表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/135

五七話 消滅の龍

『どうも……』


 頭の中に直接幼い少女のような声が聞こえた。

 瞬間。レヴィが止まった。いや、世界そのものが止まった。


『私は……消滅龍(デリートドラゴン)。今日から……お世話になります』


 名前と性格が全然合っている気がしない。

 消滅という怖そうな名前なのにまるで人見知りみたいな話し方だ。


『始めまして、僕の名前はリュウ・ローゼン。気軽にリュウって呼んで下さい』


 とりあえず【念話】を使って、対話を試みる。


『知っています……えっと……その……私の事は……デリデリでいい……よ』

『分かりました。それでなんで今時が止まっているのですか?』

『素の……ままで……いい。そろそろ……戻る……はず』


 レヴィがスロー映像のように徐々に動き始めた。


「その様子だと、消滅龍(デリートドラゴン)が来たみた……」

『さんをつけて!』

「!?。消滅龍(デリートドラゴン)さんすいません。でも、腕を消すことは無いじゃないですかー。作るの大変なんですよ」


 頭に怒声が聞こえたと思ったら、レヴィの両腕が()()()

 え。まさか、俺も『さん』をつけて呼ばないと消されるのか?


『あの。すいません。失礼を承知で聞きますが私はどのような喋り方をすればいいのですか?』

『あ……えっと……いつも通り。あいつと話していた時と……同じで……いい……よ』


 勇気を振り絞り、冒険に出てみた。


『なあ、デリデリ。あのさ。勝手に何かを消されたら困るんだけど』

『……』


 一瞬の沈黙が何時間にも感じられた。

 消されるってどんな気持ちなんだろうな。


『ごめん……なさい。リュウの頼み……なら……私は消すのを……我慢する。だから……捨てない……で』


 涙声と共に謝罪が聞こえた。

 まあ、消されなければ俺は特に文句を言うことは無い。


消滅龍(デリートドラゴン)さんは結構、礼儀を気にしますから気をつけてね」

『あいつの……話は……信じなくて……いい』


 デリデリは俺に甘いらしい。……多分。


『私は……左半身に……いるから……いつでも……話しかけて……ね』


 左半身が【龍纏(ドラゴンオーラ)】の時みたいに黒い鱗で覆われた。


『デリデリ。これどういうこと』

『あの……その……気にしないで……お願い』


 仕様ということだと納得するしかない。

 消されたら元も子も無いからな。


「リュウ。その渾沌魔剣貸して」


 レヴィが魔剣を求めてきた。


「ああ、いいぞ」


 疑問に思いつつもボールトを渡した。


 すると、レヴィから真っ黒い変なオーラ的なものが発生し、ボールトの周りに集まった。


「妬ましい。リュウと一緒にいられるあなたが」


 ボールトがオーラを吸収する。


「よし、終わり。ありがとう」

「何をしたんだ?」


 変な事をされたら、デリデリに頼んでどうにかして貰おう。


「剣に【嫉妬ジェラシー】を宿らせたよ。ダンジョンコアを触って入手できる能力だけどリュウには必要なさそうだし」


 【鑑定】で調べる。



  渾沌魔剣ボールト――始めて召喚された魔剣。強力な力と自我を持つ代わりに魔剣に認められなければ、持つことすらできない。【暴食グラトニー】と【嫉妬ジェラシー】が宿っている。


 【暴食グラトニー】――魔物の素材を食べることにより、スキルを得る。

 現在のスキル――風刃、衝撃波、大剣化、柔軟化、透明化。


 【嫉妬ジェラシー】――触れた敵が自分により優れた能力があった場合その能力を触れている間すべて封じる。



 俺より優れた能力を持った人間は()()いないと言ってもいいだろう。

 しかし、ボールトより特殊な能力を持った魔道具はいくらでもある。


 それらを完全に封じる【嫉妬ジェラシー】の能力。ぶっ壊れ性能の剣が更に強くなった。

 だが、これはダンジョンを攻略した報酬であり、俺の努力だ。チートではない。


「これって、チートに入らないよな」

「召喚された勇者が言っている奴では無いね。少なくとも努力をしてるんだし」

「だよね」


 邪()がチートじゃないと言えばチートじゃないはず。


「帰りたいんだが、どうすればいい?」

「あそこの魔法陣に乗ったら勝手に転移するよ」

「サンキュー。じゃあな」

「また来てね。いつも、()()()()から」


 部屋の端っこにあった魔方陣に乗る。


 クウに転移して貰った時と同じような浮遊感がした後には〈嫉妬ジェラシー〉の前にいた。


 上を見上げると青い空は無く、薄黒い雲が覆われていたが地上に戻ったことを証明した。


「さて、家に帰るか」


 現在、王都にいるのは分かっている。ちなみに黒い鱗は光の屈折で見えないようにしている。

 とりあえず、教会に行って精霊契約をまたやろう。クウが戻ってきてくれるかも知れない。


 教会に向かって人気が無い場所を歩いていると汚い服を着た男から話しかけられた。


「孤児院はあっちだぜ。ついて行ってやるから安心しな」


 やけに親身になってくるな。

 そこまでひどい服装か?


 服を見ると所々穴が空いていた。戦ったせいだな。

 幸い。五番隊の服は真っ黒で俺の血は目立っていない。


「元の場所へは一人で行ける」

「そうか。気をつけろよ」


 男が去っていく。

 服は家にしかない。家までどうやって帰ろうか?


『デリデリ。なんかいい方法はないか?』

『目的地まで……空間ごと……消滅……どう?』

『それは止めよう。多分周りの被害がやばいことになる』


 危ない案を提案されたが却下する。


『あ……そろそろ……エイエイが……来る』

『エイエイって誰だ』

創造龍(クリエイトドラゴン)。エイエイ……はそういわれている……よ』


 なんか壮絶な名前の奴がまた来そうだ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ