五五話 新たな魔剣
〈嫉妬〉に入り、約二日が経過した。
現在、第九九層目にいる。
予想した通り一層に一体の強力な魔物がいた。
奇数の階層は明るく、偶数の階数は真っ暗になっていた。
つまり、今いる階層は明るい。
それにしても、ここまでに結構強い魔物と戦った。
第二四層の視界に抑えきれないほどの大きい蛇。
第五一層のミスリルで作られていた巨大人型ゴーレム。
第七六層の透明化し、一撃で地面を深く削るカマキリ。
「そして、第九八層の俺と全く同じ能力を持ったドッペルゲンガー」
ドッペルゲンガーは一番苦労した。
今までも経験も肉体の強さも全く同じ。
コピーされてから成長しないと勝てない敵。
厄介だったが、半日を使い倒した。
「さて、あと二層で百層。流石に千層なんてあったら心が折れるな」
開けた場所の前に着いた。
ステータスカードを見る。
≪名前≫リュウ・ローゼン
≪種族≫人族?
≪レベル≫ 二七九
≪体力≫測定不能
≪魔力≫測定不能
≪スキル≫ 【魔力感知 十】 【魔呼吸 十】 【鑑定 十】 【剣術 十】 【体術 十】 【念話 十】 【夜目 十】 【全耐性 十】 【最硬化 十】 【超再生 十】 【龍纏】 【魔剣召喚】 【限界突破】 【アイテムボックス】 【全スキル習得可能】 【全魔法使用可能】
【夜目 十】――どんなに暗くても昼間のように明るく見られる。
【全耐性 十】――あらゆる攻撃に耐性を持つ。大抵の状態異常を無効化する。
【最硬化 十】――体の硬度を自由に変えられる。最大でオリハルコンより硬くなる。
オリハルコン――この世界で一番硬い鉱物。
【超再生 十】――自動で肉体の治癒力を上げる。切断された腕なら十秒で生やせる。
【限界突破】――脳のリミッターを外し限界を超える。
【魔剣召喚】――剣聖の血を引き継ぐものに与えられる限定スキル。色によって纏っている属性が違う。
こんな感じになっている。
≪体力≫と≪魔力≫は億の単位に入る前に測定不能になりステータスが仕事を放棄している。
【超再生】と【最硬化】【全耐性】は速さのために捨て身の特攻を繰り返して傷つくたびに魔法を使って治していると習得していた。
そして【限界突破】はドッペルゲンガーを倒すために半日使って習得した。
【鑑定】のレベルが十になったことにより渾沌魔剣ボールトの鑑定結果が詳しくなっている。
渾沌魔剣ボールト――始めて召喚された魔剣。強力な力と自我を持つ代わりに魔剣に認められなければ、持つことすらできない。【暴食】が宿っている。
【暴食】――魔物の素材を食べることにより、スキルを得る。
現在のスキル――風刃、衝撃波、大剣化、柔軟化、透明化。
風刃――斬撃を任意で好きな長さ飛ばせる。長いほど威力が落ちる。
衝撃波――剣に触れた相手を吹き飛ばす。
大剣化――二メートルほどの大剣に変化する。
柔軟化――鞭のように形状が変わる。大剣化と併用することにより、射程が伸びる。
透明化――召喚主以外には見えなくなる。
【暴食】は普通に考えれば凄い能力だ。
まあ、魔法を使えば大抵再現できてしまうが。
能力を確認してから開けた場所に入った。
真ん中に一人の銀髪の三、四歳ほどの見覚えのある幼女が俯いた状態でいた。
擬態をした魔物の可能性があるので警戒をしたまま話しかける。
「こんにちは。初めまして!」
まあ無駄だろうが挨拶をして、会話を試みる。
「妬ましい。妬ましい。妬ましい!」
子供が叫びだした。この声。聞いた事があるな。
これは会話になりそうにない。
「なんでこんな所に」
「ここまで来れるあなたの強さが妬ましい」
気付いたら、幼女の手が俺の腹を貫通していた。
!?。見えなかった!
「でも、そんなあなたもここで終わり……」
「馬鹿だろお前」
「何?」
目視できないほど速い。
だが、俺の目の前でわざわざ止まった。
逃がさないように抱きつく、いや殺す気で締め上げた。
締めている子供の骨が折れる音が聞こえる。
幼女は俺に顔を見せてきた。
見た目は俺の妹シーと瓜二つだ。
「やめて、お兄ちゃん」
「趣味が悪いよなお前。俺じゃなかったら同情するかも知れないだろ。あと俺の妹はにいって言うタイプだ」
「なんで……信じていたのに」
背骨も折れ体が本来曲がらない方向に曲がった。
人間だったら死んでいるだろうが、こいつはまだ死んでいない。
ドロップアイテムを回収するまでが魔物との戦いだ。
拘束を解き、肉が地面に転がると同時に俺の体が再生する。
「まだ。消えないのか?」
肉片を蹴る。しかし、何も反応が無い。
次に魔剣ボールトの衝撃波を使って肉をミンチにしていく。
それでも完全に殺しきれない。
肉が動き始めた。
「妬ましい。妬ましい」
人型になり、今度は弟のシュウに瓜二つになった。
本当に悪趣味なダンジョンだ。
「死ね」
風刃を使い、速攻で真っ二つにする。
肉は次にロイの姿になった。
身内ばかりになるなこの肉。ずっと、妬ましいしか言わないので何が目的なのか分からない。
何度も切り殺そうとしたがそのたびに俺と異世界に来てからの仲のいい奴に見た目を変えて復活している。
五回目の変化で魔王討伐時のメンバーの四人に変化した。
剣聖ガイゼル・ローゼン。
賢者レイ・マーティン。
龍族ジョン・ドラン。
聖女ジュリア・ミラード。
四人はすぐに隊列を組む。
ガイゼルが高速で突っ込んできた。
あいつの純白の魔剣と俺の漆黒の魔剣が鍔迫り合いをする。
「本物の半分以下」
衝撃波によって、肉が吹っ飛んでいく。
左に向かって、斬撃を飛ばす。
空中に血が噴き出る。
「半分の半分以下」
火の球が飛んでくるのを見て、躱す。
お返しに《火玉》を九千発放つ。
「面白くない」
一つの肉が火だるまになる。
「一体何の魔物だ?」
生き残っていた肉を切る。
すると、ドロップアイテムが出現した。
白い剣。見た目はガイゼルが持っていた魔剣だ。
触ると俺の魔剣が震え始める。
分かっていたが魔剣に魔剣を与えていいのか?
考えても何も予想できない。
「実験するか」
鞘同士を当てた瞬間。魔剣を召喚したときの光より強い光が空間を塗る。
光が収まり、目を開けると左腰に純白の剣があった。
すぐに【鑑定】で調べる。
秩序魔剣ポネスト――渾沌魔剣ボールトと対になっており交わることは無い。【節制】が宿っている。
【節制】――持ち主のスキルを任意の数だけ封印し、その分の敵のスキルをランダムで封印する。
対になっており交わることが無い。
……そういうことか。
ボールトの【暴食】で吸収しようとしたが、交われないせいで融合されてない。
詳しく考えると頭がパンクするので止めておくが大体合っているだろう。
とりあえず、新しい魔剣を手に入れた。
能力も面白いものだ。
残念ながら、試し切りする物が無いので次の階層の魔物でするしかない。
一本道を進み、第百層に降りた。




