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四話 五年の月日

 俺が転生して五年が経ちこの五年間でこの時代の情報をかなり入手した。


 まず、二、三歳の時に読んで貰った絵本によって入手した情報だとこの時代は俺が勇者だった頃から約()()()後の世界らしい。


 その本のタイトルは〈最強勇者の魔王討伐〉で勇者が魔王を倒す絵本だ。


 何故か、勇者の名前や顔は一切描かれていなかったが俺の仲間だった奴らの名前が書いてあったので俺が主人公だと分かった。


 その絵本の冒頭は、『約五百年前に邪悪な魔王がいました』だった。


 あの魔王が邪悪? そんなことない。と初め俺は怒った。


 あの魔王は勇者の俺が来た時に放った言葉が――


「よくぞ、来た異界の勇者よ」


 台本を読むように棒読みで話かけられた時は少し笑った。

 そして、次の言葉が印象に残っている。


「一刻も早く我をその聖剣・・で殺し、この戦争に終止符を打ってくれ」


 奴は邪悪よりは戦争が嫌いで自己犠牲を(いと)わない。

 そんな奴だった。


 俺にとってはクズでは無くいい奴だ。

 そんな奴を邪悪呼ばわりするのは気に食わない。


 腹いせに《クリエイトウォータ》でその文字だけを濡らした。


 次のページには俺の元仲間について書かれていた。

 しかし、仲間、一人一人を化け物呼ばわりされてある。


 例えば剣聖のガイゼル・ローゼンだと、『手刀で自分より大きい岩を真っ二つに切り、魔剣を使って池を切り裂いた。化け物』絵で岩を素手で切っているガイゼルが描いてあった。


 他の仲間も最後に『化け物』と一言余計に書いてるのが気に食わない。

 それに、ガイゼルが手刀で切れるのは鉄で作った巨大な球であり、池も絵本みたいに端が見える程度の大きさでは無かった。


 流石に怪しまれそうなので仲間の紹介の所は何もしなかった。

 

 次の絵本が〈冒険者ヒサレのダンジョン攻略〉という絵本だ。この本はダンジョンについて大まかに書いてあった。


 ダンジョンとは今から二百年前に出現し始めたらしい。


 ダンジョンにはお宝がありそれを守るためかモンスターいや、()()が出るらしい。

 

 モンスターは外に出る害獣。

 魔物はダンジョン内に出る害獣を指すらしい。


 魔物を倒すと死体は消え、倒した魔物に応じた牙や肉などの()()()()()()()()が出るらしい。

 最下層には()()()()()()()が居る部屋がある。

 

 何故か、その部屋には最大八人しか入れない。


 そして、ダンジョンボスを八人以内で倒すとダンジョンコアがある部屋に行けるそうだ。

 そこには、財宝と触ると特殊な能力スキルをくれるダンジョンコアがある。


 ダンジョンには階層数や魔物の強さが違う。


 しかし、階層が多く魔物が強いダンジョンにはレアな宝やいい能力が手に入るらしい。


 ダンジョンを攻略したい。

 高ぶる気持ちが俺の精神に入り込んだ。


 人はあまり殺したくないが、モンスターや魔物なら≪レベル≫上げも出来る。

 さらに、金まで稼げる。まさに一石二鳥。


 この絵本自体は正直、面白くなかった。

 ただ、貴族のヒサレ・ルウスが冒険者ヒサレと名乗り、護衛をガッチガチにつけて自分の手柄にするという――


 簡潔に言うと、豚貴族の物語だ。

 でも、ダンジョンについてはよく知れたからまあどうでもいい。


 他にも絵本を読んで貰ったがほとんどが貴族が主人公だった。そして、貴族の振る舞い等が描かれた本など、俺はほとんど聞き流していたが、母親のクレアが読んだときに


「貴族ってこんなに面倒臭いのね」

 

 マイ、マザー。あなた、貴族ですよ。それも王の次の位ですよ。と突っ込みたくなったが、面白かったのでとりあえず放置した。


 四歳頃には、家の書斎に専属メイドのユミナ付きで入っていいようになった。


 この家は世継ぎが居なくなり、潰れてしまった前の公爵家の人の家だったらしい。

 その公爵は知恵こそすべてと言って本をたくさん集めていた。


 気になった本のシリーズがあるそれは〈馬鹿なサルにでも分かる〉シリーズだ。


 舐めているなと思い読んでみたらとても面白く分かりやすかった。

 〈馬鹿なサルにでも分かる 一般常識〉に重大なことが書いてあった。その文をそのまま読むと


 『今の時代の人々は〈魔導〉しか使えない。魔導とは六歳の時に契約する〈精霊〉に詠唱をすることにより自分の持っている魔力を出してもらう。そして、精霊が火や水に変質してくれる。多くの精霊に愛されているほどたくさんの精霊と契約出来る』


 どうやら、今の時代の人は魔導というものしか使えないようだ。


 ユミナが俺が魔力を出した時に反応が出来なかった理由が分かった。自分では一切動かしたことや放出させたことが無いからだ。


 精霊が魔力を体外に出すところからやるので、発動が遅いし無詠唱は絶対にできない。

 更に契約した精霊数によって使える力が限られ、完全な才能のみの世界になっている。


 はっきり言って、弱体化した。


 本来、精霊と契約すると魔法を補助してくれる能力がある。

 魔法が使えたらの話だが。


 六歳と言ったら〈ステータスカード〉が配られる年でもある。ステータスカードとは、その名の通り自分の≪レベル≫ ≪スキル≫が分かるカードだ。


 ちなみに神が定期的に腐るほど神殿の地下倉庫に送っているそうで無料で配布できるそうだ。本には技術神とやらが作っていると考察されていた。

 

 次に〈馬鹿なサルにでも分かる 世界情勢〉を読んで他種族との関係に知れた。


 まず、ある国以外は人種差別がある程度ある。くだらないと思ったがあの時代は共通の敵、魔王がいたから協力出来ていたので五百年も経てば関係が悪化することもあるだろう。


 姿や形、能力が少し違う。これで、十分避ける理由になる。


 種族の差別をしない国は俺がいるアーツ王国だけだ。この国は実力がほとんどになっている。学力や戦闘能力があれば、差別は一切なく、さらに高い能力を持っていれば、例え魔族だろうと尊敬される。


 魔族は俺が魔王を討伐し居なくなって、約五十年は仲良くしていたらしい。

 しかし、新しい魔王が現れてまた戦争になったみたいだ。


 ここまでが本で知った内容だ〈馬鹿なサルにでも分かる〉シリーズは予想以上に分かり易かった。


 ――――――


 少し時間が戻るが俺が三歳の時に双子が生まれた。俺の弟と妹だ。

 弟の名前はシュウ・ローゼン黒髪で赤ん坊を見たときに転生者かなと思った。

 妹はシー・ローゼンこちらは白髪だった。


 この世界で髪の毛の遺伝子は参考程度しかなっていない。親がどちらも赤髪でも赤ん坊が緑髪なんて場合もある。

 中学生の時に習った優勢形質はこの世界では役に立たなかった。

 

 二人の赤ん坊がベッドで寝ている所を見たら生命を感じる。

 それにしても、前世に妹はいたが弟がいなかった。


 男の話とかするのかなと妄想してしまう。


 ――――――


 さらに三歳から剣の稽古が始まり、いきなり、ロイと模擬戦をやらされた。


 三歳の子供に対していきなり模擬戦を仕掛ける親もどうかと思うが俺はこの体の魔法での力を知りたい。世界最高峰の剣士が相手をしてくれるんだ丁度いいと思い戦った。


 模擬戦は広い庭で行われた。

 切り揃えられた芝生が生えおり、庭師の能力が分かる。


 模擬戦では、礼儀が大切だ。お互いが約十メートルほど離れたところに構え、礼をする。そして、顔を上げ、木で出来ている模擬剣を構えた。大きさ的に俺は長い剣を使えないので、少し短い剣を使っている。


 審判のクレアの合図を静かに待つ。この間にも勝負は始まっている。相手の視線を見て開始直後の行動を推測し、対処を考える。


「始め!」


 合図と同時に俺が走り出す。ロイが剣を地面と垂直にし横に振る。横なぎの一撃だ。俺よりもロイの剣の方が長く、先に攻撃を仕掛けられた。


 しかし、先制攻撃をされるのは俺は予想をしていた。ロイの剣は俺の身長が低いことも考えてか、かなり低い所にある。しゃがんで避けてもすぐに追撃を食らう。こうなったら。


 俺はジャンプをしてロイの剣を躱しそのまま突っ込んだ。俺の獲物の範囲に入った。


 横なぎを途中で止め角度を変えて来た。そして、俺の斜めから振り上げた。三歳児相手に手加減をしないのかと思ったが、残念だったな、俺にはその攻撃すら先読みが出来ていた。


 俺は横回転をして。ロイの剣の腹を蹴り、斜めに移動をした。まだ、俺の獲物の範囲だ。地面を踏みしめロイに飛び込んだ。

 ロイは剣を振り上げて横腹が隙だらけだ。そのまま抱きつき首に剣を当てようとしたが、


「スキル発動【高速移動】」

 

 ロイがスキルを発動させた。この時代の人はいちいちスキル名を言わなければ発動が出来ないらしい。それにしても、子供相手にスキルを使うか普通。

 

 【高速移動】は一瞬、移動速度が上がるみたいだ。


 俺の居ないほうに移動しやがった。ご丁寧に俺の方を向いて、飛び込んでいるせいで今俺は空中にいる。ということは躱せない。


 剣の腹をこつんと当てられた。木の剣で。でも、腹で当てられても少し痛い。

 

「勝負あり。勝者、ロイ」


 審判のクレアが勝敗を言う。


 流石、剣聖と言われるだけはある。ガイゼルよりは弱いとはいえ、俺の今の魔法無しの本気をスキルを一回だけで完封してきた。

 

 この模擬戦を週に一回やり、他の日は簡単な座学をした。


 ――――――


 意外と楽しい日常を楽しみながら、あっという間に転生して六年が経とうとしていた。


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