんだよ。
いや、意味は知っている。男としてのあれだろう。
「そういえば、師匠は嫉妬の邪神様と仲がよろしいとか。そちらの方はどうですか?」
「そうだな。シーみたいに腰まで髪を伸ばしていて、白髪の白い肌全体的に白い美少女位の可愛さ……そして胸が小さい」
「ちょっと席を外していいですか?」
「構わない」
部屋の端に移動した。
ぶつぶつ喋っているので耳を傾ける。
「マー様。嫉妬の邪神様とはどのような関係でしょうか。え? 分かりました。すぐに聞きます」
俺の方に近づいてきた。
「リュウ様。あなた様は傲慢の尊敬が称号にありますよね」
「一応。あるがどうした?」
「それで、強欲の邪神様が興味を持たれまして、傲慢の邪神が好きな物を教えてくれだそうで」
「すまない。知らない」
また、部屋の端に移動した。
今度はすぐに戻って来た。
「なら、師匠は何をされたら女性に落ちますか?」
予想の斜め上を行くな。
「他人をいじめていないことが前提条件で顔は勿論いい方がいい。料理が上手な女性もいいな。胃袋を掴まれて落ちない男はそうそう居ないからな」
「だそうです。邪神様」
部屋の端っこで通信している感じが好きだったが、面倒になったのだろう。
「ありがとうございます。師匠」
会話から考えて、俺を落とすために聞いた訳ではない。
傲慢の邪神。どんな奴なんだろうな。
男の神みたいだから、レヴィに聞いても答えてくれるだろう。
「すいません。使用人としての仕事があるのでこの辺で」
マーウィルが去って行った。
あと何分一人でいれば、そうだ、レヴィに会いに行こう。
『クウ。〈嫉妬〉最深部まで頼む』
『分かりました』
クウが戻って来てからもう一回ダンジョンを攻略しようと谷から落ちたら、ダンジョンコアのある部屋に転移させれられた。
本人がいうには百層分の魔物を作る魔力がもったい無いらしい。
そんな訳で転移をした。
豆電球が中心にある部屋に着いた。
レヴィは俺がこの部屋に来てから数分以内にやってくる。
一々、魔界から来てくれるのはありがたい。
地面から少女が生えてきた。
「久しぶりー」
「そうだな。一か月ぶりか?」
「もっと長い気がするけどいいや。大体そのぐらい」
頻繁に会いに行っているせいで≪称号≫に嫉妬の親友がある訳だが話し相手としてはレヴィは最適だ。
友達感覚。……前世のあいつを思い出すな。
「今日は何をしに来たの?」
「傲慢の邪神について知りたい」
「傲慢……ああ! 最近決まった奴だね」
「ステータスカードの≪称号≫の欄を見てくれ」
レヴィにステータスカードを渡す。
「凄いね。嫉妬の親友はレヴィの事だけど、消滅、創造の愛護はあの二方の事だね」
「それは俺も考えたが、それよりもここだ。傲慢の尊敬の所」
「あいつが尊敬。嘘に思えるね」
傲慢は自身への絶対なる自信があるという意味だった気がする。
そんな奴が自分より上に置く存在がいることにレヴィは疑問を抱いているな。
「俺は傲慢の邪神について全く知らないんだ」
「あいつは新参者だから詳しいことは分からないけど知ってる限りならいいよ」
「助かる」
俺にどんな影響があるかを知れればいい。
レヴィがいつの間にか紙の資料っぽいものを持っていた。
「三年前に神殺しを成した元天使。神を殺した時に格が上がって本人も神になった。理由は不明だが天界から魔界に堕天する。堕天した時に出会った憤怒の邪神サターの家に住まう。そのあといろいろあって、傲慢の邪神に至る」
「いろいろって、まあいい。それで性格はどうなんだ?」
「ちょっと待って」
また新しい紙を地面から引っ張り出した。
「これは凄いね」
「要約してから話してくれ」
「分かったよ」
どっからそんな資料を持って来たかは不明だが、レヴィの事は信用している。
「今、魔界には邪神がいるんだけど、特にレヴィみたいな大罪を冠している最上位邪神の事を七罪の邪神っていうんだ。基本は無性な神だけど、レヴィ達は性別を持ってるよ」
「性別か」
「うん。色欲の邪神がどうしてもっていうから固定したけどね」
神の世界もいろいろあるんだな。
「話を戻すと強欲、傲慢の邪神は男。他の七罪の邪神は全員、女にしてるんだけど……」
やけに引っ張るな。
「レヴィと暴食以外は傲慢の邪神に惚れちゃってしまいました」
「ぐふ。あははは」
「てへへへ」
思わず吹いてしまった。
あと強欲の邪神は男だったのか。マーウィルはあっち系に行く必要があるかも知れない。
いや、信仰しても恋をするのは違うな。
上位の存在に恋という平等な物は合ってはならない。
「じゃあ、七罪の邪神はその傲慢の邪神の天下になった訳だな」
「そうだね。正直、レヴィにとってはどうでもいい事だけどね」
笑いながら話す。
「レヴィはそいつに惚れないのか?」
俺が初めてここに来た時、レヴィは『イケメンに信仰されたい』と言っていた。
女性に愛されている以上、顔は悪くは無いのだろう。
「いや、それは無いね。中身が少ししか入っていないような男なんて、居てもつまらないし、何よりレヴィはリュウの事が好きだから」
「やめろ、勘違いするだろ」
ライクとラヴの違いを理解していない訳では無い。
好きというのは大抵、友達として好きとかの場合が多い。
ヘタレ? 知らないな。そんな単語。
「勘違い? リュウにレヴィの全てをあげてもいいとすら思っているよ」
「どういう」
「こういうことだよ」
抱きつかれた。
しかも、額がぶつかり目の前にレヴィの顔があり吐息が聞こえる。
美少女に密着されて、興奮しない男子はいないはず……いや、居た俺だ。
何一つ感じない。いや、急な行動で驚いてはいる。
だが、なんだろう。
この性的に一切興奮しない感じは。
今の年齢は十歳。欲に目覚めてもおかしくない時期であるはず。
仮説すると神に対してはそういう感情になれないようになっている。
無理やり納得する。
「気持ちは嬉しいよ」
「あ、ごめん。仕事が途中で終わっていたんだ。私は戻るよ」
「分かった」
レヴィが地面に戻って行く。
俺もここで出来ることはなくなったので、クウに頼み城に戻った。
――――――
日は一切動いていなかった。
暇つぶしで行ったのが目的だった。
なのに、時間の長さが違う所にいたせいで本末転倒な事になってしまった。
ソファーに腰かけながら考える。
俺は女に興味があるのかを。幸い時間はあるんだ。




