五八話 心配と謝罪
『こんにちはー。私は創造龍気軽にエイエイって呼んでね』
デリデリとは違う少女の声が聞こえた。
明るく元気で大変結構だが、対応に困る。
『エイエイ。リュウが……困ってる』
『あれ、デリデリ元気ないの? 口調が変だけど』
『気にしないで……お願い……ね』
俺を無視して、話されているがお二人さんは仲がいいみたいだ。
『デリデリがそう言うならいいけどね。それより、これからよろしくね! リュウ』
『ああ、よろしく』
『私は右半身にいるから、いつでも話しかけてね』
これで右側にも憑依された。
?。この体って俺の物だよな。……考えると怖くなってきた。
『エイエイ。この服直せるか?』
『無理だけど、こんなことはできるよ』
破れていた服が修復されていく。
これを直すっていわないか?
『新しく服の生地を創造して繋ぎ合わせたよ』
『何が違うんだ?』
『うーん。人間には分からないレベルで違うよ』
『そうなのか』
結局何が違うかは分からないが、この服なら人通りを歩いても大丈夫だろう。
教会に向かって歩き始めた。
ただ歩くのもつまらないので二人? に質問をした。
『そういえばさ。デリデリとエイエイってどんな関係なんだ?』
『親友? ライバル? 天敵? どれだったけ?』
『今は……同僚。リュウのた……めに働く』
『ありがとう。デリデリ』
俺の為に働いてくれるのは嬉しいが、相手がやばそうな名前を持ってるし少し怖い。
『擬人化ってできるか?』
一番気になる事だ。
もし、人の姿になれるなら絶対に人にさせない。せめて、龍として見ておきたい。
『私が人型の模型を創って、二人が憑依したらいけるよ』
『どうしたの?』
良かった。人としての姿が決まっていないなら、擬人化がおきることは無い。
『擬人化されると困るからな』
『そんな……ずっと近くに……いて欲しいなんて』
変な解釈をされているが間違ってはいない。
俺は一人でいることが好きだ。
別にいじめられていた過去がある訳ではない。
ただ、孤独を愛しているといえば聞こえはいいが、すべては先生の教えだ。
――普段一人でいても人に好かれる人間はかっこいい。
そんな生き方に憧れた。
だから、常に同じ人間がいるとただ邪魔なだけだ。
先生の事を思い出しながら歩いているとあっという間に教会に着いた。
受付を見て婆さんを探す。
ほとんどの人が美しい女性の方に並んでいる中。暇そうな婆さんを見つけた。
「精霊契約をしたいのですが」
「あんたは一匹の子か」
「そうです」
まさか覚えて貰えているとは。
「何回契約しようとしても、結果は同じだぞ」
「それでいいんでお願いします」
「何をしたいかは知らんがまあいい。ついて来な」
婆さんの後を追いかける。
「おらよ。あと、針はいるか?」
「大丈夫です」
婆さんから紙を貰う。
左手で右腰にさしてある渾沌魔剣ボールトを抜き【最硬化】でオリハルコンクラスに硬くした指をなぞった。
バターを削った時ぐらいの抵抗で指に傷がついた。
【超再生】によりすぐに傷が消える。
魔力を込めた血を魔方陣の中に入れた。
ゲームのガチャを思い出す。目的の一体が出るまで回す。
目が痛まないほどの光が出た後、そこには一つの白い球が浮かんでいた。
『え? なんで私はここに?』
よし、一発で来た。
『テステス。聞こえますか?』
『聞こえるよー』
『聞こえてる……よ』
二人には聞いていない。
『この声は……リュウ! お久しぶりです』
良かった。これで怯えられたら何かやましいことがあったと確信したが、別にそんなことはなさそうだ。
『試練をやろうぜ』
『?。分かりました』
真っ白い空間にやって来た。
『まさか。まだ生きているとは思いませんでした』
『そうだろうな。俺でも驚きだ』
死にかけで魔力も操作できず、奈落に落ちていたら当時の俺も含め生きていることを不思議に感じるな。
すべては液体と窪みに助けがあって今、生きている。
『よし、やろうぜ。前みたいに』
『分かりました』
赤色、青色、茶色、黒色、白色、透明の合計六色の球が俺の周りを囲んだ。
『行きますよ』
『よし、来い!』
一斉に飛んでくる球を躱す。
さあ、ここからが楽しみだ。自然と頬が吊り上がる。
『ふう。前回より激しくなかったか?』
『リュウの魔力とレベルが異常に上がったからですね』
精霊は召喚者の魔力を使って魔法を放つから、召喚者のレベルが上がれば精霊も強くなる。
『じゃあ。帰ろうぜ』
『分かりました』
瞬きの一瞬で婆さんの元まで戻って来た。
「結果は変わってないだろ」
「そうですね。でも良かったです」
「それなら良かった。用事が済んだらさっさと帰りな」
「はい。ありがとうございました」
教会から出て、人気のない場所に行った。
『クウ。屋敷まで頼む』
『わかりました』
屋敷の目の前まで転移した。
『じゃあ、私はリュウの中に入りますので』
『時々話しかけるから』
クウが俺の中に入って行く。
『あなたがクウちゃんね。大丈夫悪いようにはしないから、お姉さんの所に来て』
『あなた方は誰ですか?』
『同居人。これからよろしくね。クウ』
『え? 助けてリュウ!』
確か、俺は前にクウにこんなことを言われたな
『ご自分でどうにかする問題かと』
『……そうですか』
落胆したような声だが、これはあくまで復讐だ。
同じ気持ちを味わってもらえばいい。
三人が俺の体の中で会話をしている違和感を完全に無視し家の扉を開けた。
弱い殺気と共に剣が飛んでくる。
剣の硬度から見て脅威でないことを確認する。
頭に剣が当たる。
辛うじて当たったことが分かる程の痛みしか感じない。
「ただいま戻りました」
「!?。リュウ! 無事だったか?」
「無事でした」
ロイが振りかぶり、俺の顔を殴った。
「お前はどれだけ人を心配させたんだ!」
「……」
何も言い返す言葉が無い。
ただ、ロイの手の骨が折れたことは分かった。全力で殴ろうとしていた証だ。
それほど心配させたんだ。
「ごめんなさい」
「分かればそれでいい。あとで全員に謝っておけよ」
「はい」
元から、謝るのは決定事項だ。
俺はクズでは無い。
ロイが足早に去っていくのを見て、《回復》を遠距離に向かって使った。
これで折れた腕は治ったはずだ。
二日間。それも緊迫した状態で突然消えたんだ。
しっかり説明をしないとな。
速足で歩き、出会った使用人に片っ端から謝って行った。
謝罪の礼をすると全ての使用人がほとんど同じ言葉を発した。
「頭を上げて下さい。リュウ様が強いのは知っていますので心配はしてなかったですよ」
シュウもシーも同じような事を言っていた。
ユミナとアルレは歩いて探しても見つからなかった。
諦めて俺の部屋に入った。
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
「お帰りー」
何故か俺のベットに二人が寝転んでいた。
「あの、二日もいなくなって……」
「どこに旅に出ていたんですか?」
ユミナから予想もしなかった答えが返ってきた。
「どうせ、私たちの事なんてほっといて、遊びに行ったんでしょ?」
「そうだな」
旅に出ていた。間違っては無い。
よし、それで突き通そう。
「それで、ロイ様から伝言があります。『謝罪が終わったら部屋に来い』だそうです」
「分かった。行ってくる」
「お気を付けてー」
おい! アルレ。お前専属護衛だろついて来い。――なんて、謝罪した後じゃ言いにくい。
一人でロイの部屋へと足を運ぶ。
ノックをし、扉を開ける。
この部屋には一年前に入ったがレイアウトが変わっているな。
ロイが座っている机の横にソファーが向かい合って置いてあり間に机がある。
「謝って来たか?」
「はい」
「なら、いい。座れ」
ソファーに腰かける。
「今から魔剣について話す」
「それなら――」
俺は腰につけている剣をテーブルの上に置いた。




