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五四話 魔剣の力

 俺が使用人の一人にシュウを手助けしなかった理由を聞いた時に遡る。


「剣聖の一族には代々魔剣を召喚できる能力があります」

「それで?」

「その魔剣を出す条件が……」


 シュウを助けなかった理由になる事ほどじゃなかったら、この家を軽蔑する。

 意外と俺は怒っている。


「死の淵に立ち、挫けない心を持つことです」

「そうなのか」


 一瞬にして、怒りがどっかに消えていった。


「そういえば、リュウ様はステータスを貰う前日にロイ様から、死にかけるほどの事をされましたか?」

「いや。されていないがどうした?」

「すいません。今のは聞かなかったことにして下さい」


 もしかして、レイと模擬戦をさせて、死にかける状態にしたかったのだろうか?


 考えながら、首を《魔装》で守る。


「!?。流石ですね」


 首に包丁が高速で当たった。

 目線と手の動きで察したが、殺されかけるとは。


「残念だったな。俺はその程度の強さじゃ死の淵に立つことは無い」

「これほどとは思っていませんでした。すいませんでした」


 使用人の男が去っていく。


 魔剣を召喚するために使用人にここまでさせる。

 それほど魔剣は強力だ。


 俺も勇者の時に身をもって体験した。

 五百年前の剣聖ガイゼルの魔剣を使った一太刀は鉄より遥かに硬かった俺の体を豆腐のように切り落とした。


  ……是非とも欲しい。


 ――――――


 時は戻り、今俺は漆黒の()を持っている。


「これが俺の魔剣か。さて、どんなものか。試してやるよ」


 鷲が突っ込んでくる。

 目を瞑り、意識を集中させる。


 そして、刀を振りぬいた。


「感謝する。お前が俺を痛めつけてくれなかったら、こいつは手に入らなかった。更に……」


 通り過ぎる魔物を見る。


「綺麗に切られてくれて本当に感謝する」


 鳥の体がずれるように離れた。


「はあ。疲れた」


 壁に背を預け、ひと息つく。

 回復したとはいえ、血を流しすぎた。


 まだ、やる事がある。

 ゆっくりと歩き、自分の元左腕も回収する。


 ダンジョンに吸い込まれなくて良かった。


「いただきます」


 腕を食べていく。

 体を再生させる時に消費するのは魔力だけではない。


「ごちそうさまでした」


 最低でもやる事が終わったので座り込む。


「死を久々に感じたな」


 勇者の時は何度も死にかけ、痛みを味わった。


「でも、この魔剣を手に入れられたのは大きい」


 黒光りする剣を見る。


 この〈嫉妬ジェラシー〉の魔物は魔法が効きにくいと感じる。

 第一層のホワイトタイガーも第二層目の鷲も俺の魔法をほぼ無傷で耐えた。


 物理の攻撃の方が効きやすい。


「魔剣を調べるか」


 久しぶりに【鑑定】を使う。



 渾沌(カオス)魔剣ボールト――召喚された魔剣。強力な力と自我を持つ代わりに魔剣に認められなければ、持つことすらできない。



 スキルのレベルが低いせいで大した情報を得られなかった。


「自我を持っている?」


 剣が自我を持つ。金属? に命があるという訳なのだろうか?

 

 『どうも。こんにちは。私はあなたを召喚したリュウ・ローゼンです』


 【念話】で丁寧に語り掛けるが何も反応が無い。

 会話はできないようだ。


 ゆっくりしたお陰で体力は回復した。

 入ってきた道じゃない方の道の方へ向かった。


 途中で魔物のドロップアイテムの大きな羽根十数枚と鋭い爪が落ちていた。

 羽根を拾い、次に爪を拾おうと触れると魔剣が震え始めた。


「もしかして、これが欲しいのか?」


 頷くように二回大きく震えた。

 こいつ、なんかかわいいな。


 魔物の爪を鞘に当てる。


「うお! 消えた」


 溶けるようにして、爪が取り込まれた。

 まるでダンジョンの吸収だ。


 ……特に大きな変化はないみたいだ。


 魔剣の事は考えても何も分からなかったので取り合えず一本道を進むと第三層への階段があった。


 降りた先は再び壁が発光して、明るかった。


「また一本道か」


 ただ明るくなっただけで、構造は変わっていない。

 下手に迷路にされるよりは何倍もいいがこうも単調だと飽きてしまう。


 進んでいくと、開けた場所に着いた。

 広さも第二層と同じ位。


 真ん中あたりに黒いゴリラがいる。


「一層に一体の魔物。大体読めてきた」


 三層分だけでは確信できないが、このダンジョンは強力な魔物と単独で戦わせるのが目的なのだろう。

 一体誰が作ったんだ?


 考え込んでいるとゴリラが物凄いスピードで突っ込んできた。

 第二層の鷲より早い。


 魔剣を構える。

 ぎりぎりまで引き付けた所で刀を振りぬく。


「!?。なんつう反射神経だ」


 ゴリラに当たる寸前の所で躱された。

 追撃される前に魔物から離れ、再び構える。


 魔物が動かず、数分の時が経った。


「来ないならこっちから攻める。……はあ!?」


 近づくとゴリラの胴体が真っ二つに分かれ倒れた。

 魔剣は当たっていないはずだ。


 俺は魔法を使っていないということは魔剣の能力なのだろう。


「面白い剣を手に入れたな」


 魔剣の鞘を撫でる。

 そういえば、この鞘もいつの間にか俺の腰に着いていた。


 今思えば、不思議な事ばかりだ。


 ゴリラから全身の毛皮と腕あたりの骨がドロップされていた。


「今度はこの骨か」


 骨を触ると魔剣が震えた。

 小動物みたいで可愛いので骨を与える。


 剣が骨を食べている姿を想像すると空を見れない窮屈感を少しは癒せる。

 ……末期だな俺。


「純粋な力を求められるダンジョンなら攻略はすぐできる」


 正直、《身体強化》や【龍纏(ドラゴンオーラ)】を使えば第二層の鷲も簡単に殺せた。

 あの時は魔剣欲しさに何もしなかった。


 ()()()()の死に際で手に入るとは思っていなかった。


 ここからは本気で戦い速攻で家に帰る。


「お前の真の能力も気になるしな」


 震えるたびに魔剣に素材を与えれば、いつか喋る事ぐらいはできるだろう。


 一本道を進み次の階層に向かった。



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