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六四話 狂信者仲間

前話(side 元魔王の転生)を読まないとよく分からない内容になっています。

 男を草原まで連れ去った。

 特に深い意味は無い暇つぶしだ。


「転移。自ら体験するとまた違ったものを感じますね」

「随分、冷静だな」


 転移自体は馬車の中で見せているので驚かなくても不思議ではない。

 しかし、急に転移されたのに対しての反応にしては薄いな。


「知ってますか? 五百年前の勇者のお話」

「絵本程度の知識なら」


 急になんだ。


「僕は思ったんですよ。彼ほどの化け物の力を奪えば最強になれるんじゃないかって」

「どういうことだ」

「スキル発動【強欲グリディ】。邪神様の信託で知りましたよ。あなたの正体」


 金色のオーラを纏った。

 遊び気分で移動させたが、邪神信者がだったとは。


 別に目の前の人間が何を信仰しようとどうでもいい。

 クズかどうかが問題だ。


 もし、家族を人質に取ったりしたら、考えゆる最も()()()()()()をくれてやる。


「答えろ。人質を取ったか?」


 今、俺はイラついている。


 こいつを連れ去った理由がエルフとか珍しい種族だった時が楽しそうだと感じたから。

 蓋を開ければ邪神信者。つまらない。


 なんて、わがままな性格なのだろう。

 自分の事なのに否定したくなる。


「取ってませんよ。僕はあなたしか狙ってませんから」

「なら、いいんだ。それより、邪神について話をしようじゃないか」

「いいですよ。スキルは常に発動可能ですから」


 邪神はレヴィのしか知らないが、称号にもあるように親友と認められるほど会いに行った。

 名前は知らないがお前のプライドをズタズタにしてやる。


「俺は邪神のレヴィと仲がいいんだが、お前は強欲の邪神と話したことがあるか?」

「いいえ。邪神様は私たちより上位の存在。話すなど対等な事できませんよ」

「神は何よりも大切だよな」

「ええ、勿論です」


 ()()()()()()()()()()()()()()


「そうだよな。神は何よりも上の存在。絶対の存在だよな」

「はい」

「俺にもいたんだ。自分の何よりも大切な神が!」


 両手を天に向かって捧げる。


「だがな。この世界にはいない。お前は俺の正体を知っているんだろ。なら、分かるはずだ俺の信じる神が何処にいるかを」


 会話をする気はない。ただ愚痴を一方的にぶつけているだけに過ぎない。

 やつは宗教は違えど同じ狂信者。俺の気持ちは分かるはずだ。


「転生する世界を間違えた。己の浅はかな考えのせいで! 時を戻すことは不可能!」


 心がスッキリしていく。

 口に出すだけでこんなに楽になるなんて。


 男の目を捉える。


「お前は邪神を信仰してるんだろ。なら、その邪神にとって最高の玩具になることが夢。合ってるよな」

「ええ」

「俺も同じようなものだ。神に俺という存在で楽しんで貰えれば良かった。お前は幸運だよ」


 〈嫉妬ジェラシー〉の崖に落ちた時からずっと悩んでいた。

 俺の存在意義について、目的も何もない虚無を埋める何か()を。


「神の愛を一身に受けれて、更に遊んでもらっている。羨ましいよ。初めてこんなに嫉妬したよ」

「話は以上ですか?」

「最後に問いたい。お前の信仰している神に玩具だと思われていたらどう感じる?」

「別に何とも」


 ため息を吐く。


「そこは『最高の喜びです』だろ」


 秩序魔剣ポネストの能力でスキルを封じる。

 大きな声で金色の変な奴はスキルだと教えてくれていたので簡単だ。


「スキルが消えた……だと」

「別にお前が邪神を信仰していようと構わない。ただ、信仰は本気でやらないと楽しくねえぞ」


 崩れ落ちるように男が膝をついた。

 更に涙を流し始めた。


「僕の信仰はまだまだだったのですね。ありがとうございます。これから、師匠と呼んでもいいですか?」

「好きなように呼べ。お前の名前は」

「僕は強欲の使徒。マーウィルです」


 マーウィル。狂信者としての仲間ができた。

 一見、やばそうな関係だな。


「とりあえず、戻るか」

「はい! 師匠」


 転移で家族の元に戻った。


 ――――――


 正直、戻った所で何もすることが無い。

 待つこと十分。


「よし、終わったな。じゃあ行くぞ」


 ロイの掛け声で王城へと向かった。

 薄っすらと見える王城まで歩くのは少し、危険かも知れない。


 剣聖は世界でも有名だ。

 元の世界に例えるとアイドル的な存在。ということは。


「ロイ様ー。握手してください」

「ご子息様も握手お願いします」


 人が大量に押しかけて来た。


「《闇の隠蔽》」


 闇の精霊王アデスが黒い霧を発生させ、俺たちを包んだ。


「あれ、どこに」

「急に消えたぞ」


 目の前の人間が俺たちの事を認識していない。

 《透明化》と似た魔法だな。


「行きましょう」


 クレアの言葉に従い、王城へ歩き始めた。


 ニ十分歩くと大きな城の前に辿り着いた。

 黒い霧が消え、門兵が話しかけてきた。


「どうぞ。お入り下さい」


 速攻で門が開いた。

 誰も不思議に思うことも無く、城に入った。


「まだ準備中みたいですね」


 シーが言った通り、使用人的な人間がいろいろ準備している。


「よし、控室はあっちの方にあるから行くぞ」


 城の中を歩いていると部屋を見つけた。

 ドアの真ん中に『ローゼン家の方々』と書かれている。


 中は飲み物やら食べ物とかがあったが、一つ変な紙があった。


「なんでステータスがあるんだよ」


 ロイのステータスが掛かれたチラシっぽいものが机の上に置いてあった。


「兄さん。見ようよ」

「比べてみましょう」


 少し気になるので誘いに乗る。



 ≪名前≫ロイ・ローゼン

 ≪種族≫人族

 ≪レベル≫七九


 ≪生命力≫ 七〇〇〇

 ≪筋力≫ 九〇〇〇

 ≪魔力≫ 二〇〇

 ≪魔攻≫ 二〇

 ≪魔防≫ 五〇〇〇


 ≪スキル≫

 ≪称号≫ 剣聖 火の魔剣の所持者



 スキルは隠していることは馬車の中で教えて貰っている。

 剣聖のレベルは七九まだ一〇〇に到達していない。


「凄いや」

「魔力関係は私の方が上ですが他の項目は全部負けました。流石はお父様です」

「そういえば、兄さんもステータス見せてくれるんだよね」

「そうだったな」


 精霊王やらなんやらで完全に忘れていた。

 一切、隠蔽していないステータスカードを二人に見せる。


 スキルの欄もすべて開示しておく。


「……流石、リュウにいです」

「僕が追い付けるレベルか分からないや」


 二人が唖然としている。

 まあ、測定不能とか意味不明だよな。


「兄さん。僕のスキルにも【魔剣召喚】があったんだけど、どうやって出すの?」

「スキルの発動を宣言すれば簡単に出るぞ」


 【魔剣召喚】は宣言しなくても発動はするが、そこまでにはコツがいる。

 始めて召喚するときはイメージがよく掴めないからやった方がいい。


「分かった。スキル発動【魔剣召喚】」


 優しい光が部屋に広がる。

 収まるとシュウの手には虹色の幻想的な剣が握られていた。


「この剣は」

「打ち合ってみるか?」

「でも、兄さんの魔剣は能力の無効化が」

「大丈夫。今回はポネストでやる。無効化は使わない」


 シュウの目が輝いた。


「闘技場ならあっちにあるから勝手にやって来い」

「分かりました。行こう。兄さん!」


 手を引かれ、城を駆ける羽目になってしまった。

 すぐに円形の観客席付きの闘技場に着いた。


「ローゼン家の者ですが闘技場を借りてもいいですか?」

「はい大丈夫です」


 観客席で休んでいた城の使用人に許可を貰った。


 五番隊の黒い服に着替える。パーティー用の服を破る訳にはいかない。

 シュウにも七歳の時に使っていた服を渡す。


 お互い魔剣を構える。


「僭越ながら、私が審判をします」


 さっきの人が目の前に来ていた。

 開始の合図をしてくれる奴は必要だ。


「始め」


 シュウが走ってくる。

 今回の模擬戦はあくまでシュウの魔剣の性能チェック。本気で戦う必要はない。


 剣同士が打ち合う。


「凍れ」


 俺に向かって冷気が飛んで来る。

 今日はよく氷漬けにされるな。


「ざっとマイナス五十度っていった所か。まず俺を水で濡らしてから使った方がいいぞ」

「ありがとうございます」


 評価を下しながら、氷を力で割る。


 すぐに剣が振られるのを見てポネストで防ぐ。


「闇に包まれろ」


 今度は真っ黒い霧に包まれた。

 口の中から血が出始める。まるで毒みたいだな。


 まあ。ドクの奴よりは圧倒的に弱い。

 

 後ろに跳び霧から出る。


「これも効かないか。流石、兄さんだ」

「他にも試したい能力があるんだろ」

「うん」

「来い!」


 この後、打ち合うたびに特殊能力が使われた。

 燃やされたり、高水圧で流されかけたり、土の中に埋められたり、光で目をやられたりした。


「はあはあ、僕の負けです」


 魔剣の能力を出して、疲れているみたいだ。

 力の割には少量だが魔剣は魔力を消費する。


「勝者。リュウ」


 試合も終わったのでもう戦いではない。

 魔力が少なくなり、気絶寸前のシュウに近づく。


「ちょっと待ってろ」


 シュウの魔力を少し奪い解析する。

 そして、魔素からシュウの魔力と同じものを作る。


 作った魔力をシュウに直接流し込む。

 異常なまでに注げば、爆発を起こせるが今回はそこまで送らない。


「ありがとう。兄さん」


 元気な顔に戻って良かった。


「シュウ。魔剣を手に入れたんだから腰に入れといた方がいいぞ」

「でも、服が」

「ルーミスに渡せばすぐに作り変えてくれるだろう」

「ありがとう。兄さん」


 シュウに闘技場に来る前に来ていた服を渡す。

 俺もすぐに着替えて、さっきまでいた部屋に歩いて行った。



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